第20話 主人公の好きな人
「もしかして他に予定があった? あれなら日を改めるけど……」
「ああいや、予定は……まぁ、なんて言うか……」
会議が終わり、即座に俺は屋上へと足を運んだ。
月ちゃんに告白の返事をするためだったのだが、現れたのはまさかの兄、酒神公太だったのだ。
これから妹に告白の返事をする予定があるとは言えず、はぐらかしてしまった。
まぁ月ちゃんが来たとしても、兄と何か話している様子を見れば気を使って待っていてくれるとは思うけど……あの子なら兄の前でも平気で返事を聞いてきそうな気もするな。
「だ、大丈夫だ! それで聞きたい事があるんだったか? 相談だったか?」
「あ、ああ……そうだね。相談が……あって」
とりあえず公太の話を聞く事にした。話すだけなら時間もそんなに掛からないだろうし、月ちゃんが気を利かせてくれることを祈ろう。
しかし主人公の相談とはなんだろうか? もしかして月ちゃんの事だったりするか?
最近、妹の様子がおかしいんだ……とか言われたらどうしよう。
「……九郎ってさ、夏菜たち……四季姫とよく一緒にいるじゃないか?」
「え……? ああ、まぁ……最近はいる事が多いかな」
月ちゃんの事ではなく四季姫の事のようだ。
なんか嫌な予感が……主人公がヒロインの事で悩んでいる……? その相談を受ける脇役友人……う~ん? なんか既視感。
「……実はさ、俺……好きな人がいるんだ」
「……すっ!?」
す、好きな人……? えぇ……? 主人公に好きな人っているの? 俺が知ってる主人公って、女性に告白されて自覚する奴ばかりだったんだけど。
いや、いる主人公はいるか? でも自覚っていうより、物語の最初から好きだと公言しているアレな主人公しか知らないけど。
やはりハーレムものばかりじゃ知識が偏るのか……? いやいや! 今はそんな事を考えている場合じゃなかった。
公太はふざけている訳でもなく真剣な様子。つまりこれは……恋愛相談! 友人キャラとして相談には乗りたいが……。
……相手が四季姫の誰かっぽい! 困ったな!!
「だ……だれ? というか、いつから!?」
「いつから……結構、前からなんだけどね」
結構、前……夏菜か? やっぱり幼馴染というのが王道か!? 王道を行くのか!?
アキかもしれない。幼馴染と主人公を応援する立場の昔馴染みって、妙に気になるし。
「ただ、話す様になったのは最近というか……お互い、挨拶程度しかした事がなくて」
「……え? という事は、あの二人じゃなく……あの二人……?」
最近、話す……春香? なんとなく、雰囲気的に、メインヒロインっぽい春香か!?
トーリの可能性も……一番ないなと思わせておいて、実は意識していましたってかい。
「そ、それで……お名前をお聞きしても……よろしいのでしょうか?」
「な、なにその言い方? その……名前は――――」
いや、どうしよう? 俺だって最近、彼女達の事が……。
今さら遅いのか。自覚できなかった俺が悪いのか。何もしてこなかった俺が悪いんだ。
そもそも、相変わらず俺はどうしたいのか分からない。四人だぞ? 四人の事が気になるって、そこからどうしたら……。
「――――な」
「……ん!? な……夏菜? 夏菜って言ったのか……?」
恥ずかしそうに何かを口にした公太だったが、俺と目を合わせると気が抜けたかのように笑い、再び話始めた。
「いやいや! 聞いてなかったの!? だいたい、夏菜は九郎の……いやまあ、それはいいか」
「な、なんだよ? 結局、誰なんだよ?」
「……大陰零那。二年F組の、サッカー部でマネージャーをしてくれている子だよ」
おおかげ……れいな? し、知らん人だ。
サッカー部のマネージャー……そういえばいつだったか、公太と一緒にいる所を見た気がするけど、全然印象には残っていない。
「その人が……公太の好きな人か。ごめん、知らないな」
「いや、それはいいんだ。ただちょっと、聞きたい事があってさ」
その大陰さんが想い人、主人公のヒロインって事か? ヒロイン、ヒロイン……っぽくはない気がするが。
かなり失礼な事を言っている自覚はあるが、ヒロインってこう……なんというか。
四季姫や陽月姫、三年の色姫や……他にも人気の高い女子生徒は多くいるけど、大陰さんの話は全くと言っていいほど聞いた事がない。
「実はさ、彼女に色々と……まぁアピール的な事をしてきたんだけど、あまり上手くいかなくてね」
「ええ!? 公太のアピールがダメなら、それは……」
誰がやってもダメなのでは? 大陰さんは彼氏を作る気がないとか、もしかして男に興味がないとか。
他に好きな人がいるとか……なのだろうか? でも公太だぞ? 仮に気になる男がいたとしても、公太に言い寄られて……。
まさか俺と似たような感じか? いやでも、もしそうなら公太は……。
「そ、それで相談ってのは、どうしたら振り向いてくれるかって事か?」
「……端的にはそうなんだけど……この前、と言っても春休みの事なんだけどね……」
どこか自信なさげな表情のまま公太は話し続ける。
春休み? なにかあったような……なんだっけ?
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