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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第二十四章 秩序の守護者

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第114話 『カードゲーム』

 反論の機会をうかがっていた近藤に向けて、カーンは一度笑みを浮かべた。そして、静かに言葉を続ける。

挿絵(By みてみん)

「我々と命がけのカードゲームをしているのは『嵯峨惟基』と呼ばれる存在だ。あの男のカードは私には『だいたい』分かっている。ならばこちらも手持ちの札を数えなおして、次に切るカードを選択する。カードゲームの基本だよ……そして情報収集もまた然りだ」


 そう言うカーンの顔には厳しい表情が浮かんだ。


「君のような『まともな軍人』は知らないだろうし、興味もない話かもしれないが、あの男はかつて『軍治安機関』にいたと言う『噂』がある。まあ、あの大戦時の記録が『まるっきり残っていない』あの男のことだから、『治安機関』や『諜報機関』の過去があったとしても不思議はないのだがね……」


 近藤は嵯峨が『甲武国四大公家当主』の『殿上貴族(でんじょうきぞく)』であるがゆえに戦争を避けていたと思い込んでいた。嵯峨の消えていた経歴について、カーンがすでに知っていることを確認して静かに黙り込んだ。


「相手が東都共和国の公安当局の電子戦のプロと手を結んでいるのなら、多少の出費はあっても、直接『足』で情報を稼ぐようなことも考えたらどうかね。君の独自に集めた資金はそれには十分耐えうると思うんだが……政治工作だけが資金の使い道では無いよ」


 そういうとカーンは再びグラスを手に取りブランデーに口をつけた。近藤はカーンのはぐらかすような調子にいつもと同じ苛立ちを感じていた。


 近藤は自分が今の甲武軍の主流からは外れた立場にあることは十分承知していた。多くの『士族』出身の代々続く軍人一族に生まれた近藤にとっては、『軍の民主化』と言う今の甲武の風潮は見過ごしがたいものだった。


 現在、甲武国政権の中枢にある西園寺義基首相は、軍縮を視野に入れた宥和的政策での同盟機構内部での発言権拡大を目指すことを選択していた。甲武の一方的な軍縮を敗北主義と考える近藤と同志達は、西園寺内閣による軍の特権剥奪に危機感を抱いていた。


 彼らは軍内部でも孤立していく中で、自分達こそが国家の尊厳すらも安易に投げ捨てかねない西園寺義基の『現実主義政策』に異を唱えるべく集まった救国の士だと自負していた。


 西園寺内閣の矢継ぎ早の同盟宥和政策が国を大きく変えつつある今が、それを打倒する最後のチャンスである。その信念が近藤を『危険人物』ルドルフ・カーンとの接触を取らせることとなった。


 ゲルパルトの『民族秩序の再興』を掲げる『アーリア人民党』の残党として国を追われてもその理想を推し進める『闘士』ルドルフ・カーン。そんな彼が近藤に依頼したのは、『売国奴』である『民派』の首魁、西園寺義基の義弟、嵯峨惟基の率いる『特殊な部隊』の新入隊員『神前誠』の能力の調査だった。


 特に嵯峨が極めて手に込んだ方法で入隊させた若者、『神前誠』が何者だろうが近藤には関心の無い話だった。そしてそこに注目するカーンの意図も図りかねていた。


 近藤はようやくそんなあふれ出してくる怒りを主とする感情の整理をつけると、言葉を選びながら話を続けた。


「やはり、この報告書に不手際があったとは到底思えません!金で魂を売る『ハッカー共』が情報改ざんを行っていないことは裏が取れています。ですので……」


「ちがう!ちがう!」


 そんな近藤の言葉にカーンは初めて明らかな不快感の色を帯びた叫びを漏らした。交響曲が終わり、再びブランデーグラスに口をつけた後、近藤を見る青い瞳には侮蔑の色がにじんでいるのがわかり、近藤は思わず口を閉ざした。


「君は本当に海軍兵学校を卒業したのかね?あの青年は地球の堕落した連中が注目する存在なんだ。それだけは間違いないんだ。無視できるかね?この不愉快極まりない事実を!なのに君はなぜこのような『見るに堪えない報告書』を私に提出したのか聞いているんだよ!私は!」


「それは……あり得ません。遼州人に地球人にない力がある……そんなものは他愛のないおとぎ話です」


 近藤はそう一言で斬って捨てた。


「そういうことならそうだとしておこう。私から言わせるとこの未開野蛮な遼州人が中心となって行われた遼州独立戦争で遼州圏が地球から独立できたのもおとぎ話だったという話になる。確かにそのような力が我々の科学力では解明出来ないのは事実だからね。しかし、その力が意図的に……多くの『敵』達によって隠されていると考えたら……どうだね?分かりやすく言えば『公然の秘密』としてアメリカや東和共和国、遼帝国にとっては『法術師』の存在は『公然の秘密』なんだと私は思っている」


 再びグラスをテーブルに置くとカーンは椅子に座りなおし、氷のような青い瞳で近藤をにらみつけて静かに語り始めた。





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