第三十六戦
「ふんふんふ~ん」
軽くスキップをし、鼻歌も歌いながら草原を闊歩する少女。少女の見える先には陣を広げている敵軍。
「おうおう広げてる、広げてるね~」
「千代様!『総大将』である貴女様が軍を離れて一人先だって敵陣に行くなどなりませぬ!」
「貴方達が遅いんじゃない~!私のペースに合わせなさいよね」
「貴女様が早すぎるのです!なぜスキップで我が軍の馬より早いのですか!?」
「んー。それはね私がチートキャラ?だからだよっ!」
「ち、チート?キャラ?」
「あはは、何でもない何でもない。忘れて~」
なおも少女、天下道千代はスキップで軍より一足いや数歩先、先に出る。
家臣である老兵はなんとか馬で天下道千代の早さに追いつき千代が止まるよう説得する。
「お待ちください千代様!さらに我が軍との差があります。このままでは貴女様が一人で敵と対峙することに!」
「それは心配ないと思うけどな~。私一人で十分だし」
「何か仰られましたか?」
「ううん。何でもない」
天下道千代はそこで足取りをやめ、老兵に聞く。それは自分の軍が自分に追いつくまでの時間潰しのため。
「それより四国はどうかな?」
「はっ千代様のご命令通り家康を派遣しました。難なく落とせるかと」
「でも心配だな~。四国の主は一筋縄じゃ行かないと思うんだよね~。ここを落としたら私達も四国の援護に行こう」
「千代様が仰るのならそういたしましょう」
天下道千代が老兵と話をしているとやっと俄軍が天下道千代に追いついた。
天下道千代は軍の中の一人の将に人差し指を指し文句を言う。
「全くも~遅いよ秀吉!」
「すいません千代様。僕なりには頑張って追いつこうとしたんですが」
「まっいいよ。早くここ落とそ」
「承知しました」
天下道千代の軍は少し進み、秀吉の指揮の下本陣を築く。そのさなか秀吉は天下道千代に聞いていた。
「九州を平定してからは訓練はするものの、いっこうに天下の為に戦をなさらなかったのにどうしてまた急に戦をしようとなど思ったのですか?やはり舞剣の影響ですか?」
「んーそれもあるかな」
舞剣が伊達を滅ぼしてから1週間が経っていた。その期間日本全土にいる武将は大きな動きを見せていなかった。
「北の舞剣、南の天下道。と庶民は呼んでいますからね」
「まっ負けられないよね~。でも私の本当の目的は……」
最後の言葉は秀吉には聞こえなかった。天下道千代も聞かせるために言ったわけではない。最後のはただの独り言。
(ここ1週間なんの動きも見してない前田の新しい『総大将』が私が動いたら動くのかを知りたいからね。それに早いとこ一度会ってみたいし)
「天下を統一するためにもまずは中国四国地方のここ山口をはやく落としましょう」
「そだね~。強そうな武将もいなさそうだしここは秀吉にほぼ任せるよ」
「承知しました」
「本拠地には信長を置いてきたし、四国には家康。ここは秀吉が居るから問題はないわね。本拠地にどっかが攻め込んできたり、四国が敗戦しそうになったり、ここも敗戦しそうになっても私が出ればいいだけだから万事OKね」
天下道千代はかくにんするように布陣を確認する。天下道千代が言うようにたとえどこかがプランどうりに行かなくとも天下道千代本人がでれば問題ないだろう。それほど彼女には力がある。




