《11》 お日様の下で語り合おう
それから、たびたびチェランドには町に出てもらい
困っている民はいないか探ってもらい、そのつど神殿で神にお願いをした。
私にできることは、今はこれくらい。
レット村の件は、お祈りのあと陛下が早馬で調査兵を派遣してくださって
なんと、水脈が戻ったと報告がありました。
それから、村長さんが直接私にお礼を言いに来られました。
最近の水枯渇問題で疲れたのか村長さんのお顔がずいぶんやつれてたけど
嬉しさのあまり、興奮が収まらずとても嬉しそうにお礼を言われたんだけど
血圧が急上昇したのか倒れてしまわれたのよね。
さすがに、倒れるまで喜んで欲しいとは思わないけど
私のやったことが、見たことない国民に喜んでもらえたようで
私もその日興奮して中々寝れなかった。達成感ハンパネェ!
あまりにも暇だったので、お菓子作るのを教えてもらったの。
最初は驚かれたけど、熱く色々学びたい!と語ったら
感激されて前屈のようなお辞儀をされた。料理長、体柔らかすぎ。
甘いクッキーみたいなのに、香草なのか草を混ぜ込んだ焼き菓子でした。
簡単で甘すぎず、男でも食べやすいお菓子らしい。
…男?
まぁ、たくさん焼けたからあとでサラフィーナ様にお供えする分と
お世話になっている神殿長。あとは…上層部はあげられないかな。
警備的な意味で。巫女とはいえ、
毒見もしてないものを陛下や宰相に上げるのはやめたほうがいいわね。あ…
「チェランド!これ初めて焼いたの。味見して。あ、みんなも」
籠いっぱいに入ったそれを、周りに配り私も食べる。あぁ、美味しい。
スイリもみんなもおいしいって言ってくれる。チェランドは頷きですか。
料理人が作ったのも美味しいけど、自分で苦労して作ったものを食べるのって
また格別ね。あぁ、美味しい。また、作ろうかな。
「何をしている」
「あぁ、陛下こんにちは。
私が作ったお菓子をみんなに味見してもらったんです」
「何っ!?何故、俺のところに持ってこない!?」
「そこで怒る意味がわかりません。
陛下には、味見していただかなくてはいけないでしょう。
ただ、暇つぶしに作ったものなのに他の人に迷惑かけてはいけないと思いまして」
「ケイトが作ったものは、俺が最初に食す。それ、全部よこせ」
「……子供ですか。
陛下、実はお若かったりするのかしら?(小声)」
「俺は、25だ。子供でもない」
「聞こえてましたっ!?」
フンッと、拗ねながら本当に私の作ったものを全部平らげてしまいました。
25歳ですか。確かに、体つきや大人の余裕なんか見え始めている感じがして
“時々”そう思うけど、変なところで拗ねたり妙な言いがかりつけたり
喜怒哀楽激しかったりして(幼児的な雰囲気で)
普段は、25歳には見えなかったりするんだけどなぁ。私より9も上。
物思いにふけっている間に、スイリがお茶をお出しして陛下はそれを飲み干した。
「陛下、お味はいかがでした?」
「あぁ、美味かった。今度は、俺のためだけに作ってくれ」
「それは、嫌です」
「!?」
「私の分も作ります。
今のだって、残った分は私が後で食べようと思ったんですよ!
勉強の後の楽しみを…なんてことしてくれたんですか」
「だったら、シェフに頼めばいいだろうが。
おい、シェフにとびきり美味しいお菓子を巫女に作れといってこい」
「なんてこというんですか!
シェフにも仕込とか料理研究とか鍛錬とか色々忙しいでしょう!
それを、わざわざ割いてもらうなんて申し訳ないです」
「皆が、もっと巫女の世話をしたいと言っていたぞ。シェフもきっと喜ぶ」
「そんな訳ないですよ。もぅ…」
陛下が、ご指示を出した時一番若い侍女が走っていったので
撤回は無理だ。あぁ、これから夕飯の仕込だろうに。申し訳ない。
あとで謝っておこうかな。
「ケイトは、このエマリアが好きなのか」
「エマリア…というのですか。いいえ。
料理長に、簡単なお菓子の作り方を教えて欲しいとお願いしたら
このお菓子がいいというから、これにしただけです」
「ふぅん…俺の好きなお菓子なんだ、これ
だから、今度作る時は大量に作れ。一緒に食べよう」
「!」
そっ、そこで節目がちにふわりと笑わない!!
何よ、いつも怒りか無表情なくせに突然笑うとか!
イケメンが笑っただけでも、破壊力あるのに
常に無愛想なイケメンが、笑うと高温破壊兵器よ!
ギャップに弱いんだからね、私は!!
でも、お子様国王よ、お子様お子様…
こんなんに惚れるな。帰れなくなったらどうする。
「どうかしたのか」
「どうもしませんっ!」
「何を怒っている」
「怒ってません。陛下は、ご公務に戻られなくていいのですか?」
「何故お前は、俺をすぐに戻そうとする。
働きすぎだと、宰相に追い立てられた所だ。
そうさせた本人が言ったのだから、俺は限界までケイトと一緒にいる」
「何と張り合っているんですか、それ
というか、人の予定に勝手に割り込まないでください。
私は、これからお庭散歩に出かけるんですよ。
陛下は、ご自分のお部屋でお休みになられたらいかがですか?」
「お前こそ、俺の予定を勝手に決めるな。
そうだな…散歩と昼寝か。魅力的なものだな」
「私と、陛下の行動は別々です。合体させないでくださっ…!」
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!
陛下は、いつぞやのように肩に私を担ぎ侍女とすれ違う時に
なにやら用件を話して、スタスタ歩き出した。私とは別行動って言ったでしょ!?
んもーーーーーーーーーー!何処歩いてるのよ!?
降ろしてと、ポカポカ背中をたたいても逞しい硬い背中は、
凹みもしない。お日様にさらされ床に置いた座布団を叩いてるみたい。
くそぅ、国王でイケメンな上に体格までいいとか神はどれだけ
この男に、高条件を詰め込んだのかしら。天は二物を与えないんじゃないのかよ。
「ここならいいだろう」
「ここ何処ですか?」
後ろ向きでしか、現在地を把握するすべはなく
どうやら私の知らない場所だとすぐに気づいたけど
ガラス戸全開放された小ホールに降ろされた私は、
ここで何をしろと?という顔を陛下に向けた。
すると、無言で私の手を取り開放されたガラス戸から庭に下りて
うっそうと生い茂る王城の庭にしては狭い迷路のような庭を散策した。
つーか、ここ何処よ陛下!?
花壇に囲まれた広い芝生エリアに、敷き物が敷いてあり
そこに座らされると、陛下は私のひざの上に自分の頭を置いた。膝枕ッ!?
「あー。確かにいいな。宰相がな、よく妻にしてもらうんだそうだ」
「あら、宰相は、既婚者でしたか」
「む。宰相の事が気になってたのか?」
「すぐそっち方向に持って行かないでください。
童顔だから私と同年代だと思っただけです。というか、宰相はいくつですか」
「あー、俺より6か7は上だったな」
は!?あの顔で、31-2なの!?
絶対に、十代後半の顔してたわよ。若く見えて19かと。
どんんんんんんんんんんんんんんんんんんんだけ童顔なの、あの人。
「女としてはムカつく童顔…(小声)」
「くっくっくっくっ……
それでな、…ふぅ。…どんな、安眠導入…法より効く…そうだ……」
「陛下?」
あらら…寝てしまわれた。
陛下が激務というのは、この方は例外だと思っていたけど…激務だったのね。
険しい顔のまま眠られたけど、すぐに力を抜いたのか芸術品のような
しわ一つない精悍な顔になった。くそぅ、寝顔もパーフェクトかよ。
「ねぇ、誰か(小声)」
「はい、どうなさいました?(小声)」
あれ、スイリじゃないや。陛下付きの侍女さんかな。
陛下に何か掛けるものと、汗をかいた時用のタオルと、
スイリにいつも読んでいる本を持ってくるよう頼んだ。
とりあえず、結構着こんで結構温かい体だと思ってても(ここに来た翌朝参照)
風がある以上体温は奪われるだろう。薄手の布をかけた。
っくっそー、整ってやがるなー。肌も19のお兄ちゃんよりツルツルじゃんよ。
「………………。」
脳内二次元住人の友人由梨が、髪を上げると大人っぽくなって
髪を降ろすと幼くなるっいひゃあああああああああああああああ(*>∀<*)
なんて、教室内で大絶叫(彼女以外みな寿命が縮んだ)
なんて言ってたのを思い出した。本当かな。
(ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ)
いつもは、髪を降ろしているけど上げてみると年相応に見えるかも。
しかし、髪の毛のさわり心地も最高ですな、さすが王様。
ほぁ、金髪だと思ってたけど光の加減によっては銀髪にも見えなくない。
ふわっふわな髪でうらやましいなこんちくしょー。
私の髪は、ベタッてなっちゃうんだよなぁ。髪の量が多いからかな。
そうして、エンドレスなでなでが宰相が来るまで続いてました。
陛下の地を這うような、重い怒りを鎮めるのに大変でした。
陛下の中学生じみた恋模様に周り振り回されています。
なので、25歳にもかかわらず大人っぽく見えないんだよ。
嫉妬の仕方がマジ子供(笑)
それよりさらに見えないのは宰相レイディール。
大きな瞳に丸っこい顔のせいで見えませんが、チェランドと同年代です。
あっちの二人がイチャついてくれなく欲求不満だったので
イチャつかせてみました。




