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第10話 浮気担当?






 八千代さんに言われて、夏菜を追ってコテージに向かっていた。


 午前中の人気具合などを考えても、一人で行動すると色々と面倒な事になりそうだし。


 実際に昨日だって、ちょっと離れるだけで声を掛けられるものだから、ほとんど五人でいたのだった。


 まぁ海といえばナンパのイメージもある。去年、央平と海でナンパしようと盛り上がった事があったのだが、鏡を見てやっぱ止めようとなったのはいい思い出だ。



 小走りでコテージに向かう道を走っていると、夏菜の後ろ姿が見えた。彼女は立ち止まっており、誰かと話している様子。


 小さく聞こえる彼女の声色からは、いつぞやのナンパ男に対する不快感や敵対しているような感じではなさそう。


 夏菜が話している相手は男のようだ。どこかで見た様な気がするが気のせいだろうか。



 しかしなんだろう……またまた面白くない。


 さっきから何が面白くないのだろう。俺の知らない所で、夏菜が男と楽しそうにしているのが気にくわないのか?


(なんだよそれ。お前は夏菜のなんなんだよ? 何様だってんだよ)


 あの様子から、彼女達は知り合いなのだろう。夏菜は誰と話したっていいのだし、俺がとやかく言う話でもないはずだ。



「ごめんね~、今日はずっとバイトだから」

「そうなんだ。終わってから少し時間を貰えたりもしない?」

「う~ん……」


 夏菜は友達が多いんだ。実際、学園ではよく男子生徒とも楽しそうに話していたじゃないか。


 その時は別になんとも思わなかったのに……今日は胸がザワつく。


「実はさ、夏休み前に伝えようと思っていた事があるんだけど……勇気が出なくて」

「そ、そうなんだ」

「でもこんな所で会えたんだし……だから、ちょっと時間を作って欲しい」


「えぇと……こ、困ったなぁ」


 まさか彼氏かと思ったが、そうではなさそうだ。


 ナンパされているという感じでもないし……ていうか今、困ったって言ったぞ。



 【困っているなら助けるしかない】

 【余計なお世話なのかもしれない】

 【実は困ってないのかもしれない】



 こ、困っているなら仕方ない! 友達として、助けてあげなければいけないんだ。


 そもそも、ちょっと面白くない。俺の夏菜に何してんだっ! なんて言えたらいいのになぁ。



「な……夏菜さ~ん? こんな所でどうしました?」

「えっ……あ、九郎」


 俺の声に振り向いた夏菜は驚いた顔をしていたが、一瞬で安堵した表情に変わった。


 それを見て私が来たからには……という気持ちになったのだが、次の瞬間にはばつが悪そうな顔になり目を逸らされた。


 ……なにその、ヤバい所を見られたって感じの態度。まさか本当に彼氏?



「あの……お、お邪魔でしたら消え去ります」


「ち、違うのっ! これは違うのっ!」


 なにその……浮気現場を見咎められた時の発言。慌てた様子がさらに不信感を募らせる。どの立場で不信感を募らせてんだ俺は。


「勘違いして欲しくなくて! ウチ、九郎しか見てないからっ!」


 何故か慌てる夏菜、本当に浮気の言い訳をされているような感覚になってきた。


 俺と夏菜は彼氏彼女じゃない。浮気が成立していない事は夏菜も分かっているはずだけど……随分と真剣だな。


 これはあれか? いつぞや冷やかされた夫婦漫才を演じて、この場を切り抜けようという事か?


 ならば俺も演じて見せよう、浮気された彼氏役。お茶を濁してタイミングを見て退散だ。



「ふんっ! なにを申す!? 勘違いも何も、その男はなんだ!」

「こ、これは……その……」


「俺という男がいながら、他の男と会うなんてっ!」

「た、たまたま会っただけで何もしてないもんっ!」


「浮気した奴はみんなそう言うんじゃ! どうしてくれんだよぉ!?」

「浮気なんて……してないっ! ウチはずっと……だから見られたくなかったのにぃ……」


 ……ん? んん? んんん!?!? あれ、夏菜……目が潤んでない……?


 目がウルウルしている夏菜も可愛……って、そんな事を思っている場合じゃないんじゃないか?


 演技なんだよな? もし、万が一演技じゃなかったらどうなる? 女を泣かせた男……それは非常にマズいッ!!



「じょっ冗談だよ夏菜!! 俺は勘違いしてない! お前を信じてる! 何も見なかった!」

「ほ、ほんと……? 勘違いしてない?」


「ああしていない! お前の彼氏は俺だけだ! そうだろう!?」

「う、うん、そうだけど……いいの?」


 あぁ、なんか俺……浮気されても許しちゃうタイプなのかもしれない。


 これも独占欲の一部なのだろうか?


「いいのだいいのだ! じゃあ行こうぞ、マイワイフ」

「そ、それじゃ奥さんだよぉ……」


 真っ赤になった夏菜の手を取り、強引にコテージに引っ張っていった。


 チラッと男の様子を見てみたが、ポカンとするだけで特に何も言って来なかったので助かった。



「ねぇ九郎。彼氏役を演じてる事には途中で気づいたけどさ……本当にいいの?」

「いいって、なにが?」


「あの人……ウチらと同じ学園の生徒だよ?」

「そうなんだ。どうりでどっかで見た記憶が……同じ学園!?」


 さっきの男は学園の生徒。彼氏役を演じてしまっては、知らないナンパ男ならまだしも知っている奴ならば話は別だ。


「う、うん。夏休みが終わったら噂になってるかも……ウチの彼氏は九郎だって」

「ご、ごめん。深く考えてなかった……今からか冗談だって伝えてくるか!」


「い、いいよ! そうなったら、そうなったで……」

「いいのか……? 嫌じゃない?」


「別に嫌じゃないし……告白除けになって楽かも」

「ああ、そういう事ね……」


 どうせ俺に告白してくる奴なんていない。夏菜と付き合っていると噂を広められても実害は……あるかもしれん。


 夏菜推しに刺されるかもしれん。幼馴染の公太とかは、俺の幼馴染を返せとか言って暴れるかも……それはねぇか。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【秘技・ギャップ萌え】

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― 新着の感想 ―
[一言] 夏休みはまだまだあるけど 果たして噂はこれだけで済むんですかね
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