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第三十七戦

中国四国地方、山口。

今ここで九州を制した天下道が難なくこの地を落とそうと攻めていた。

だが、予想以上に難航していた。


「ん~。おっかしいな~。思ったより拠点落とせないね~」


「そうですね…ここ山口は敵の本拠地でもないのですが…いささか芳しくないですね」


楽観的な考えを持ち、なおかつ戦というのに真剣な表情をしていない天下道千代とは対照的に秀吉は真剣そのものだ。


それもそうかもしれない。天下道千代自身、自分が出れば勝てるという絶対的な自身と実力があるのに対し、秀吉は自分の主の本当の強さを知らないのだから。だから秀吉は今ある戦力でどうにかしようと奮戦している。それはなるべく『総大将』を動かしたくないのと、実際、自分の主が本気で動いたらどうなるのか分からないという恐怖。


この点に関しては天下道千代は賢い、いや、巧いが適当か。本気を見せてないというのはつまりは限界を知らせてないということ。限界を見せつけてしまえば何らかの対策がとれるようになってしまうが、見せつけなければそれは未知になり、ある種の抑止力になる。それを味方にも見せつけない天下道千代。これは才能なのかもしれない。


「よいしょっと」


椅子に座り、戦況図を見ていた天下道千代は言葉とは裏腹に軽やかに椅子から立ち上がった。

おもむろに近くにある武器を物色する。


「今日はこれでいいかな~」


秀吉は戦況図から天下道千代に顔を移し言う。


「出られるんですか?」


「まあね~。こんなところでちんたらやっててもしょうがないし、四国もあるしね。本陣は任せたよ秀吉」


「承知しました」


普通ならば『総大将』の出陣を止めるのが側近、幹部の役目だろう。しかし天下道千代に、戦中に物申すのは御法度だ。この軍のトップは天下道千代であり、天下道千代によってここまで来ているのだから。実績が無ければ秀吉は止めたかもしれない、しかし実績があるがゆえに止めない。いや、信じているからこそ止めないのかもしれない。


秀吉は天下道千代の背中を見送り、口には出さずにご武運をと祈った。



軽やかに戦場を闊歩する天下道千代。

戦は実際に戦場に出てみなければ分からないことは多々ある。それを天下道千代は実感していた。


(いくら防衛側とはいえ各拠点に配置してる兵の数が多いな。これじゃすぐにガス欠になるだろうに)


違和感を感じながらも自軍が優勢または押し切られてない拠点はスルーし、先へ先へと進む。


天下道千代が戦場に出たという吉報はすぐ天下道軍全体に伝わり、各拠点の天下道兵士は士気を高め拠点をとるペースを上げていく。


天下道千代が戦場に出てから数十分が経ち、彼女自身も己の手で3つほど拠点を落とした頃、敵『総大将』が出陣したという情報が飛び回った。


(やっと出てきたね。まっ出なくても本陣落としちっただろうから関係ないけどね)


近くの拠点に出陣したという情報を頼りに天下道千代が向かう。


天下道千代が拠点に着くと意外な人物がそこにいた。



「おかしいな~。ここのいや、この国の『総大将』は違う人だったと思うんだけどな~」


「何故か教えてあげるよ。それはね君たちよりも早く僕……私が落としてここの主になったからだよ」


「へ~。ん?でも待って。そうなると今四国を守ってるのは誰?」


天下道千代の問いに真田幸村は不敵に笑った。



四国


「おいおい。ここは真田領じゃ無かったのかよ」


家康は苛立ちを隠せず、強い口調で部下に聞いていた。


「はっ私はそう伺っておりましたが」


「ならなんで……」


家康は眼前に見据えている敵を見て言う。


「´千人切り,……前田軍がいるんだよ……!」

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