第19話 異様な生徒会室
色々あった海旅行から数日後。今日は生徒会補佐としての活動日なので、俺は学園に足を運んでいた。
夏休みも半分が過ぎ、そろそろ夏休みの課題に取り掛からなければというのに……陽乃姉さんが決めた事なので仕方がない。
「おっ? 九郎! おはよう!」
「おう公太、おはよう」
靴を履き替えている時に公太と会った。随分と久しぶりな気がするな。
この夏休みは部活漬けのようだが、主人公らしく高校二年の夏を謳歌しなくていいのだろうか? 俺の方がよっぽど謳歌してんぞ。
「海はどうだったの? 海に行った割には……そんなに焼けてないね?」
「そういうお前もな。ほんと主人公って焼けないよな」
俺は彼女達から日焼け止めを借りたからな。借りたと言うか、強制的に塗られたのだが。
「それで? 彼女はできた? なにか進展は? 告白したりした?」
「な、なんだよ急に……まあ、どうなんだろうな?」
お前の妹に告白されたなどとは言えない。
それどころか保留という態度を取っているなんて、口が裂けても言えない。
主人公はブラコンだからな。何かしらの結論を出してから報告した方がいいだろう。
「なんだよ、含むなぁ」
「そういうお前はどうなんだよ? 部活だけで終わらせるつもりか?」
「う~ん……なぁ九郎、今日の帰り時間ある?」
「時間? あるけど……」
「色々と聞きたい事もあるし……俺もちょっと、相談がある」
「分かった。俺も相談が……ありますの」
そのまま公太と肩を並べ、生徒会室へと足を動かした。
今日は簡単な話し合いや、二学期行事の確認程度だとは言っていたが……今日集まるであろうメンバーと顔を合わせるのはちょっと気が乗らない。
今日集まるメンバーというか、月ちゃんなのだが。
あれから特に連絡は取っていない、もちろん告白の返事だってしていない。
中途半端な気持ちで付き合うのは失礼……とは思わない、付き合ってみないと分からない事もあると思うし。
でも今の状態で付き合っても長続きするとは思えないな。こんな、他の子の事が気になっている状態で。
月ちゃんと付き合うという事は、あの四人との関係性も変わるという事。あんな海に行ったり、買い物したりなんて出来ないよなぁ。
じゃあ断れば……いやでも、断ったら月ちゃんとの関係はどうなる? 顔を合わせづらくはなるよな。
それにあの月ちゃんだぞ? あんなに可愛くて……なんの文句があるんだ?
文句なんてない、恋愛にだって興味がある、高校生らしく色々な欲だってある。
断るのは惜しい……俺はそう思ってしまっているんだろうな。せっかく俺と付き合ってくれるという美少女を手放すのが。
ちょっと手を伸ばせば確実に手に入る……こういう言い方は最低に聞こえるが、これは紛れもない俺の本心か。
踏み切れないのは、俺はあの四人を失いたくないからだ。
でもあの四人は、俺とは何の進展もないかもしれない。だから俺は月ちゃんを切れないんだ……ほんと最低だな。
俺は月ちゃんを、四人がダメだった時の保険にしてるのか。
周りは非難するだろう、そりゃ当たり前だ。俺は自分の事しか考えていないんだから。
こんな事、誰にも言えねぇ。こんな醜い考え、誰にも知られたくない。公太にそんな事を言ったら、間違いなくぶっ飛ばされるな。
ぶっ飛ばされるだけじゃ済まないか。大事な家族を保険にするような男、二度と話したくなどないだろう。
そんな誰も喜ばないような選択、なにより月ちゃんに対して……ダメだろう。
「どうしたんだ九郎? なんか険しい顔をしてるけど」
「……なぁ公太。今日って月ちゃんも来てるんだよな?」
「うん。俺より早く陽乃姉と家を出たからね。もう着いていると思うけど」
「……そっか。分かった」
俺は生徒会室に入る前に、月ちゃんにメッセージを送った。
未だに醜い考えが頭を過ってしまうが、それを振り払うようにメッセージを送信したのだった。
九< 話がある、この前の事。生徒会会議が終わったら時間ありますか?
月< 分かりました。それでは会議が終わったら、屋上で。
生徒会室に入り、新学期から開始される挨拶運動や、二学期の行われる各行事ごとの簡単な打ち合わせを行った。
その間、月ちゃんとは一切目が合わず、会話を交わす事もなかった。
しかし何故だか分からないが、四季姫の四人もどうしてか余所余所しく、居心地の悪い会議となったのだった。
――――
――
―
会議終了後、俺は急いで屋上へと向かった。
屋上のカギを持っているのが俺だという事もあるが、正直な所……あの空間に居づらかった。
『お前、何かしたのか? なんでこんなに雰囲気が……まさかお前、海旅行でッ!?』
央平から言われた言葉、央平の他に公太だって気づいただろう。会議中、彼らは色々とフォローしてくれたのだから。
『何があったのか知らないけど、新学期までにはケリを付けなさいよ? 安心しなさい……姉と弟の関係は変わらないわ』
陽乃姉さんは一言だけ、あの人は分かってて言っているんだろうなぁ。不器用な姉の優しさなのだろうか。
――――ガチャ……ギィィィィィィ……――――
先に屋上に入り、月ちゃんを待ちながら街の景色を眺めていると、屋上の扉が開かれる鈍い音が響いた。
月ちゃんが来たようだ。屋上に女性を呼び出し、想いを伝える。
もの凄く青春の一ページな気がするのだが、どうしてこうも気が重いのだろうか。
「……月ちゃん、待ってた――――」
「――――ちょっと九郎! なんで何も言わずに出て行くのさ!? 放課後、時間をくれるって言っただろ!?」
屋上に来たのは公太だった。もちろん月ちゃんの姿はない。
ヤバイ。俺は兄妹と予定をバッティングさせてしまったようだ。
俺は兄の前で妹に告白の返事をしなければならないのだろうか? いや~、それはキツイな。
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仕事の関係で執筆と推敲が遅れてまして…
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