第1話 始まる夏休み
自覚編後半
「――――ですから、あまり羽目を外し過ぎないように、高校生らしく――――」
一学期、終業式。
俺は校長先生の話をボーッと聞き流していた。
明日から始まる長期休み。周りに目を向けると、誰も彼もがソワソワしており落ち着かない様子。
中には近くにいる央平のように暗い顔をした生徒もいるが、恐らくそれは赤点補習者なのではないだろうか。
かくいう俺は四季姫の協力もあって、見事に補習対象五科目で赤点を回避していた。
回避どころか今までで一番いい成績と順位となったので、彼女達には頭が上がらない。
そして勉強しつつも、なんと彼女達と遊ぶ約束もしてしまった。
間違いなく今年の夏は、思い出に残る夏休みになるのではないだろうか。
「――――以上です。それでは、夏休みを楽しんでください。そして変わらぬ元気な姿を、二学期に見せてください」
校長先生も生徒たちの様子に気づいたのか、早々に話を切り上げたようだ。
始業式が閉式し、ついに待ちに待った夏休みが始まった。
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「う…………海じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「海だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ま、待ってよ夏菜さん!」
「走ると転びますよぉ~」
「子供なんだから」
海。そう海。
目の前に広がる大パノラマ。俺はたまらず荷物を放り投げて海へと駆けだした。
それに続いたのは元気娘の夏菜、少し遅れて春香。呆れたような表情をしているのがアキとトーリだった。
最終的にみんなが波打ち際に集まり、各々が足を海に付けて水の感触を楽しみだす。
「ほらほらぁ!!」
「なっ! ちょ!? やったわね!?」
水を掛け合い楽しみだした夏菜とトーリ。
「この……波が引く時の足裏の感覚がなんとも言えないよね」
「分かります。なんと言うか……ゾクゾクしちゃいます」
ジッと足元を見つめて、なにやら楽しんでいる春香とアキ。
「……やべぇな」
そして少し離れた所で、彼女達を視姦する俺。
彼女達は水に濡れてもいいようなラフな格好をしてる。簡単に言えばTシャツに短パン。
水に濡れて艶っぽくなった春香の黒髪、水を弾くほど綺麗な夏菜の肌、Tシャツを大隆起させるアキの胸、長くて細くて瑞々しいトーリの脚。
……天国だな。水着姿が楽しみで仕方ない。
「「「「…………」」」」
ジロジロと見過ぎていたのか、気が付いたら四人の視線が集まっていた。
意地の悪い顔をする者やニヤニヤする者、見せつけるようにする者やワザとらしくポーズをとる者。
慌てて目を逸らすが、どうやら遅かったようだ。
「「「「クスクス……えっち」」」」
そういう目ではっ……見てたかなぁ。
しかしこんなに幸せでいいのだろうか? 夏休みが始まる前は、一緒に海に来れるなんて想像もしていなかったなぁ。
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始業式が終わり、変な高揚感を抱いたまま家に戻った。
玄関を開けた時に感じる違和感。奥の部屋から聞こえる聞き覚えのある声。
「おー九郎! おっかえりー!」
「とーさん? なんでいるんだ?」
リビングにいたのは我が父、脇谷六斗だった。その横には母の三枝子もおり、久しぶりに家族三人が揃っている。
ちなみに俺は父親似。つまり父はイケメンではないが、昔は何故かモテたらしい。そのちょっとだけチャラい感じが受けるのだろうか?
「なんでって、ここは俺の家だぞ?」
「分かってるよそんな事。仕事は? 休みなの?」
「違うよ。仕事で戻ってきたんだ」
仕事で単身赴任をしていた六斗。ついに単身赴任を終わらせる覚悟が出来たという事だろうか?
母から逃げる事を止め、向き合う事を選択したと? でも母さん、めっちゃ嬉しそう。どこがいいのか分からんなぁ。
「この夏さ、新しいイベントに携わる事になったんだよ」
「新しいイベント……? 単身赴任は?」
「単身赴任は継続! ここには出張で来た」
自分の家に出張で来るとは。まるで単身赴任先が自宅だとでもいうような発言だが。
言葉には気を付けた方が良い。母の機嫌が若干だが悪くなったように感じる。
父の仕事はイベント企画。詳しくは知らないが、とりあえず色々なイベントを企画して色々と盛り上げるんだろ? 良く知らないけど。
「今度さ、海の家のイベント企画を手掛ける事になってな」
「海の家って、あの海の家?」
「そうそう! 五っちゃんがさ、海の家を経営してるのは知ってるだろ?」
五っちゃんとは南雲五郎丸の事。父と五郎丸さんは旧知の仲だ。
「その五っちゃんの海の家を使って、色々とイベントを計画してんだよ」
「ふ~ん、そうなの」
五郎丸さんが海の家を経営していると言う話は、去年だったか聞いた記憶がある。
確かバイトに誘われたんだけど、去年は補習が多かったから行けなかったんだ。
「だからさ、お前も手伝え!」
「……は? 手伝うって……イベント?」
「違くて、海の家でアルバイトするんだ」
海の家でアルバイト……なんだろう、青春の匂いがするが。
でもなぁ、今年はちょっと……四季姫や公太たちと遊びたいという気持ちが強いんだけど。
「四泊五日くらいかなぁ? 友達も誘っていいからよ! 保護者も付くし、保護者への説明は俺からしてやるから」
と、友達を誘っていい!? 春香や夏菜やアキやトーリと、海の家!?
海!? 砂浜!? 水着ッ!?!? アバンチュール!?!?
「お……女の子もいいのか?」
「お? なんだぁ? 気になる子でもいるのか~? もちろんいいよ! 親御さんが許せばな」
「ちょ、ちょっと聞いてみる! な、何人までオッケー?」
「別に何人でも……まぁ、十人以下な。あ、あと日程だが――――」
なんていうイベントを用意してくれたんだ我が父は。
人並みに父の事は尊敬していたが、ここまで尊敬したのは初めてかもしれない。
俺はすぐさま部屋に駆け込み、みんなへメッセージを飛ばし始めた。
――――
「あの子ね、彼女できたっぽいのよ」
「おお!? マジ? さすが俺の息子!」
「貴方の様に愛人を沢山作られたらたまらないわよ?」
「作ってません、何を言う」
「ともかく。この前、急にお弁当はいらないって言ってね」
「なるほど、彼女に作ってもらったって?」
「恐らくねぇ~。お小遣い日前だったから、そんなにお金ないはずだし」
「そっかそっかぁ! じゃあこのイベントで、仲を進展させてやろうかなぁ」
「……ほっときなさいよ」
「さぁ? どうしようかな」
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