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第三十二戦

もうそ……想像で補ってください!拙い文章なので!

俺は頭が回らなくなっていた。普段対して使ってない頭が余計に。それほど慶次さんが言った言葉は衝撃的だった。


「ど、どういうことですか?」


俺はすぐに説明を求めた。『総大将』を俺に移す?どうして?


「言葉のまんまだ迅。俺は『総大将』を辞めて、お前さんに全権を移す」


「いや……だからどうして慶次さんが『総大将』を辞めるんですかっ!」


最後少し語尾が強くなってしまったが、俺が今、一番聞きたいのはこれだ。『総大将』の権利を移す、移さないの話じゃない。どうして慶次さんが前田の『総大将』を突然辞めると言ったのかだ。


「分かってくれ迅」


慶次さんは俺の方を向かずにこう言うが、俺は


「分からないですよ……分からないって!!」


「ちょっと迅落ち着いて……!」


興奮した俺をサクラが抑える。それでも興奮は収まらない。


「離せよ……!サクラっ!」


「いいから落ち着いてって!」


「落ち着けるわけないだろ!サクラは平気なのか?慶次さんが『総大将』を辞めるって言ったんだぞ?」


「私だって驚いてるわよっ!でも迅今は戦中よ?落ち着いて!」


サクラにこう言われても俺は全然興奮は覚めそうになかった。だがこの興奮した中でも慶次さんの言葉は耳に入った。


「そうだ落ち着け迅。冷静になれ」


「いやっでもっ!」


「ソードいるな?」


「はいここに」


慶次さんが呼んだと同時にソードが何処からともなく現れた。そして慶次さんは俺と話はしなく、ソードに話しかける。


「さっきの言葉聞いていたな?」


「はい」


「そうか。じゃさっき言った通りだ。配下のものも使って兼続にも伝えてくれ」


「御意」


「俺も戦場に出る。後はいろいろ頼んだぞソード。それとサクラ。若き『総大将』のサポート頼む」


「はい」


どうして二人とも言いなりというか。聞き捨てがいいんだよっ!俺はこう思ったが、2人の顔を見て違うと思った。


二人とも顔は納得してなかった。


慶次さんは二人に言ったあと天守を出て戦場に行こうとする。俺と何もはなさないまま。


「それと……」


天守を出る寸前、慶次さんは立ち止まりこの場にいる全員に向けて言う。


「政宗を守ってくれ。そしてあいつを絶対に戦場には出すな。……修羅になる」


最後のはよく聞き取れなかったけど伊達政宗を守れという命令はしっかり守ろう。まだ慶次さんは『総大将』なんだから。


そして最後に俺に途中から何も言っていなかった慶次さんが言う。


「すまねぇ迅。でも分かってくれ。そして前田を……前田を頼んだぞ……!!」


そう言って慶次さんは天守を飛び出した。


俺はその場に立ち尽くすことしか出来ないでいた。すまない?前田を頼む?まるで……これじゃまるで慶次さんは死にに向かったようなもんじゃないか。俺は……俺は……


「どうするの?迅。いや『総大将』」


「俺らも出るに決まってるだろ。あの人を……慶次さんを今ここで失うわけにはいかない」


俺がこう言ったとき誰かが天守に入って来た。


「……けい……じ?」


「……伊達政宗」


俺が振り向くとそこには伊達政宗が立っていた。片眼は眼帯で、そして慶次さんに聞いたとおりもう片眼は見えないのか閉じていた。どうやら目覚めたらしい。そして多分慶次さんを追ってここに来たんだろう。


「慶次さんはここにはいない」


俺はそんな伊達政宗に対して慶次さんがここにいないという事を伝えた。


「さっきから騒がしいが……もしかして戦中なのか?」


「ああ。それで慶次さんは今さっき向かった」


「……なら……妾も……妾も行く」


天守を出ていこうとする伊達政宗を俺は止める。


「止めろ。今いっても足でまといなだけだ」


実際誰が行っても足でまといにしかならないだろう。でもそれでも俺はじっとしてられない。けれど同じ気持ちであろう伊達政宗を今行かせるわけには行かない。慶次さんとの約束もあるが今は駄目だ。


「……離すのじゃ。妾は伊達の『総大将』じゃぞ」


伊達政宗は抵抗しつつ俺に離すよう訴える。だけどここで離すわけにはいかない。


「……離すのじゃ」


「駄目だ」


「離せっ!!」


ドンッ瞬間、俺の体が伊達政宗から離れた。俺は何が起きたのかが分からなかった。


「……見える……見えるぞ……!待ってるんじゃぞ慶次っ!!妾が……妾が行く……!!」


俺が体を立て直し伊達政宗のほうを向くと眼帯が取れ蒼く閃光している片眼があった。そして伊達政宗は天守を飛び出していった。



喧騒の中を前田慶次は進む。


敵を何人か倒し城外に出た後、前田慶次は敵将と対峙した。


「やはりお前さんが出てたか……舞剣大心」


「おや。まさか最初にみる幹部クラスが貴方だとは思いませんでしたよ前田慶次」


二人の間はそう遠くはない。仕掛けようと思えばすぐにでも仕掛けれる距離だ。


「ひとついいか?」


前田慶次は舞剣大心に聞く。


「なんで『総大将』であるお前さんが出てるんだ?舞剣の幹部クラスなら戦力乏しい伊達&前田なんて簡単だろ?わざわざ最高戦力が出る幕じゃあないとおもうんだが?」


「これにはいろいろと訳があるんてすよ」


微笑みながら舞剣大心は語る。


「確かに舞剣の幹部を何人か投入すれば勝てるでしょう。でも勝てるでしょうであって勝つじゃない」


「負けるかもしれないと?」


「ええ。それに片腕を失ってるとはいえそちらには貴方が居ますからね前田慶次。舞剣の幹部ではサシの勝負では分が悪い。それに先の大戦でそれは立証されてしまっている」


「´戦国最強,のことか?でもあの時は俺は万全の状態だった。今じゃあの時のようには行かねぇさ」


「それもそうでしょうけど。何より私は……」


一拍おき舞剣大心は続ける。


「人をあまり信用してませんから……何人かを除いてね」


舞剣大心の言葉を聞き前田慶次は少し考えたあと口を開く。


「なるほど人に頼るよりは自分で行ったほうがはえーし確実ってことか。」


「えぇ。それに貴方に止めを差したかった」


「……そうかい」


刹那あたりが蒼い光に包まれた。


「覚醒しましたか伊達政宗」


「お前さんのおかげでな」


「しかしそれは貴方が守れなかっただけではないですか?」


「確かにそのとおりだ……なっ!!」


前田慶次は言葉を言い切る前に飛び出す。そして矛を舞剣大心につこうとするが舞剣大心は刀で防ぐ。


「今度は守ってやるさ……たとえ死んでもな」


「いいでしょう決着をつけましょう……!!」


今ここに事実上の伊達&前田対舞剣の最高戦力同士の戦いが始まる。



独眼竜とはいやこの世界での伊達政宗の二つ名『独眼竜』とは独つの眼に宿いし竜という意味である。


そして眼帯をしている意味。それはその竜を宿す眼を封印するためである。


竜と言っても実際の竜を宿しているわけではない。竜の力を宿していると言った方が適切か。封印した者は前田慶次。そのあまりにも強い力を誰も操る事が出来なかった為、前田慶次がまだ幼い伊達政宗の片眼を封じた。しかし封印は欠陥があった。残っているもう一つの片眼を封印を解く鍵にしてしまった。


そして封印は解かれた。


伊達政宗は自我が無くなりつついや、暴走に近い状態であった。装備は竜爪になり、竜眼は蒼く輝き、その見た目は前の可愛い女の子伊達政宗ではなく伊達家当主『独眼竜』伊達政宗になっていた。



「……どけっ……どくのじゃ……」


次々と迫る敵兵を斬る、斬るそして斬るっ!


「待ってるのじゃぞ慶次。今妾が向かうからのこの……『独眼竜』伊達政宗がっ!!」


今ここに『独眼竜』伊達政宗推参。



伊達政宗を行かせてしまった。俺は約束一つ守れない……。


「何やってるの迅!私達も行くわよっ!」


「サクラ……」


「そうですぜた……『総大将』。ここにいたってなんも変わらない」


「ソード……」


「それに今の『総大将』の貴方になら分かるはずだ。どうして慶次の大将が『総大将』を辞めるといったのかをな」


あぁ今なら漠然としてではなく、はっきりと分かる。どうして慶次さんが『総大将』を辞めると言ったのか。それは例え自分が死んでも前田の負けいや、滅亡は無いということ。でも逆にそれはリミッターが外れるということ。


「分かるよ今なら……行こうっ俺達も!」


『了解!』


俺達は天守を飛び出した。走りながら俺はサクラに注意を受けていた。それは今は俺が『総大将』という事。でも俺は負ける気なんか無かった。走って戦場に赴く中で自分が、自分の感覚が研ぎ澄まされて行くのが分かったから。それにリミッターが外れた慶次さんもいる。負ける要素なんて無い。



城内の敵を二人に任し、俺は城外に出た。


そこで俺は研ぎ澄まされていた感覚がぶっつりと途切れた。


「さすが「天下無双」とでも言えばいいでしょうか。生涯私が一番苦戦した相手でしょうね……前田慶次」


ぽたぽたと落ちる血。それは慶次さんの腹を突き抜いている舞剣大心の剣先から出ていた。


俺は見ている光景を信じたくなかった。あの慶次さんが?俺はその場を動けないでいた。だがこの時、もう一人。この光景を見ている人物がいた。



「よくもっ……!よくもっ慶次ぉぉおおお!!」


竜装を纏った「独眼竜」伊達政宗である。

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