第四十二戦
「足にきてるですって?」
真田幸村の特殊攻撃、またそれに追加しての追撃。
天下道千代の体、とくに足には尋常ではないほどのダメージが蓄積されていた。
全体重を支えるのに加え、攻撃に耐え、立ち続けた足は限界そのものだった。
(確かに立ってられるのが精一杯よ。回復だってしてないし、してたら隙が生まれる。けどね)
「私を舐めないで!」
限界に達している足で、地を蹴り、加速し真田幸村に突撃する。素手が武器の真田幸村には飛び道具なんてものはないと見込んで。
「まさか、そんな状態でまだやるとは……ねっ!」
真田幸村は天下道千代の突撃を、よけるでもなく、かわすでもなく、受け止める。
両者掴み合いだ。
「受け止めるとはさすが。でもっ!」
「く……っ……!」
掴みあっていた状態で天下道千代は手に力を込める。握力で攻撃していた。
「天下統一アビリティを舐めないで」
天下道千代の体からオーラのようなものを真田幸村は見た気がした。
☆
「はぁはぁ、ちっ!´千人切り、の異名は伊達じゃなかったってわけ……かよ」
俺との斬り合いで、膝をつき、俺を見上げる徳川家康が言う。
「俺だって今じゃ一国の主なんだ。……もう負けるわけには……絶対に負けちゃダメなんだ!!」
一国の主になってから思っていた決意を俺は徳川家康の前で言う。
「ふぅ……そうかい」
ふっと含み笑いをしたあと、徳川家康は地面に大の字になって天を見上げた。
「殺れよ……勝負は決した。俺の負けだ」
覚悟を決めた徳川家康の声が、大きくもないのに耳にすんなりと入ってくる。……これが覚悟を決めるということなのか……。
「いやあんたには俺の」
兵士になってもらう。
と言う前に、敵軍、徳川家康の配下の兵が家康に報告に入った。
『援軍!援軍です!!』
「んぁ?援軍?」
徳川家康は上記を理解してないのか少し、間の抜けた声になって兵に聞き返す。
周りを見渡すとたしかに、天下道軍の援軍と思われる軍勢に少しずつ俺は囲まれていた。
「迅!」
「どうしたサクラ?」
駆け足でやってきたサクラは、慌てているという風には感じれずむしろ落ち着いているように感じた。
「天下道の援軍よ!数はざっと5千と言ったところね」
「5千か…。俺たちの総勢と同じだな」
「まだ増えるでしょうね」
「そうか」
「山口の真田軍がやられたみたいね。もしかしたらこの援軍はその連中かも」
「来るの早すぎだろ」
ゲームの世界だからなのかは分からないけど、来るのが早すぎる。
「どうする?」
サクラは聞いてくる。このまま続けるか否かを。
「そうだな……」
目に映る、自軍の兵と話している俺との戦いで傷を負っている徳川家康。
その後方、また四方から俺たちを囲みつつある敵軍の援軍。
「…………撤退だ。サクラ」
「分かったわ」
サクラは俺の命令を否定することなく頷いた。
だが、俺の命令に驚いてるやつがいた。
「おい!てめぇ!´千人切り,!!なんでた!?なんで撤退すんだ!?」
怒鳴り散らして俺に理由を聞こうとする徳川家康。
その表情は真剣にそして、本気で怒っていた。
「援軍が来てる。それにこっちのダメージも少なくない」
俺は理由を話す。
戦っていたのは俺と徳川家康だけじゃない。
各拠点でも戦いは繰り広げていた。
その結果として俺たちの軍も中々なダメージを受けてた。それに追い討ちをかけるように敵の援軍。撤退には十分な理由だ。
「ざけんなっ!」
しかし徳川家康は理由に納得いかないのかボルテージをあげる。
「援軍がこようが、この戦においての『総大将』は俺だ!その俺がかなり弱ってんだぞ!?なのになぜ逃げる!?俺を倒せばいいじゃねーか!」
「…………」
「何とか言えよ!´千人切り,!!」
分かってる。徳川家康の言いたいことは。
でもこっちにも考えがあって「撤退」という選択肢を選んだんだ。表向きの理由として。
「サクラ、今すぐ全拠点を廃棄。すぐにこの戦場から撤退する」
「了解」
「ソードも味方の撤退を手助けしてやってくれ」
「了解だ大将!」
二人に命令をし、俺も撤退の準備に取り掛かる。
「おい!逃げんなよ!」
「…………」
「おい!´千人切り,!!」
俺は最後に徳川家康に振り向く。
「逃げるわけじゃない……!未来を見越しての撤退だ!」
後ろで叫ぶ徳川家康を後にしながら俺は戦場から撤退した。
☆
「ふぃ……やられちゃったな〜」
土や泥、それち埃をかぶった真田幸村が、右手を額に当てなが天を仰いでいた。流れる雲のスピードが遅いと感じながら真田幸村はさっきまでの戦を思い返す。
「強かったな〜天下道の千代ちゃん。あやうく死んじゃうとこだったよ〜」
今はいない、先程まで戦っていた敵の名を口にし、自分自身を嘲笑う真田幸村。
「さすが西の天下道の『総大将』だけはあるね」
改めて強さを確信しながら次はどう挑むかを考える。
「でも、まぁ〜。作戦通りだね。あとは私の未来の旦那様がうまくやって、やってくれるでしょ」
真田幸村の目には何が映っているのか。
それは真田幸村本人しか分からない。
「天下を取るのは……」
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