第十二戦赤鬼
直政は強いからな
と言った兼続さんの表情は真剣そのものだった。冗談でも何でもない。
別に疑っている訳ではない。俺が幹部達の中で1番弱いことは知っている。でも俺は他の幹部達の戦場での生の力をまだ見てないからどうとも言えないのがあるからすこし心配になる
だがその心配は杞憂に終わった。一つの吉報が入ったのである
「報告!井伊直政様、敵拠点一つを陥落!現在二つ目を攻略中!」
伝令兵であるソードの配下の忍が言う。
え?もう陥落させたというのか?早すぎない!?
「何を驚いている迅?あいつならこれくらい朝飯前だぞ!いつもより遅いくらいだしな」
「え?この早さでも遅いくらい!?す、凄すぎますね」
「そうだろ!なんせあいつは゛赤鬼゛と呼ばれるくらいの強さだからな!」
「゛赤鬼゛?」
「お前が゛千人切り゛と噂されているようにあいつは゛赤鬼゛として敵兵に有名だからな。いつも赤の甲冑を装備しているから゛赤鬼゛だ」
嬉しそうに直政さんのことを話す兼続さん。なんだかんだ言って直政さんと兼続さんはいい関係なのかもしれない。
その後も直政さんが拠点を落としたという吉報が味方本陣に入ってくる。驚くことにまだ前田軍は直政さんの軍しか戦場に出してない
本陣が直政さんの活躍で盛り上がる中、幹部以上による緊急会合が開かれた
「おかしい」
集まってすぐ兼続さんが言う
「ああ、だな」
続けて慶次さんも相槌を打つ。
残り二人の幹部も何かに気付いているようだった。
「何がおかしいんですか?」
まだ何ににも気づいていない俺は聞いてみた。
「いいか?直政は強い。これは事実だ。あいつなら拠点を何ヶ所もすぐ落とすのはたやすいことだろう。だが……」
兼続さんが続けて言おうとしたとき、ライトが割り込んで言う。
「……あまりにも敵が脆い」
脆い?どういうことだ?
「敵に幹部クラスまたはそれと同等の力をもっている奴が出てきてないというとだ。」
「それってどういう……」
まだ、分からない俺は聞く、俺だけがわかってないこの状況、悔しいな
「つまりだ。普通なら拠点を何ヶ所も落とされたらそれを防ぐために強い奴を出すだろ?だがこの戦で長宗我部はそれをしてきていない。」
なるほど。確かに普通ならそうしてくる。じゃあ何故そうしてこないんだ?俺が聞く前に兼続さんが答えてくれた
「多分、長宗我部の狙いはただ兵を置いて我々を疲れさせようとしたのだろう。疲れはいつものは半分、またはそれ以下の力しか出せなくなるからな。それで疲れた所を長宗我部は狙おうと考えたのだろう」
凄いな長宗我部、いろいろ考えてる。俺がこう思っていると兼続さんが不意に笑い言う。
「だが長宗我部はミスを犯した。狙いは我々全軍だっただろうが、実際我々は直政の軍しか出してない。これは長宗我部にとって誤算のはず」
兼続さんが話終えると慶次さんが真剣な表情で提案してきた
「そこでだ。この場は直政に任し俺ら本隊は先に進もうと思うが……どうだ?」
俺を含め幹部達は了承した
「だが、長宗我部本隊がどこにいるかは分かっていない。このまま俺たちが進軍したらもしかしたら゛城攻め゛になるかもしれねぇから各々、覚悟しとけ」
最後に慶次さんが締めて、会合が終わる
゛城攻め゛とは敵の本拠地を攻撃することである。別に敵の本拠地が城じゃなくて館でも゛城攻め゛と言うらしい。この゛城攻め゛に勝てば敵の制圧していた領地を全て奪うことができるが、なんせ攻めるのは敵の本拠地。そう簡単に落とせるものじゃない。だから慶次さんは覚悟しとけと言ったのだろう。
だが長宗我部の本拠地は東京にある。東京に行くには長宗我部制圧している千葉を通る必要があるので、東京での゛城攻め゛にはならず千葉、もしくは近くにいるかもしれない長宗我部本隊と戦うことになるだろうから゛城攻め゛にはならないだろう
「じゃ俺達本隊はこの場を直政に任せ、進軍する!!」
「「おー!!」」
こうして戦場は直政さんに任せ、慶次さん率いる俺達本隊は進軍する。




