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第三十九戦

「『同盟』?」


「そ。『同盟』」


「誰と誰が?」


「僕…あっ私と貴女。つまりは真田と天下道だね」


天下道千代は眼前に見える真田幸村を睨みつけるかのように観察する。

上半身はは黒一色のフードコートで覆い、下半身は赤を基調としたミニ袴。

その袴から伸びる脚は細く色白い、しかしながら大地をしっかりと掴んだように堂々と立っている。

顔はフードを被っているせいか、影が邪魔して顔全体は眼で見ることができない。

しかし、エメラルドのように輝く真田幸村の両眼は見ることができる。

そして、真田幸村が本気なのだと分かる。


「なんで?」


天下道千代は聞いた。

当然だろう。いきなりの申し出だ。いくら天下道千代でも分からないことはある。


「まっ当然疑問に思うよね~」


真田幸村は天下道千代がこう聞いてくるだろうと予想していた。

そして用意していた答えを言う。


「同盟を組む理由。ううん。私が天下道と組みたい理由はね…」


時折吹いていた風は止み、真田幸村の答えを待つかのように、あたりは合戦の最中だというのに静まり返った。


「舞剣を倒すためだよ」


「…へ~」


一拍、天下道千代の返答が遅れた。

まさか同盟を組む理由が舞剣を倒すためだとは。


「貴女も知ってる通り今、この天下を争う中で強い勢力が二つある。一つは貴女、天下道だね。そしてもう一つは舞剣」


「それが何?もしかして舞剣が私より強いって言いたいの?そして舞剣をどうせ私じゃ倒せないから貴女たちが協力して一緒に倒してあげるっていう上からお願い?」


天下道千代は先読みして返答する。

その際、若干ではあるが苛立った。


「ううん。違うよ~。それにどっちが強いかなんて分かんないよ。だって私はその二つのどちらとも戦ったこと無いんだもん。ていうか下からのお願いをしているつもりだよ私は。私達だけじゃどうあがいても舞剣には勝てないから天下道の力を借りたいの。どう?お願いできないかな?」


天下道千代は暫し考えた。しかしそれはほんの一瞬のこと。

真田幸村が本気でお願いしているということは分かった。しかし。


「無理よ」


天下道千代の言葉が響く。

これは最初から決めていた答え。


「ん~参ったな~。断られるとちょっと厳しんだけどな~」


真田幸村は陽気に言葉を発するがその言葉の端端には苦言が混ざっていた。


「他をあたって。私には同盟なんていらないから」


「理由を教えてくれないかな?」


「理由…理由ね…」


嘲笑うかのように天下道千代は言う。


「私が強いから。理由なんてそれで十分よ」

それは同盟を組んでまで戦力を上げずともいいという意思表示。

天下道千代の言葉を聞き、真田幸村は少し肩を落とす。


「そっか。残念だね」


「さっこれで話はお終い。おとなしくここを渡して」


「ごめんね~それはできないな~」


「なら力ずくで奪ってあげる…!」


瞬間、天下道千代がとびかかる。

腰に差してあった刀を抜き、真田幸村の首を狙って斬る。


「刀…か」


真田幸村はぽつりとつぶやくと回避行動はせず防御に行動をした。

その際、武器は何も持たず、素手で天下道千代の刀の攻撃を受けた。

片手版真剣白羽どりである。しかし使ったのは右手の人差し指と中指だけ。


「なっ…!」


天下道千代の驚愕の声が漏れる。

当然だろう。人の首が簡単に斬り飛ぶ程度には力をいれて行った攻撃が、たかが片手にそれも二つの指で完全に威力を殺されたのだから。


天下道千代が驚きのあまり動きを一瞬止めた瞬間に、真田幸村は刀から指を離し、深くしゃがみ足払いをする。天下道千代は簡単に地面に倒れた。が、すぐさま起き上がり距離をとった。


「くっ…」


「流石に続けてニ撃、三撃とはいかないか~」


にこやかに真田幸村は言う。天下道千代はそれを見てぞくりと恐怖した。


「まさか私の攻撃を素手でしかも片手の数本の指で防ぐとはね」


「ふふ。凄いでしょう~。刀や銃はしょせん手の延長線。なら本質的には素手同士で戦ってるのと同じ。だから私は武器なんか持たずに素手を…体を極めたの。さっきのなんてお茶の子さいさいだよ?」


「考え方はぶっ飛んでるけど、それで防がれたんだから認めるしかないわね」


(本気で行くしかないようね)


「目つきが鋭くなったね~。いいよ。相手してあげる。将来の天下人の嫁である真田幸村がね!」


「ん?ちょっと待って天下人の嫁?」







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