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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第三十八章 不確かな敵への出撃命令

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第169話 それぞれの励まし

 『ふさ』艦内の廊下は他の軍用艦に比べて広めに設計されている。それを差し引いても、誠には私室に続くこの廊下が奇妙なほど長く感じられた。廊下には誰もいない。誠がこの艦に乗ってからほとんど強制的に入れられていた『医務室』に出入りしていた整備班員や、ブリッジクルーの女子や『釣り部』の『特殊』な面々とは誰一人擦れ違わなかった。


「静かなものだなあ。これから決戦があるって言うのに」 


 誠はそう独り言を言った後、居住スペースのあるフロアーに向かうべくエレベータに乗り込んだ。そしてそのまま居住スペース手前にある喫煙所の前を通り過ぎようとした。

挿絵(By みてみん)

「なんだ?ちんちくりんな『脳味噌筋肉』に絞られたのか?」 


 エレベータ脇の喫煙所で、かなめがタバコを吸っていた。


「それともあの盆地胸に絞られたとか……アイツ……オメエに気があるみてえだぞ。顔にそう書いてある。良かったな、上手くすれば童貞卒業できるかもしれねえぞ」 


 かなめのその言葉に誠は思わず目をそらす。


「おい!ちょっとプレゼントがあるんだが、どうする?」 


 鈍く光るかなめの目を前に、誠は何も出来ずに立ち尽くしていた。


「そうか」 


 かなめの右ストレートが誠の顔面を(とら)えた。誠はそのまま廊下の壁に叩きつけられる。口の中が切れて苦い血の味が、誠の口の中いっぱいに広がる。


「どうだ?気合、入ったか?」 


 悪びれもせず、かなめは誠に背を向ける。


「済まんな。アタシはこう言う人間だから、今、お前にしてやれることなんか何も無い。……本当に済まねえな」 


 最後の言葉は誠には聞き取れなかった。かなめの肩が震えていた。


「ありがとうございます!」 


 誠はそう言うと直立不動の姿勢をとり敬礼をした。気が済んだとでも言うように、かなめは喫煙所の灰皿に吸いさしを押し付ける。


「今度はハンガーで待ってる。それじゃあ」 


 それだけ言うとかなめはエレベータに乗り込んだ。そこにはたまたまひよこの姿があった。


「ああ、誠さん」


 どこか緊張したようなひよこの態度に誠は戸惑った。


「どうも」


 何を話していいのか分からない雰囲気の中エレベータの扉が閉じた。


「実戦……ですね」


 ひよこはそう言うと誠の左手を握った。


「そうだけど……頑張るよ」


 誠はそう言ってひよこの目を見つめた。


「大丈夫ですよね……どんな怪我をしても私がなんとかしますから……」


 そう言ってひよこはいつもの笑顔を誠に向けた。


「怪我で済めばいいんだけど……」


 シュツルム・パンツァーでの実戦ならコックピットに直撃を食らって装甲を撃ち抜かれたら即死と言うこともあり得る。誠の思いはそんなところにまで落ち込んでいた。


「大丈夫ですよ……きっと誠さんは帰ってきます……無事に……祈ってますから……そしたらまた医務室にいた時みたいに私の詩を読んでくださいね」


 ひよこはそう言ってほほ笑んだ。誠は彼女の言葉を心強く思いながらもどこからかわいてくる不安に押しつぶされそうになった。


 エレベータが誠の船室がある階に停まった。


「それじゃあ頑張るから!」


 誠はそれだけ言うと黙って手を振るひよこを置いてエレベータを後にした。



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