不本意な就任
◆ハーサー荒野 第四軍第二師団陣地 エルランドside
かつてフリン公国にてカゲマサと出会ったエルランド・バーニッヒ少将は、その光景を驚愕の面持ちで見ていた。
突然外が光ったと思ったら、次は天地を割るかのような轟音、そして衝撃波。テントの中にいたエルランドは、慌てて外に出て何が起こったのか確認する。直後エルランドの目に飛び込んできたのは、巨大なキノコ雲だった。
「・・・何なのだ、あれは」
エルランドは、ただそれしか言えなかった。第二師団の兵士や将校達は、言葉さえ失ってしまっている。無理もない、彼等はこんな事態を予測していなかったのだから。しかし、これだけは確信した。恐らく爆発の中心にいたのは、エルザム神聖国の軍勢だと。
◆帝国軍第四軍本陣 ゼルバside
帝国軍第四軍の将軍であるゼルバ・フラーク大将は、キノコ雲を見て冷や汗を流しながらも笑う。
「・・・はは、想像以上だな。少なくとも私には出来ん」
ゼルバは、あの爆発を起こしたであろう茶色仮面の青年を思い浮かべる。
(只者ではないと分かってはいたが、これ程か。私の目もまだまだ未熟よ)
そんなことを考えていたその時、ゼルバの前に魔力切れで気絶したカゲマサを抱えたロロが転移してきた。
「ロロ元帥閣下、あの一撃は」
「そうです。このカゲマサ殿の魔法ですよ」
「魔法、ですか。凄まじいですな。あの威力を放てるならば一席が百年も空白だった《帝将》も夢じゃありませんぞ?今は魔力切れでのびておりますが」
「ふむ、《帝将》ですか。・・・まあ、皇祖様にそれとなく告げてみましょう。では、軍の撤収を」
「・・・と、言うことは」
「私がこの目で確認しました。エルザムの連中は全滅です」
「はっ、了解しました。各通信兵に伝達!戦争は終結した!全部隊は撤収せよ!」
「はっ!」
こうしてセブンス帝国とエルザム神聖国の戦争は、両軍が接敵する前に太陽のごとき魔法によって、エルザム神聖国軍の全滅という形で終結した。
◆秘密の庭園 カゲマサside
「・・・・・・・ファッ!?」
暫く気絶していた俺は、唐突に目を覚ました。確か【核撃爆弾】を放った際に俺は、【フライ】で何とかロロさんの元に戻ったものの、魔力切れで気絶したんだっけ。
俺は、一旦辺りを見回すと、そこはナナさんの庭園だった。そして案の定、椅子に座ったナナさんと後ろに控えているロロさんがいた。
「ようやくお目覚めね。気分はどうかしら?」
「悪いですね」
魔力が完全に回復しきっていなかったので、DPで魔力回復のポーションを作成し、一気に飲み込む。
「ぷはっ!これで何とか」
「そう。とりあえずエルザム神聖国軍の討伐お見事でした」
「敵が馬鹿みたいに纏まって行軍してたからですよ」
「それもあるわね。さて、報酬だけど」
そう言ってナナさんは、俺の目の前に一枚の地図を渡した。
「ご希望の世界地図よ」
「おお!これがか!」
俺は、食い入るように見る。だが、その後に来たナナさんの言葉が俺を地図から現実に引き戻した。
「それと貴方には、《帝将》という組織に入ってもらうからそのつもりで」
「・・・・・・・・・は?」
《帝将》?なんじゃそりゃ。俺の中に生じた疑問には、ロロさんが答えてくれた。
「《帝将》とは、皇祖もといナナお嬢様直属の部隊の通称です。構成員は七名、全員ランクSが最低条件の文字通り最精鋭部隊。因みに私が《帝将》第一席です」
「ようするに、私の手駒の中では最高ランクの地位です」
手駒って言っちゃったよ!!おまけに最低条件がランクS!?どんな化け物部隊だ!しかし、今はそんなことどうでも良い!!
「じ、辞退しま」
「拒否権はありません。もう通信用の魔道具で全国通知しましたから」
「はあっ!?」
「まあ、名誉職だから気にしないで。それに今の《帝将》は、ロロ以外いないから反抗するものはいないわよ」
「い、いないとは?」
「ロロ以外調子に乗って、愚かにも私に襲い掛かってきたから、皆殺しにしたわ」
「み、皆殺しって」
だがまあ、冷静に考えてみると最低数百年は生きている最高位ダンジョンマスターのナナさんとやっとランクSになったひよっこでは、地力が違うか。
「・・・わかりました」
「ふふ、ありがとね。さあ、仕事はお仕舞いよ」
「・・・失礼します」
そして俺は、どんよりとした空気を纏いながら【ゲート】でダンジョンに帰還した。
俺が帰った後、ナナ・セブンスはロロ・セブンスに命じる。
「さあ、ロロ。西方大陸の各国家に映像を流してちょうだい。バッチリ撮ったんでしょう?」
「もちろんです」
するとロロは、現代でいうカメラのような魔道具を取り出し、スイッチを押すと、ホログラムのようなものがあらわれた。
「内容はいかがなされますか?」
「そうねぇ。《帝将》の復活を先程の映像を合わせて伝えなさい。そして新たなる《帝将》よってエルザム神聖国軍が全滅したと」
「御意」
余談だがこの通知は、各国に衝撃を与えた。中小規模の国家は、セブンス帝国に新たな戦力が加わったことによる恐怖を。セブンス帝国には劣るものの、ある程度の国力をもつ大国は警戒感を抱いた。
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