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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第三十五章 策謀の宙域

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第158話 無茶な命令と優しい上司達

「それは世の中を知らない『赤ん坊』の言うセリフだ。『撤退』、『縮小』、『撤収』、『敗走』。どれも勇気がねえと立派にはできねえんだぜ。いつの時代でも戦場ではその『撤退戦』の最後尾を最強の部隊が担うってことになってるんだ。お前さんの同級生の一般企業に就職した奴もいずれ『拡大しすぎた事業からの撤退』とかいう『逃げ』の仕事を押し付けられるの。ほとんどは『討ち死に』して会社をクビになる。世の中つれえんだわ……軍や警察もおんなじ。逃げることには勇気と決断がいるんだよ」

挿絵(By みてみん)

 誠も企業の『事業縮小』や『リストラ』の話はテレビで見て知っていた。『策士』である嵯峨がそれを『戦場』としてとらえているのも理解できた。


 しかし、誠には嵯峨のように『逃げる』ことへの嫌悪感がぬぐい切れずにいた。


「じゃあ……僕は……」


 迷う誠に嵯峨は冷たい視線を投げながら、胸ポケットから取り出したタバコに火をつける。


「じゃあ、言うわ。さっき『遼州同盟』の偉いさん達から、俺達『特殊な部隊』に正式な命令が届いた。『甲武国』の『近藤貴久中佐』の乗艦『那珂』を奴さんごと沈めろ……って無茶なこと言うな……ちゃんと『殺人許可』は出てるそうだ。死んだ『甲武国』の軍人は全員『犯罪者』として『処刑』された扱いになるそうだ」


 誠を見つめたまま嵯峨はそう言った。その目はいつも通り死んでいた。


「『近藤貴久中佐』を……乗艦『那珂』ごと沈める……」


 この『特殊な部隊』に配属になったばかりの誠にも、それがあまりに過酷なミッションであることは余裕で想像ができるものだった。


「そう、今回の演習はただの口実だ。同盟司法局の目的は甲武国不安定化を企む『ある男』の意図を挫くこと。その為に『那珂』には沈んでもらう……世の中そんなもんさ」


 嵯峨はそう言って苦笑いを浮かべた。


「なんだい、ビビったかい?今なら逃げてもいいぜ。俺は気にしねえよ……『偉大なる中佐殿』……クバルカ・ラン中佐はどうだか知らねえがな」


 あまりのことの重大性におびえる誠の目の前ににやけた若い男がいた。自称四十六歳、バツイチ、コブツキ。そして脳内はピンク色の『駄目人間』。それだというのに、その言葉には実に計り知れない『重み』があった。


「クバルカ中佐が……僕を……『斬る』んですか?」


 恐る恐る誠は尋ねた。嵯峨は静かに神戸を横に振った。


「アイツはそんなに『ひどい上官』じゃねえよ。あいつは見たまんま、『永遠の八歳児』なんだ。かわいい女の子なんだよ。『不傷不殺』。それがあいつの信条なんだ。部下を危ない目に逢わせたくない。人を傷つけるのが大嫌い。そんな優しい奴なんだよ、あいつは。お前さんも優しいな。似た者同士だ。さっき逃げろと言った口で言うのもなんだが、そんな優しいお前さんに『偉大なる中佐殿』の期待を裏切ることができるかな?」


 タバコをくゆらせながら言う嵯峨を見て誠は困惑した。


 いまだ会ったことのない嵯峨の娘とは、いつも目にしている小さな幼女に見えるランのことではないか、誠はそう思った。


「裏切れないです……僕は……期待にこたえたいです……『特殊な部隊』のみんなの……」


 無理やりの笑みを浮かべながら誠はそう言い切った。


「……そうか。じゃあ、『偉大なる中佐殿』……クバルカ・ラン中佐から作戦の詳細を聞いてこい。あいつもこの命令については知ってる。あいつなりに考えて、お前さんの『素質』を生かせるようにしてくれるはずだ。間違いなく『人類最強』の上司だよ、あいつは」


 嵯峨の言葉に誠は静かに敬礼した後、この展望ルームを後にした。




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