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第十七戦

「これで最後っと!」


敵兵を倒し、俺は東側の拠点を全て制圧した。

残すは長宗我部本陣の城のみである。


「誰か先に居るかな」

「多分迅が一番よ」


独り言のように呟いた俺の質問に誰からか返信を貰えた。振り向くと


「サクラか!なんでここに?」

「何でって私も前田の一員なんだけど…」

「そういうことじゃない。どうして俺の方に?」


確かサクラはライトさんと一緒に本陣に居たはずだ。

それに援軍で来たとしても俺の所よりも他がいいんじゃないかと俺は思っていた。俺が敵本拠地に行くより兼続さんか慶次さんのどちらかがいけばいいから


「ライトに言われたの。多分迅の所が一番早く本拠地に行くって。それで援軍に来たってわけ」

「そうか。でもサクラじゃなあ〜」

「何?私じゃ不満なの?」


そう言ってふてくされるサクラ。もちろん冗談に決まっている。サクラの実力は俺が知ってるから


「ていうか暴走はしないでよね!」

「分かってるよ」


俺もあんな事はもうしないと決めている。今回も絶対に俺は暴走をしない。


「慶次さん達はまだ拠点をそんなに制圧出来てないのか?」

「そうよ。ソードに聞いたと思うけど二人のいや長政を入れたら三人かな?の所には次から次と勝ち目がないのに一般兵を長宗我部が送り込んでいるの」

「足止めか…」

「多分ね」


多分これには意味がある。

俺を長宗我部元親が誘っているような気もする


「まっとりあえず行きましょ。城内の一般兵は私が倒すから、迅は長宗我部元親の事だけ考えなさい!」

「おう。わかった。」



「はぁぁ!!!」


城内に入ると当初の予定通りサクラが一般兵を蹴散らす。どうでもいいけど戦ってる時のサクラは男気が強いと思う。


「よしと。さあ行くわよ!って何?」

「いや頼もしいなと思って」

「そ、そんなことないわよ。ぜ、全然弱いから!さあ行くよ!」


顔を赤くしながら否定しているがそんな所が可愛いなあとつい思ってしまった。



「ついに天守閣まで来たな」

「そうね。ここからが本番ね」


ついに俺達は天守閣の前まで来ていた。ここまではほぼサクラ一人だけでこれたおかげか、体力は全然残っている。おかげで俺は全力で長宗我部元親と戦える。勝てる保証は無いけど


「行くか」

「ええ」


勢い良くふすまの扉を開け、中を見渡す。

中には一人の女武人が立っていた。親泰よりも少し髪が長い長宗我部軍『総大将』長宗我部元親本人が


「遂に来ましたね。前田の武人」


声は高く凛々しい顔立ちだ。こんな人が慶次さんを倒しているとは思えないな


「っっ!」

「サクラっ!」


不意にサクラから言葉になっていない声が出る


「どうした!?」

「体が…動か…ない」

「え?」


サクラの全身を見るがとくにこれと言った異常は見えない。縄もついてないのにどうして?

サクラは硬直したまた直立不動で動けていない

まさか!


「何かしましたね?」


俺の言葉を聞いて長宗我部元親は不意に笑った


「ええ。少々そちらの方の身動きを封じて貰いました。」

「どうやって?」

「詳細は言えません。私の特技とはいいますが」


この世界の武将それぞれが持っている必殺技か何かなのだろう。この場合は固有スキルというのが当てはまるかもしれない


「どうしてサクラを?俺じゃなくて」

「あなたと一対一で戦ってみたいと思ったからですよ。だから彼女は封じて置きました。それにここにあなたが一番に来るようにも仕組んでいました。」

「というと?」

「東側拠点の方だけ兵を少なくし他に兵を回しました。もうお分かりですよね?」


そうか…。俺がここに一番に来れたのはもともと東側には兵が少なかったからなのか。そして慶次さん達には足止めのため兵を大量に送り込んだ…ハメられた


「すごいですね」

「それほどでも。ではお手並み拝見と行かせて貰いますよ´千人切り、!」


ゆらりと体を動かしたかと思うと長宗我部元親は一気に間合いを詰めてきた。早い!

俺は急いで刀で槍を迎え撃つ


「反応は早いですね。さすがと言った所でしょうか。ではこれならどうですか?」


間合いを取った長宗我部元親はなんともう一本槍を構える。…どこの幸村だよ


2本構えた槍で俺を攻撃する!

俺は防戦しか出来ない。二刀流とは初めての対戦だ


「私はお姉さんですからね。親泰よりも多く武器を使えないと」


攻撃のさなかそう呟くが、槍2本が多くという意味なのか?なんか違う気がする。


右手の槍が俺の左腹を狙いに来る。俺はそれを刀でガード…槍が来ない!?

!!フェイントか!

もう一本の槍が俺の右腹を狙う、くそっ間に合わねえ!!



私の目の前には大量に血を吹き出した迅が横たわっていた。

迅の横では血で汚れている槍を持った長宗我部元親が立っている。


「迅!」


私は叫ぶ事しか出来ない。体が金縛りにあっているから。金縛りは通常自分より格下の相手に効く例外の場合もあるらしいけど。私は薄々、ううん。分かってた。私が迅より弱いってことをあの時から。だから金縛りは私にしか効かず、迅には効か無かった。

私は今すぐ迅に駆け寄りたい。でも動くことが出来ない。悔しい、ただその気持ちだけが今の私の心を満たす


「思ったより弱いですね´千人切り、正直がっかりです。」


長宗我部元親は横たわっている迅を見ながら感想を漏らす…そして


「迅をどうする気!」

「おや?喋れるのですか?どうするって死体がここにあっても邪魔ですしね。ちょっと下に置こうと思いまして」


長宗我部元親は迅を持ち上げると外に向かって歩き出す。

そして…


「や、やめてぇ!」


迅を城の下に落とした。


遠くから聞こえるドサッという鈍い音。


「っ!!」


私の中で何かが弾ける感覚がした。


「はぁぁぁあ!!!」


私は体が動くという事実を認識せず、ただ長宗我部元親に向かって走った


「まさか動くとは」


私の渾身の一撃を長宗我部元親は顔色一つ変えず受け止めた。そんなことは気にしない。私は間髪入れず攻撃する我をも忘れる勢いで


「よくもっ!よくもっーー!!」

「戦で人が死ぬのは当たり前ですよ。どうやら聞いてもらえそうにないようですね」


迅、私が必ず長宗我部元親を倒すから




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