第4話 想像してほしかっただけ
長めです
昼食後、やってきました水着コーナー。
どうやらワンフロアが丸々水着コーナーとなっているようだ。流石に広すぎ……と思ったのだが、とある区画だけは空いていた。
……ああ、男用だ。割合的には七対三、八対二かもと言ったほど。売り手的にはこの比率が当たり前なのだろう。
このフロアに来た時に思ったのだが、壁際で何人もの男がスマホを弄って時間を潰している様子が見えた。恐らくは彼女の水着選び待ちなのだろうな。
女性側に男は入りづらい。カップルが一緒に選んでいるのは見えるが、俺は男避けの彼氏役だし。
そういう俺は無難な水着を購入し、他の男同様に壁際まで移動して彼女達の買い物が終わるのを待った。
――――
――
―
(……遅い。まぁ当然か)
女性の買い物は時間が掛かる。しかも今日は四人なのだから、色々と楽しんで買い物をしているのだろう。
待っているのが彼女達だと思うと、まったく苦はないのだが………暇は暇だ。
流石に水着を選ぶ所を見られるのは恥ずかしいのか、彼女達には待っていてと言われていた。
試着コーナーはねぇ、残念ながら男子は入れないみたいなんだよね。
(そうだ。誰が一番初めに出てくるか予想しよう)
【春香】
【夏菜】
【秋穂】
【冬凛】
……夏菜ッ!! なんか買い物が早いイメージがある。
「……クロー? ちょっと来て」
「えっ? お、おう」
トーリだった。周りの男達がトーリを見て若干のザワつきを見せる。
トーリには買い物が終わったという感じはなく、言われるがままに俺は女性用の水着コーナーへと引っ張られていった。
まぁトーリと一緒ならば、まだ大丈夫だ。しかし彼女と居ても、こういう女性物しかない所ってのは居心地が悪いよな。
「これとこれ……どっちがいいと思う?」
見せられたのはワンピースタイプの水着とビキニタイプの水着。
真逆と言って良いほどの露出の差。と思ったが、ワンピースタイプの水着を後ろから見るとビキニだ。モノキニと言うらしい。
トーリはスタイルがいいから何を着ても似合うとは思うが……男の答えなんて決まってるだろ。
「……こっちかな」
「だと思ったわ」
選んだのはビキニタイプ。当然でしょう。
「結構きわどいけど……私に似合うと思う?」
「似合うと思うけど……きわどいのか?」
「これ、紐よ?」
「紐!? た、確かに紐だ……」
確かに、上も下も紐で縛って解けないようにしているタイプ。あれ、解けたらどうなるんだろう?
「……解いてみる?」
「はっ!? ほ、解いたらどうなるんですか?」
「さぁ? 全部……見えちゃうんじゃないかしら?」
ニヤっと笑うトーリ。挑戦的な目で俺の反応を待った。
「なっ!? ダメだろ脱げたら!? みんなに見られるだろ!?」
「……他の人に見られるのは困るわね。というか慌てすぎ、冗談よ。この紐は飾りだから、解けても脱げないわ」
どうやら揶揄われたようだ。トーリはもう少し見てみると言って、売り場の奥に消えていった。
――――
――
―
再び壁際まで戻り、暇つぶしの予想をば。
【春香】
【夏菜】
【秋穂】
……夏菜ッ!! やっぱり買い物が早いイメージがある。
「九郎くん。ちょっといいかな?」
……春香だ。周りの男達が春香の登場を見て、俺にふざけんなよコイツ! といった厳しい視線を送ってくれた。
トーリの次に春香と一緒に水着コーナーへ。男達の目が怖かった。
「これとこれで迷ってて……」
春香もワンピースタイプとビキニタイプのどちらかで迷っていると言う。
だから真逆の水着じゃないか。デザインで迷うならまだしも、なぜ根本から違う水着で迷うのだろうか?
「九郎くんはどっちが好き?」
「どっちが……そうだなぁ」
好きなのはビキニです。一応、変態と思われないように迷う素振りを見せたが、俺の答えは決まっている。
「じゃあ……あたしにどっちを着て欲しい?」
「どっちを……着て欲しい?」
「うん。どうせなら九郎くんが好きな方を着てあげたいかな」
なんでこの子はこんな可愛い事を言えるのだろう。そういう男を惑わす所、アキに似てきたように思える。
そして選択した、胸元に大きめのリボンがあしらわれたビキニタイプ。スカート状になっている水着もセットになっているようだ。
「あはは、なんとなくそうじゃないかなって思ってた」
「まぁ男なら……ね。ワンピースも春香には似合いそうだけど」
着てほしいのはビキニだが、春香に似合うのはワンピースタイプだとは思う。
「そう言われると迷っちゃうね」
「春香ならどっち着ても似合うよ」
嬉しそうに微笑んだ春香は、もう少し悩んでみるそうだ。本当に、どっちを着ても可愛いんだろうなぁと思いつつ、俺は壁際に戻った。
――――
――
―
【夏菜】
【秋穂】
……夏菜ッ!! どうしても買い物が早いイメージがある。
「クーちゃ~ん」
……アキだ。最後まで予想は外れてしまった。
小さく手を振りながら小走りでやって来たアキに手を引かれ、俺は再び水着コーナーへ。
その際、壁際にいた数人の男が確かに呟いた。呪詛の様に聞こえたが、俺は聞こえない振りをしました。
「これにしようかなって思ってて……」
アキが見せたのはビキニタイプの水着のようだが……商品名のタグを見てみると、ハイネックビキニというらしい。
首元まで布で覆われており、どう頑張っても谷間は見えないタイプの水着。
「うん。いいんじゃないかな? アキにピッタリだと思うよ」
「そ、そうですか? 実は……こっちとも迷ってて」
見せられたのは……まぁ布が少なくない!? タグを見ると、ブラジリアンビキニと言うらしい。
「こ、これで海を泳ぐの?」
「泳ぐのには向かないかもですね、脱げちゃうかもです」
この子もか? なぜ真逆の水着で迷う? 片や胸元を隠し、片や大露出。
「脱げちゃうのは……ヤバくない?」
「ヤバいです。ところで、この水着を着てる私を想像してくれました?」
着ている私どころか、脱げちゃっている私を想像してしまったが。
「まぁ……想像してしまいましたね。目のやり場に困る」
「それなら良かったです。本当は試着したいのですが……」
試着はできるはずだぞ? ちゃんと調べたもん。残念ながらこのお店は、女性の試着コーナーに男性は入れないみたいだが。
「すればいいじゃん? 水着はね、試着できるんだよ!」
「それは知ってますけど……クーちゃんに見せられないなら意味ないですし」
ありがとうございました。そう言うとアキはブラジリアンビキニを戻して、ハイネックビキニだけを持って行ってしまった。
――――
――
―
【夏菜】
夏菜ッ!! どこまでも買い物が早いイメージがある。
もしかして夏菜はもう買い物を終えていたり? みんな、買い物途中でこっちに来たようなもんだし、予想はノーカンだろう。
「すみません。真夏の昆虫体験会はどこですかね?」
「誰だよ……知りません。店員に聞いて下さい」
誰だか知らない人に声を掛けられた。絶対に当たるはずの予想だったのに。
というか昆虫体験って、何を体験させられるんだよ。なんかゾワっとしたわ。
「く、九郎っ! ちょっといい?」
地味に昆虫体験会を見てみたいと思っていた時、夏菜がモジモジしながらやってきた。
しかし買い物を終えたようには見えないが……夏菜も迷っているのか?
意外と言えば意外だ。これでいいやーって感じなのに。
「なんか失礼な事を考えなかった?」
「い、いえ、そんな事ないよ」
目が少し厳しくなるが、すぐさま元に戻った夏菜。やはり一緒に水着を見て欲しいそうだ。
「じゃあ行こっ」
「おう」
「「「「なんなんだお前はさっきからぁ!?!?」」」」
夏菜と一緒に歩き出そうとした時、壁際にいた男達が騒ぎ出した。
何事だと振り返ると、みんながみんな俺達を睨みつけているような気がするが、なにかしただろうか?
「お、お前! その子とどういう関係!?」
なんでそんな事をこいつ等に言わなければならないのか。でも無視しても付いてきそうで怖いな。
「どういうって、とも……彼女だけど」
危ない危ない。今日は彼氏役だった。なんでこうなったのか忘れたけど、彼氏役を演じなければならない事は覚えている。
「じゃあさっきの子達は!?」
「え……っと、彼女だ」
「はぁ!? 四人全員が彼女だって言うのか!?」
「そうなりますね」
男達の睨みつけが強くなる。自分達も彼女がいるくせに、他人の彼女を羨むのはどうなのだろう?
「君! それでいいの!? 四股されてるよ!?」
「……知ってるよ? まぁ……す、好きになっちゃったんだから仕方ないよね」
恥ずかしそうにしつつも、夏菜は彼女役を演じ切っていた。
「早く行こっ! 好きな人に……水着を選んで欲しい」
「お……おお」
なんだこの可愛さは。役だと分かっていてもニヤけてしまう。
照れながらそう言った夏菜にみんなが見惚れている隙に、夏菜の手を引いて水着コーナーへと走った。
他の三人はみんな目当ての水着を購入したようで、まだ選べていない夏菜の水着選びが始まった。
帰り際に夏菜本人から聞いたのだが、夏菜は着せ替え人形状態になったらしい。ほぼ裸だろといった水着や、パンツタイプのものまで幅広く。
なぜかほぼ裸の水着だけ細かく伝えてくるので、それを着ている夏菜が容易に想像できた。
まぁなにはともあれ、みんな気に入った物を買えたようでなにより。
お読み頂き、ありがとうございます
諸事情により、投稿できない日が出てくる可能性があります
次回
→【車内にて】




