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ウィリーの事情

他の皆様って、文才あるよね?改めて感服しました。作者です。



◆ドミニク辺境伯領 カゲマサside



「え?もう仕留めちゃったの?」


 上からギオと死霊魔人の戦いを見ていた俺は、思わずそう呟いた。まさかギオの一発で終了したのが、信じられないのである。


「何でだ?・・・あ、アイツ見るからに魔法使いタイプで体も貧弱だったわ。重力にも耐えられてなかったし」


 俺は、無理矢理そう考え、ギオと死霊魔人の元に降り立つ。


「おう、ご苦労さん」

「おいおい、カゲマサよぉ!コイツ弱すぎるぜ!?軽めの一発で伸びちまった!」

「体、無鍛練、馬鹿」

「そうかい。まあ、弱かったならいいが。あ、ちょっと待て。ミレンダから念話が来た」


 そう言って俺は、ミレンダとの念話を開始する。


『ミレンダ、一体何のようだ?』

『ああ、そっちに勇者がいるんだよね?なら、今から送る器具を取り付けてほしいのさ』

『器具?』


 ミレンダの声が聞こえなくなると、俺の目の前に【ゲート】が出現。そして一人のホムンクルスがアタッシュケースらしきものを持って現れる。


「カゲマサ様、こちらになります」

「ご苦労さん。で、何が入ってるんだ?」

「ミレンダ様からは、『とりあえず開けてみな』と」

「そうかよ」


 俺は、アタッシュケースを開けると、手錠らしき物体があった。鑑定をしてみる。


・魔封じの手錠(ミスリル合金製)

 対象に付けると、対象に魔封じ結界が張られ、魔法発動を封じることが可能。手錠自体は、ミスリル合金で出来ているため、破壊は難航する。


「は~、何とも凄いものを」

『そうだろそうだろ♪もう量産を開始しているから、無くなることは無いさ。安心して使いなよ』

『ああ、ありがたく使わせてもらう』


 俺は、気絶している勇者タダユキの腕に手錠を取り付ける。すると、勇者タダユキの身体中に魔法陣が発生。恐らく、その魔法陣が魔封じ結界の役割なのだろう。


「良し、死体を回収するから、お前達は先に戻ってろ!」

「チッ、久々に面白い戦いが出来ると思ったのによぉ!期待させやがって!」

「ん、分かった」


 そうしてギオと死霊魔人は、【ゲート】を通ってダンジョンに帰還する。勇者タダユキの体を引き摺りながら。見届けた俺は、【ボックス】で死体を回収していく。というか、何で死体まで【ボックス】で収納出来るんだろうな?そう考えたその時。


「う・・・・、うう・・・・」

「え?」


 俺は、声のした方に目を向けると、死体の山から一人の男が這い出てきたではないか。身体中は、火傷やら炭化やらでボロボロだが、生きていた。


「おい、お前」

「あ、・・ああ、」

「喉が潰されている、か」


 さて、どうする?生きているなら、目撃者として始末する必要がある。だが、何も知らなかったら、生きて返すか?


「ふむ、【メガヒール】」


 俺は、考えた末に回復魔法を施した。


「あ、あ、あ、あれ、しゃ、喋れる?」

「おい、調子はどうだ?」

「へ?あ、だ、大丈夫だ」


 その後、生き残っていた男に事情を聞く。男の名は、ウィリー・モルガム。帝都にて活動していたCランク冒険者で、恋人の薬を買う金を貯めるために勇者タダユキの俺襲撃に参加したらしい。


「はぁ~、馬鹿か君は。勇者タダユキが払わないという可能性を考え付かなかったのか?」

「それでも縋るしかなかった!俺は!なんとしても彼女を助けたかった!」


 うわぁ、結構覚悟が決まってるなぁ。そんなに恋人とやらが大切か。いや、馬鹿にできんな。俺だって仲間を大事にしようと努力してるし。


「その為なら、どんな奴にだって媚を売ってやる!何だってしてやるよ!」

「何だって?」

「ああ、そうさ!」


 ほお、そいつはいいことを聞いた。戦力増強にいいかも知れない。


「おい、もし恋人の病が治ると言ったら、君はどうする?」

「・・・何だと?」

「恋人の病が治し方、俺は知っている」


 本当は知らないけど、魔法で治すなりミレンダに治させるなり方法はあるのだ。当のウィリーは、目の色を変えて俺を見る。


「・・・何をしたらいい?暗殺か?」

「いや、俺の部下になれ」

「部下だと?」

「そうだ。俺はお前に価値を見いだした。だから助ける、それだけだ」

「アンタの部下になれば、恋人は助かるのか?」

「助ける。助けて見せる」


 ウィリーは、暫く考え込む。


「・・・分かった。アンタの部下になる。魔人さんよぉ」

「・・・へ?知ってたの?」

「俺は、以前魔人と交戦したことがある。アンタからは、濃い魔人の臭いがする」

「へ?マジ?臭い対策しなきゃ」

「はっはっは、大丈夫だ。俺ぐらいしか臭いは嗅ぎ取れねぇよ」

「・・・そうか?まあ、臭い対策もするとして、ウィリーよ。お前の恋人は何処にいる?」

「へい、帝都の一軒家ですが、旦那」

「分かった。直ちに帝都に転移する。掴まれ」

「はいよ!」


 そして俺とウィリーは、帝都に転移した。


















◆帝都セプト スラム街 カゲマサside



 帝都に転移した俺は、ウィリーの案内でスラムの中に入っていく。途中で金ほしさに襲ってきた奴がいたが、【フレイム】で脅すと、一目散に逃げ出した。そして目的の場所に辿り着く。


「ここだ」


 そこは、スラム街にしては頑丈そうな造りをしている建物だった。ウィリーと俺は、中に入る。


「ゲホッ、ゲホッ、・・・ウィリー?」


 そこには、ベッドの上で横たわっている一人の女性がいた。《鑑定》をしてみる。



名前 メリア・アートリー

種族 人間

職業 踊り子 (肺がん)

レベル 3

ランク D

スキル 舞踊 扇技 身体強化



 肺がんか。医療に詳しくはないが、相当に危険な状態だな。


「旦那!頼む!」

「分かった」

「・・・・ゲホッ、ゲホッ、貴方は」


 俺は、メリアを無視して額に手を当てる。そして、魔力をメリアの全身に行き渡らせた。見つけた。うわっ、本当に肺がんが出来てやがる。結構でかい。

 俺は、肺に魔力を集中させ、魔法による施術を行った。方法はシンプル、極めて小さい【ディメンションカッター】でがんを切除、重力魔法で浮かせて、小さい【ゲート】で取り出す。そうして、メリアを【スリープ】で眠らせ、施術を開始する。

 

 三十分後。施術は何とか無事完了した。傍らには、切除したがんがある。幸い小さかったので、楽だった。


「旦那?」

「・・・何とか終わった、と思う」

「おお!」


 ウィリーは、涙を流しながら何度も俺に頭を下げた。その後メリアも目を覚まし、病が治ったことに感涙。俺に感謝の意を示し、俺の部下になると言った。俺としてはウィリーだけで良かったが、恋人を引き離すのもあれかと思い、部下にした。そして俺は、二日かけて二人を魔人へと変えた。《鑑定》結果は以下の通り。



名前 ウィリー・モルガム

種族 中級魔人

職業 カゲマサの部下

レベル 1

ランク B

スキル 弓術の達人 格闘術の達人 罠設置 気配察知 再生 魔力障壁etc.



名前 メリア・アートリー

種族 下級魔人

職業 カゲマサの部下

レベル 1

ランク C

スキル 舞踊の達人 扇技の達人 身体強化 再生 魔力障壁 気配察知



 こんな感じだった。中々強くなったと思う。そして二人の家は、俺が結界を施し、帝都における拠点とした。















◆ダンジョン第二十五階層 牢屋 カゲマサside



 そして俺は、迷宮研究所の側に作られた牢屋に来ていた。牢屋の中には魔封じの手錠に繋がれた勇者タダユキが、こちらを睨んでいたのであった。


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