第15.5話 ビーチクイーンコンテスト・夏春
『さぁいよいよ残りの参加者が片手で数えられるほどとなりました! 最後まで盛り上げの方、宜しくお願いしますっ!』
『『『『おおおおぉぉぉぉ!!!!』』』』
よくもまぁテンションを保ち続けられるもんだ。人は増えるばかりで、退場する人はあまりいないほどの人気ぶり。
登場する女性達のレベルがみんな高いため、男達がヒートアップするのも分かるのだが。
俺は知り合いが4人も参加しているという事もあって、ちょっと心配というか緊張もあった。
『それでは参りましょう! エントリーNo22!! 愛川夏菜さんですっ!!』
おお、ついに夏菜の登場か。
夏菜って少し恥ずかしがりな所があるから心配だが……学園の時のような笑顔を見せれば問題ない。
「やっほー! こんにちわ~」
『『『『こんにちはーーー!!!!』』』』
手を振りながら、流石の笑顔で登場した夏菜。
天真爛漫な彼女、その笑顔には緊張や羞恥の色は全くなく、楽しんでいるのがハッキリ分かる。
人前に立っても物怖じせず、自然体だ。名前にある通り、夏が似合う明るく眩しい笑顔だった。
『それでは恒例の、スリーサイ――――』
「――――いえぇぇい! みんな、楽しんでますかぁ!?」
『『『『いえぇぇぇぇ!!!!』』』』
『え、えっと……』
「今日も暑いよね~。ウチ、汗だくだよ~」
司会そっちのけの夏菜。盛り上がり的には凄まじかったが、少し司会が可哀相だ。
これはアレだ、アイドルだ。この夏菜のステージには司会者は必要ないのかもしれない。
『え……えぇと……スリーサイ――――』
「――――愛川夏菜っていいます! 高校2年生で、今日は友達と遊びに来ていましたっ!」
なんであの司会者はスリーサイズに拘るのだろう? あまり数字を聞かせられてもピンと来ないんだけどな。
それにスリーサイズって胸、腰、尻の事でしょ? 分かってないなぁ、夏菜の魅力はそこではないのだよ。
夏菜といえば美脚である。陸上で鍛えられた細くも引き締まった脚は素晴らしい。身長だってトーリより低いものの高い身長の部類だろう。
『で、では他の質問――――』
『――――彼氏はいますかぁ!?』
司会者はマイクを使っているというのに、それを遮ってまで質問した観客。
もう司会者は匙を投げたようで、マイクを下ろしてしまった。
「う~ん今はいないけど……彼氏になってほしい人はいる~」
そう言って観客達を見渡し始める。その視線は俺の方で止まると、ニコっと笑ったような気がした。
夏菜の彼氏か……毎日が楽しくなるのは間違いないのだろうな。あんな楽しそうな笑顔、見ているだけで楽しくなるのだから。
『彼氏に……もしかして俺か!?』
『いいや俺だろ!?』
『こっち見て言った! 俺の事だ!』
俺の周りの男達がザワつき始めた。確かにこっちを見て笑ったけど、今は他の方を向いて笑顔を見せている夏菜。
「にゃはは~そうだね、この会場には……いるかも。優勝したら言っちゃおうかにゃ」
「え……マジで――――」
『――――俺は投票するよ!』
『俺も! 優勝だ!』
「夏菜ちゃん優勝して欲しい!」
俺の呟きなど掻き消されるほどの声援が周りの男達から放たれた。
いいタイミングでこっちを見て笑った影響だと思われるが、この人達の投票は決まったようだな。
「……? あのぉ~、ウチ、どうすればいいんですか?」
『……えっ!? あ……で、では最後になにか一言』
観客の一部と化していた司会者に視線を送った夏奈。慌てながらも司会者は己の仕事を思い出した様だった。
「……優勝したら……言うね」
何を……言うのだろう。このステージで初めて頬を赤らめてそう言った夏菜は、軽やかな足取りでステージから捌けていった。
最後もこっちを見ていたような気がするんだけど……。
とりあえず、ヤバい。俺は夏菜に投票しようと心を決めるのだった。
――――
『はい! 続いてはエントリーNo24!! 蓮海春香さんですっ!!』
コールされた最後の四季姫。他の三人は見事に会場を沸かせて見せたが、春香は大丈夫だろうか?
他の三人はあまり物怖じするイメージはないのだが、春香は……ちょっと心配だな。
『……おや? 蓮海さん? ど、どうされました?』
なかなか現れない春香。なにかトラブルだろうか?
司会者の視線が舞台袖を見つめているので、自然と観客の目も舞台袖に集まり始める。
……いた。舞台袖から顔を出しては引っ込め、様子を窺っているような春香だ。
『は、蓮海さん? あの……時間も押しておりまして……』
「うう……はい……」
ビクビクしながら中央に進んで行く春香。足取りは重く、可愛らしい顔にも不安の色が強く浮かび出てしまっていた。
……あ!? 躓いた、心配すぎるんだが……仕方ないな。
「蓮海さぁぁぁん!! 大丈夫!! 誰も襲ったりしないから!!」
春香のために恥をかき捨て大声で叫んだ。周りは爆笑とまではいかないが、そこら中から笑い声が上がり場は和んだ。
届いただろうか? はっきりは見えないが、春香の表情も少し和らいだようには見えるけど。
『蓮海さん……? 大丈夫でしょうか?』
「は、はい! だいじょうぶでしゅっ……あう……」
『『『『か、可愛いぃぃぃぃ!!!!』』』』
噛んでしまった春香に観客の声援が爆発した。
噛んでしまって恥ずかしそうな表情や仕草が、春香の柔らかい雰囲気を更に柔らかなものにしたようだ。
庇護欲と言うか、守りたくなる女性という意味では春香以上の女性はいないだろう。
『あはは。落ち着きましたか? 質問、宜しいでしょうか?』
「は、はい。大丈夫です……」
司会者の雰囲気も心なしか、他の出場者に対する感じより柔らかい気がする。
盛り上がりと言うのとはちょっと違うのかもしれないが、この場にいる全ての男性が味方に付いた。
誰も春香を笑わないし傷つけない。このまま和やかな雰囲気のまま進んでくれれば問題ないだろう。
『では蓮海さん。アピールといいますか、ご自身の魅力はどこだと思いますか?』
「えと、魅力かどうかは分かりませんけど……よく髪が綺麗だと言われるので、ケアには気を付けています」
軽く自分の髪に触れながら、少しだけ伏し目がちに答える春香。
可愛らしい顔はもちろんだが、春香と言えばその綺麗な黒髪。男性女性問わず、どうしても目が惹きつけられてしまう。
あれだけ長いと手入れも大変だろうに、乱れている所を見た事がない。
誰が見てもその髪は魅力的だろう。
『確かに! お綺麗な髪だと思います! どなたかその黒髪に触れる事を許された殿方はいらっしゃるのでしょうか!?』
『やべぇ、触ってみてぇ』
『艶々と光ってるぞ? 神の髪だ』
あれだけ綺麗だし触りたくもなるけど、女性の髪って触っちゃいけない雰囲気があるよな。
それに春香の髪は誰かのダジャレじゃないけど神聖的な雰囲気があるもん。
他の三人の髪も綺麗だけど、触っちゃいけないような神聖的な雰囲気はなかった。
「触っちゃダメって事はないですけど……触られたい訳じゃないです。好きな人には……むしろ触って欲しいですけど」
『なるほど。つまり彼氏さんなどであれはお触りオッケーだと?』
「そう……ですね。頭をなでなでしてほしいです」
まだ緊張があるのか、小さな声で話す春香。マイクがあるから会場に声は届いているので問題はないのだけど。
……あれ? つい最近、春香の頭を撫でた様な……?
「あたしから触ってとかは、気になる人にしか言った事がありません」
『なんと! では蓮海さんから触ってと言われた男性! あなたは意識されていますよ!? そういう事ですよね!?』
「あ……ストレートすぎ……? あ、あの! 気になるです、気になる! 他の人より、少しだけ気になるです! し、失礼しましゅっ!!」
『えっ!? あれ、蓮海さん!? まだ時間はありますよ!?』
顔を両手で隠し、さらに言葉を噛んだ春香は、そのまま舞台袖に走り去ってしまった。
ポカンとする会場。微笑ましいものを見たようにニヤニヤしている人もいたが、これはマズいんじゃないかと思い耳をこらしてみた。
「春香に1票✋」
良かった、投票してくれる人はちゃんといるようだ。
結構な勢いで走り去った影響なのか、綺麗な髪がキラキラと靡いていたし、その様子に目を奪われてポカンとしたのだろう。
とりあえず、キレイ。俺は春香に投票しようと心を決めた。
お読み頂き、ありがとうございます
色々と忙しく、投稿が遅れてしまっております
申し訳ありません
次回
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