ダンジョンでの一幕
蹂躙要素有り。苦手な方は引き返すことを進めます。
ドミニク辺境伯領に出現したダンジョンは、人間達からは詳細が分かっていないダンジョンと認識されている。それもそのはずで、奥に進んだものは皆帰ってこないからだ。そのせいで、ダンジョンの情報が全く得られていない。
そんなダンジョンの奥深くでは、一体何が蠢いているのだろうか。人間達には知りようがない。
◆ダンジョン第八階層 〈狂星〉オニメside
ダンジョンの第六から第二十五階層には、〈六将〉直属の部下の〈二十狂星〉という幹部が常に待機している。いつでも防衛に向かうためだ。
この第八階層には、〈狂星〉オニメという幹部がいる。名前は、カゲマサが鬼で女性だからオニメという適当な理由で付けられたもの。だが当人は、その適当な名前を誇りにしていた。さて、そのオニメはというと、自身に当てられた部屋で肉を食っていた。
「暇だなぁ。モグモグ。何か冒険者とか来ないのか?モグモグ」
名前 オニメ
種族 オーガクイーン
職業 階層二十狂星
レベル 32
ランク A
スキル 剛力 俊足 気配察知 再生 魔力障壁 etc.
これがオニメのステータスである。ランクは〈狂星〉なので、当然Aだ。そんなオニメだが、侵入者が来ないので暇をもて余している。
「いっそ、ゴブイチ様に攻略軍への転属願い出してみるか?」
オニメがそんなことを言うと、部屋の扉が激しくノックされ一人のゴブリンが転がり込んでんできた。
「失礼致します、オニメ様!百魔隊長トロジ様から緊急の連絡が!」
「っ!どうした!」
「はっ!冒険者が転移罠によってトロジ様の領域に出現!現在トロジ様配下の部隊が食い止めております!」
「わかった!私が行く!トロジには、出来る限り粘るように伝えとけ!それと、近場の部隊を集めて向かわせろ!二個中隊並あれば良い!」
「はっ!最短ルートはあちらです!」
「おう!」
そう指示した後オニメは、一気に駆け出した。
◆ダンジョン第八階層二番領域 〈百魔隊長〉トロジside
オニメに緊急の連絡を行ったのは、トロジというトロールジェネラルという種族のモンスターである。ランクはB。現在トロジの眼下には、四人の冒険者相手に配下の部隊が懸命に戦っていた。トロジの部隊を構成しているのは、ゴブリン・トロール・オーガ・サイクロプスなどである。トロジが行った作戦は二つ。
一つは、トロールが積極的に前に出て壁を作り、冒険者に隙が生まれた所を射撃隊で仕留める作戦。もう一つは、冒険者達がトロールに気を取られている内にオーガ隊を後ろから強襲する作戦である。
一つ目の作戦は、上手くいっている。二つ目はというと、まだオーガ隊が間に合っていない。
「埒が開かない」
作戦を立てたは良いが、上手くいかないことに腹を立てたトロジは、部下に命じる。
「お前等!冒険者共を包囲しろ!逃げ場を無くせ!オーガ隊は、合流次第包囲に参加!俺様が仕留めてやる!」
部下達は、命令通り冒険者達を包囲しにかかった。冒険者達は包囲されることに気付いたのか、領域出口から逃げようとする。だが、ちょうどオーガ隊が入ってきたことで逃げ道が無くなった。すると。
「さあ、侵入者共!覚悟しろよ?この〈百魔隊長〉の一角であるトロジ様が相手だ!」
トロジが包囲を掻き分けて冒険者の前に立ち塞がる。冒険者達の構成は、戦士・弓手・魔導師・神官といった感じになっている。冒険者達は、逃げられないことを悟ったのか、武器や杖を構えて臨戦態勢を取る。
「さあ侵入者共!死ねぃ!!」
そして冒険者チームとトロジは衝突した。
◆ダンジョン第八階層二番領域 オニメside
オニメは何とかトロジのいる二番領域に到着した。そこには。
「あっ、オニメ様!ご足労お掛けしました」
「ああ、えっと。侵入者は?」
「それならあちらに」
トロジの指差した先には、ボコボコになって倒れている冒険者達が。
「はぁ~、何だよ。驚かせるな。はぁ~」
「いやー、突然のことだったんで。つい」
「まあいい。増援部隊には私が言っておく。ところで侵入者共はどうする?」
「戦士は研究部に引き渡します。どうも生きた実験台が一人必要らしく。残り三人ですが、弓手は第十一階層の〈狂星〉アラネ様へ。魔導師は、第十九階層の〈狂星〉ルシファ様に。僧侶はまあ、研究部のほうにおくりましょう」
「そうだな。さっさと送っておけ。しっかし、やっと戦えると思ったのに。ブツブツ」
オニメは、トボトボと自分の部屋に戻っていった。
◆第十一階層 蜘蛛の巣 〈狂星〉アラネside
ソレは、暗闇のなかで静かに待っていた。天井にぶら下がりながら。ソレが待っていると、領域に一体のクモが入ってくる。
「アラネ様~!ご飯置いていきますよ~!」
クモ系統のモンスターはそう言って、侵入者である弓手を転がした。アラネと呼ばれた〈狂星〉は、食事と聞き暗闇より姿を現す。
「あらまあ!ちょうど良かったわ!子供達のご飯が切れてたのよ!」
そう元気な声で答えるアラネ。上半身は人間の女性だが、下半身は巨大なクモだった。そう俗に言うアラクネと呼ばれる種族である。おまけに顔には、複数の目がある。ステータスはというと。
名前 アラネ
種族 アラクネクイーン
職業 階層二十狂星
レベル 24
ランク A
スキル 蜘蛛の女王・・クモ種の統率力上昇、眷属生成、身体能力上昇 鋼鉄糸 粘着糸 毒液 複眼 気配察知 再生 etc.
アラネは、転がされた弓手を持ち上げ、蜘蛛の巣に縛り付けた。
「うふふ、これで大丈夫ね。みんなー!ご飯よ~!」
アラネが手招きすると蜘蛛の巣のあちこちから軽トラサイズの蜘蛛が沢山這い出て縛られている弓手に殺到した。弓手は、身をよじり抵抗したようだが後の祭り。蜘蛛が引いた時には、既に骨すらも残っていなかった。
「う~ん、やっぱり人間一人じゃあ足りないわ。もっといただからないと家の子は満足しないもの!今度マスターに掛け合ってみましょう!」
◆第十九階層 悪魔の館 〈狂星〉ルシファside
第十九階層。そこには、一つの館がある。通称悪魔の館。文字通り悪魔の住む館であり、〈狂星〉ルシファのいる本拠地である。その館の一室にルシファはいた。灰色の髪を伸ばし黒いスーツを着た女性、悪魔ルシファ。実は、かつてカゲマサが仲間にした魔人達を入れておく牢屋の看守を勤めたことがあるのだ。そのステータスはというと。
名前 ルシファ
種族 アークデーモン
職業 階層二十狂星
レベル 41
ランク A
スキル 悪魔将・・悪魔種の統率力上昇、身体能力上昇、魔力上昇など 闇魔法 格闘術 剣術 気配察知 再生 魔力障壁 etc.
ルシファは、現在猿ぐつわをした魔導師の女を前にため息をつく。
「まったく、人間風情の始末を任されるとは。まあ良いが。おい、アモス。アモスはいるか」
「はぁい♪お呼びでしょうかルシファ様♪」
側に現れたのは、娼婦が着るような服を着た美女、サキュバスだった。だが、ただのサキュバスではなく、上位種のアークサキュバスというモンスターである。ランクはBで、アモス自体〈領域百魔隊長〉の一人だ。
「命令だ。この人間の女に悪魔の種子を植え付けよ」
「あらぁ、悪魔の種子を?あれは量産が非常に難しく、オマケに成功するかどうかも分からない失敗作なのに?」
「・・・・・今度マスターに会えるよう取り計らってやろう」
「やるわぁ!!」
アモスは、胸の谷間から黒い植物の種みたいなものを取り出し、魔導師の頭に植え付けた。すると、種は魔導師の頭に根を張り始める。魔導師は、悲鳴をあげるが猿ぐつわのせいで声が出せない。次第に魔導師は弱っていき、死んだ。
「ふん、死んだか。私自ら手を下さずに終われて良かった」
「死体はどうしますぅ?」
「〈掃除屋〉に渡せ」
「はぁい♪それよりも、マスターとの顔合わせはお願いしますね?」
「わかっている」
「うふふフフ、どんな服が良いかしら。あまり攻めすぎると引かれそうだし、かと言って控えめなのも・・・・・」
◆第二十五階層闘技場 研究部主任ミレンダside
第二十五階層には、大きな闘技場が存在する。そして闘技場の隣には、やたら近代的な建物があった。名を迷宮研究所。周りは鉄格子で囲まれ、兵士が常時警戒に当たっている。
迷宮研究所とは、主に新たなモンスターの性質調査や魔道具・武器・兵器の開発などを主にしている機関。取り仕切っているのは、研究部主任となったミレンダだ。
「さて、始めるかねぇ」
ミレンダは、現在ある研究の為に実験を行っていた。それは、モンスターの進化条件の明確化である。モンスターのみならず、この世界の生物は経験を得ることでレベルを上げ、一定に達するとランクをが上がる。だが例外もあり、それがミレンダの眼下に群がっているモンスター達。名を餓鬼。カゲマサがフリン公国にて購入した魔石をダンジョンに取り込ませ誕生させたモンスター。ランクはF。背丈は普通のゴブリンと同じだが、皮膚は浅黒く腹だけは多少出ているだけで、後は痩せていた。理性は無く、常に極度の飢餓状態。生物なら誰彼構わず食おうとする存在である。
ミレンダは、カゲマサより餓鬼達の可能性を調べるように頼まれ、スキル《鑑定》を与えられた。それ以来、餓鬼のレベルアップ条件と進化条件を探し続けた結果、一つの結論にたどり着いた。
餓鬼達は、生きている生物を捕食することでレベルアップを果たすのだ。死体を食わせて何度も検証したが、レベルは上がらなかった。殺すだけでも駄目だった。逆に喰うのを我慢させても、駄目だった。なので、餓鬼達が居る部屋に十人の生きている人間が吊るされた。もちろん侵入してきた冒険者達である。何か怒鳴っているが、防音なので聞こえない。中には、敗れた神官と戦士もいる。全員裸にひんむいてあった。
「じゃあ、エサを入れな!」
そして冒険者達を吊るしていたアームが外され、冒険者達が落ちていく。死なないくらいの高度から落としたので死にはしない。
そして落ちてきたエサに餓鬼達は、一斉に飛び掛かった。冒険者達は、何とか抵抗しようとするものと逃げるものとで別れたが、一人、また一人と喰われていった。最後に残ったのは、神官と戦士。戦士は拳で、神官は光魔法で抵抗する。餓鬼自体は、ランクFと弱いので直ぐ死ぬが、数が多すぎた。その数に耐えきれず戦士と神官は、喰われ死んだ。
ミレンダは、《鑑定》を用いて餓鬼達のレベルを調べる。そしてほくそ笑んだ。
「実験成功。やったねぇ」
これにより捕らえた冒険者は、餓鬼室に入れられて喰われるという方針が追加された。
◆ダンジョン第二十五階層闘技場 カゲマサside
今現在俺は、実力向上の為に〈六将〉の一人であるゼクトと模擬試合をしていた。
「【クリムゾンジャベリン】!」
「ぬん!」
俺は、火魔法を放つがゼクトは瞬時に躱して急接近してくる。そして、
「はぁっ!!」
「ぐふっ!?」
丁度俺の頬に強烈な拳が叩き込まれた。俺は、吹き飛ばされながらも態勢を立て直そうとするが、目の前にゼクトが迫り立て直しができない。
「っ!糞!やりづらいな!」
「ははっ、これが俺のやり方ですの、で!!」
「!?」
ゼクトは、喋りながらも俺に回し蹴りを食らわせる。俺は、再び吹き飛ばされながら思案する。
(ふむ、ゼクトは近接戦ではダンジョン随一だからな。魔法を使うことが多い遠距離タイプの俺じゃあ分が悪いか。あ、新しい魔法使ってみるか!)
俺は、ゼクトから可能な限り離れると魔力を集中させる。
「よし、【アクセラレート】」
その瞬間俺の姿がブレて消えた。ゼクトは、目を見張りながらも周囲を索敵しようとし、両腕を上げ降参の意思を示した。何故ならばゼクトの背中に突き付けられたオリハルコンの剣。それが物語っている。
「驚きです。まさか背後を取られるとは」
「俺も驚きだ」
【アクセラレート】。ほんの一瞬だけ、自身の行動を超加速させる魔法。例えば、【アクセラレート】を使いながら走ると、瞬間移動したかのように速く走れる。只あくまでもほんの一瞬なのですぐにきれる上、燃費も悪い。使うには、タイミングを考えないと。
「中々に良い模擬試合だったよ。また付き合ってくれるかい?」
「俺でよければいつでも」
「そっか。じゃあ、持ち場に戻って良いよ」
「はっ。失礼します」
そしてゼクトは担当階層へ。俺は、コアルームに向かった。
◆第二十一階層一番領域 迷宮防衛軍駐屯所
ダンジョンの第二十一階層には、広い湿地が広がっていた。これは、ダンジョンの機能の一つの環境指定という機能で、草むらや荒野といったものにカスタマイズできるものだった。そんな湿地のある第二十一階層一番領域と呼ばれるエリアには、中規模な砦が存在していた。名を迷宮防衛軍駐屯所。防衛軍の数ある拠点の一つで、主に重要な領域に造られている。砦の外壁には、リザードマンというモンスターの兵士が常に警戒を行っており、空にはワイバーンと呼ばれる翼竜が飛び回っている。
そんな砦には、当然〈階層二十狂星〉が付いている。砦の一際豪華な部屋では、一人の背中に尾ひれの付いた大男が寛いでいた。
名前 スピノ
種族 アクアサウルス
職業 階層二十狂星
レベル 42
ランク A
スキル 太古の生物・・身体能力超上昇、再生など
気配察知 剛力 堅皮 水魔法 etc.
スピノが寛いでいると、ドアがノックされる。
「あん?こんなときに誰だ?」
「失礼する」
ノックは何だったのかと言わんばかりに勝手に入ってきたのは、鎧を身に纏い巨大な薙刀を携えた一人の男。頭には二本の角が生えている。
「何だ。リューゾウじゃねぇか」
「悪いかスピノ」
名前 リューゾウ
種族 龍人
職業 階層二十狂星
レベル 41
ランク A
スキル 武術の達人 武器術の達人 気配察知 再生 魔力障壁 竜の威圧 etc.
「で、何のようだ?」
「うむ、実はな。クロ様より、我が階層の部隊表を渡されたのだが、生憎我は戦うしか能がないのだ。だから、教えてくれないか?」
「ああ、お前地頭悪いもんな。わかった。教えてやるよ」
そしてスピノは語り出す。
このダンジョンには、各階層にそれぞれ部隊が配置されている。その内第二十一から二十四階層までには、主にスピノみたいな蜥蜴系統やリューゾウのようなドラゴン系統。後、蛇系統も存在する。
主な部隊として例を上げると、合計二千体のリザードマンや足をはやし二足歩行となった蛇、ワースネーク等で編成された部隊。
次に、動物のまま進化した種。蜥蜴やワニ、蛇などの獣で編成した部隊。
最後に、最強生物ドラゴンや龍人などで編成された部隊。
「と、こんな感じだな。何か質問は?」
「いや、大丈夫だ。しかし、思ったより単純なのだな」
「まあな。俺等の種族となると、分けやすいって聞くぜ?」
「なるほど」
因みに他の階層では、沢山の部隊が存在しているが、リューゾウには酷かとスピノは黙ることにした。
◆コアルーム カゲマサside
俺は、暫くコアルームにて寛いでいた時、ある人物から連絡先が入った。
『主君、少しよいだろうか?』
「ん?なんだい?ナタリア」
ナタリア。カゲマサによって奴隷として買われたエルフ。溶解の呪いに侵されていたが、カゲマサの全力【ヒール】で完治した。どこかの国の元近衛騎士だったらしいが、今は地上にある酒場の用心棒をしている。
『実はな。地上でどこぞの馬の骨かは知らんが、貴族の三男を名乗る輩が手下を引き連れ酒場を占拠しているのだ。しかもな』
「しかも?」
『その貴族の三男がマヤを、性奴隷として連れていこうとして』
「良し、その三男坊殺す」
俺は、怒りのままに【ディメンションムーヴ】で転移した。
次回もダンジョンの内情についてです。
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