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ローゼンカヴァリエの見えない傷と結晶  作者: 木村 巴


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5話



 王家の庭と呼ばれる庭園は、季節の花が美しく咲き乱れその場所に呼ばれるだけでも栄誉な事らしい。


 確かに呼ばれたら感激する程に、美しくととのえられた庭だった。私は仕事の為に高頻度で出入りするけれど、いつ来ても美しい花達に目でも、香りでも癒される空間となっていた。


 今日は王妃様と王女様方のお茶の時間を警護している。


 個人警護でもなく、場所の警護でもなく……お茶の時間の警護だ。


 つまり……



「あら、私の可愛い薔薇の騎士(ローゼンカヴァリエ)もこちらに座ってお茶にしない?」

「王妃様、私は勤務中ですので……」

「お母様もそう言ってるのだし、いいじゃない」


 ……ここ最近この時間は、必ず私をお茶に誘いたがるのだ。


 そのために近衛騎士が増員され(済)テーブルに席も用意され(済)断れる雰囲気は皆無だ。

 姫様達も瞳を輝かせている。


「……それではお言葉に甘えて、失礼します」



 そう答えると、きゃ~と嬉しそうに喜んでくれるので、お可愛らしい姫様に自然と笑みが溢れる。



 そこからは、辺境での話や魔獣退治の話など、聞かれた事に答えていくのがここ最近の流れだ。


 けれど今日はいつもと違い、末姫様がもじもじと私に言いにくそうに問いかけた。



「ねぇ、ミシェルはヘクター様と引き離されてお辛いのでしょう?」

「お兄様達が不甲斐ないから!」



 末姫様の問いに、二の姫様が賛同する様にお怒りの声をあげる。

 もう私は「?」でいっぱいだ。どうしてそんな事に?



「あの、大変申し訳ありませんか……私とヘクター様は兄弟の様なもので、恋愛感情は一切ありませんよ?」

「え? だって……」


「たぶん周りが結婚したらいいねと、話していたようですが……まぁ、してもいいと思えるくらい家族愛はありましたけれど、お互いに恋愛感情はなかったですよ?」


 辺境でもよく皆に勘違いをされていたけれど、遠く王都にまでそんな噂が流れていて驚く。


「あらあら」

「まぁ……」


 これにはお姫様達だけでなく、王妃様までも驚いていて、私も驚いた。




「でも、あちらからは…………定期的に……」

「なるほど……向こうの片思いだったのね……」

「確かに薔薇の騎士ったら鈍そうだものね」


 姫様達は三人で何やらコソコソと話されていたが、キチンと話しておかないと誤解されそうだな。


「ヘクター様の婚約者様にも誤解されておりましたが、私達に恋愛感情は全くなかったんです。ただ、やっぱり結婚の噂があったという幼馴染が近くにいるのは……確かに気持ちが良くないだろうな、という判断で王都に来たまでです」

「あら……では、あなたにそんな感情は一切なかったと……?」

「はい」


 もちろんです。と答えるとみな一様に同情するような、困惑するような表情をみせた。いや、本当に誤解だからね。


「私としては、そのおかげで皆様にお仕えすることが出来て、とても幸運でした」


 そう言い切ると、一の姫様が「そういうところだと思うわ」と、悩ましげなため息をつきながら言っていた。


 どういうところだ?





「さあさあ、美しい薔薇の魅力に皆がとり憑かれてしまうのは、しょうがないことなのでしょう」


 そう王妃様が合図をすれば、また別の話題に移っていく。ここでは興味のある話し以外にも外交やその他、お茶会での情報収集のやり方を習ったり学んだりする場なのだ。


 どこの国の絹が美しいやら、料理が美味しいやら話している裏に、絹で儲けている、スパイスと一緒になにやら良くない物が輸入されているから注意するように。などといった情報が散りばめられている。


 さらには王妃様が姫様達に会話の振り方や場の仕切り方など様々な事を教えたり、マナーの再チェックなどもしたりしている。


 一介の男爵令嬢である私には、こんな高度なお茶会の練習なんて過ぎた教育だが……こんな機会を頂けてありがたい。


 王立騎士団では、女性騎士に対して待遇がとても手厚い。勤務時間も短めだし、こうしてお茶に参加させて貰っていても勤務時間内となっている。

 とてもありがたいけれど……こんなによくして貰っては、ありがたすぎるので、もっと長時間勤務しても良いかと上に許可を貰おうとした。

 そしたら、女性騎士が増えないと困る。辞められたらもっと困るので、今以上に働く許可は下りないといわれた。


 良いのだろうかとは思うけれど、ありがたく訓練の時間や勉強、読書などに有効活用させて貰っている。



 そこで初めて「婚約者が幼馴染を優先して困ります」というジャンルの小説が流行っているのを知った。


 いや、私のはそれに当てはまらないんだけどなぁ……

 でも、そんな小説があるから、みんな勘違いするんだと知った。







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