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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第四十四章 宴会とそれぞれの思惑

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第192話 『英雄』と『クエ鍋』

「しかし……緊張するとすぐに吐瀉するとは……少したるんでいるんじゃないのか?」 


 医務室から出ると誠を捕まえたカウラがそう言ってにらみつけた。


「カウラ……こいつになんか文句あんのか?」


「そうですよ!カウラさん。それは誠さんの体質の問題です!誠さんが悪いんじゃありません!」


 かなめとひよこはそう言っていつものようにぶっきらぼうに誠を責めてくるカウラに反論した。


「西園寺さん……良いんですよ……もう諦めてます」


 誠は頭を掻きながら笑っていた。この『吐瀉癖』と言う持って生まれた体質には誠は長年の付き合いで慣れていた。 


「まあまあ、ここは私の顔を立てて穏やかに行きましょうよ。それに今日の宴会の主役は我等がヒーローである誠ちゃんよ!なんでも『釣り部』がとっておきの『クエ』を出すから、『クエ鍋』なんですって!よかったわね、誠ちゃん!『クエ』なんて高級魚食べるのは初めてでしょ?美味しいらしいわよ『クエ』って」 

挿絵(By みてみん)

 糸目でほほ笑むアメリアの口調には純粋に誠をおもちゃにするお姉さん気質があふれていた。


「『クエ鍋』?なんだよ『クエ』って。名前が気に食わねえな。『食う』から鍋だろ?とっておきなら高級魚と言えば『トラフグ』とか『アンコウ』とかじゃねえの?」 


 島田は意味も分からず彼女のサラと見つめあう。この二人はアホなので誠も知っている『高級料理』の知識がないことは予想ができた。


「島田君……『フグ』はね、養殖ができるから安いのがあるの!『アンコウ』は獲るのに底引き網漁を使うから獲れるときはいっぺんにたくさん()れるわけ。でも『クエ』は滅多に獲れない幻の魚なの。うちの『釣り部』だって年に数回ぐらいしか食べないんだから……」


 無知な島田のボケにパーラが丁寧なフォローを入れた。


「年に数回もそんな幻の魚のクエを食べるって……うちの『釣りマニア』はどういう食生活を送ってるんですか?」


 さすがの誠も彼等が魚のみでたんぱく質を取っていることは今でも信じられなかった。


「西園寺大尉!」


 急にアメリアがそう叫んだ。


「なんだよ、アメリア」


 かなめは嫌々そう言ってアメリアのハイテンションに付き合う。


「私は『少佐』。かなめちゃんは『中尉』。そして、私はこの『ふさ』の艦長(・・)なの。かなめちゃん流に言うと『格が違う』わけ?分かった?」


 そう言うアメリアの態度には嫌味の成分があふれていた。


『ハイ!少佐殿』 


 普段自分が『女王様』としてふるまっているだけに以後の偉そうな態度が否定されると感じたのか、かなめはわざとらしくそう叫んだ。


「西園寺中尉はガスコンロ等の物資をハンガーに運搬する指揮を執ること!ラビロフ中尉!グリファン少尉!島田曹長!」


 アメリアは視線をパーラ・ラビロフ、サラ・グリファン、島田正人の三名に向けた。 


『ハイ!』 


「以上は会場の設営の指揮を担当!以上!かかれ!」 


『了解!』 


 三人はアメリアのこんな急な態度の変化に慣れているらしく、きびきびとした態度で廊下を走っていった。


「ひよこちゃんは食堂に行って私に『釣り部』の調理の進行状況を逐一知らせること!それを参考に宴会の段どりとか考えるから」


「わかりました」


 すっかり『宴会部長』を気取っているアメリアに指示されて素直なひよこはそのまま走って廊下の向こうに消えていった。


「僕とカウラさんはなにを?」 


 残された誠とカウラはアメリアのおもちゃにされる恐怖から顔を引きつらせて彼女の糸目を見つめた。


「ああ、誠ちゃんは主賓でしょ?それにカウラちゃんはいい子だからそのお供。今頃は、『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐がご自慢の『いい酒』を選んでいるころだと思うけど」 


 そう言ってアメリアは二人を置いて今来た医務室に足を向けた。


「病人の看護はひよこちゃんの領分だと思うんですけど……まあ、僕はもう元気なんで病人では無いですね。そう言えばアメリアさんはどこに行くんですか?」


 誠の問いにアメリアは満面の笑みを浮かべる。


「当然、隊長に持ってきた自分用の甲種焼酎以外(・・)の酒の供出を要求するわけ。何かあった時に『甲武国』の偉い軍人さんに贈る用の酒も持ってきてるはずだから。どうせあの人にはどうせ甲種焼酎みたいな安酒しか口に合わないって公言してるし」


 そんなアメリアの一言に誠はあの小遣い三万円の嵯峨から平然と秘蔵の酒を取り上げる『鬼』である事実に気づいて驚愕した。



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