第13話 夏休みへの期待
生徒会役員選挙・最終話
「――――投票の結果、今期の生徒会長は三年A組、酒神陽乃さんに決まりました」
――――パチパチパチパチ。
喝采とまではいかないほどの拍手が、体育館中に鳴り響いた。
随分と熱い戦いを繰り広げて盛り上がりを見せた選挙週間ではあったが、これが現実だ。
誰が生徒会長になろうと、多くの学生に大きな関心はない。人気生徒が廊下を練り歩くイベントでは盛り上がっても、終わってしまえば興味なし。
あの後、俺達は三学年を普通に回りアピールしたが、任木田先輩の方の二学年アピールは微妙だったらしい。
それもそのはず、二学年アピール時の任木田陣営には、色姫が参加しなかったらしいのだ。なにがあったのかは知らないが、男子人気を稼げなかったことが敗因だろうか。
そして勝った陽乃姉さんだが、生徒会長になったのは学食のメニューを充実させたいからという、なんとも言えない事を聞いた時は呆れたものだ。
そんなんでよく生徒会なんていう、面倒な組織に入れるものだ。就職や進学に有利になるのかもしれないが、この学園は色々と生徒会に仕事が一極集中するから大変なのに。
「……そんな大変な生徒会に、なんで俺が……」
「俺は楽しみだぜ!? 可愛い子ばっかりなんだもん!」
「まぁ、補佐だから。そこまで仕事は多くないはず……」
壇上で、生徒会長としての意気込みを語っている陽乃姉さんを軽く睨みつつ、公太たちと愚痴を零していた。
さっそく生徒会長として強権を発動させた陽乃姉さん。生徒会補佐という、体のいい雑用係に俺たち三人と、月ちゃんと四季姫が任命された。
央平はやる気満々だったが、最初俺と公太は面倒だと拒否をした。
しかしあの姉に逆らい続ける事が出来る訳がなく、俺はすぐさま陽乃姉さんの怖さに屈服したが、公太が意外にも最後まで抗い続けた。
よっぽど部活に行けなくなる事が嫌だったっぽいが、大きなイベント時の手伝い程度だと言う言葉を聞いて渋々了承。
四季姫も最初は微妙そうな顔をしていたが、俺が屈服したと同時に補佐を務める事を承諾した。
「とりあえず、夏休みに何回か行かなきゃないんだろ? なにをさせられるんだ?」
「九月にある球技大会の事とかか?」
「あいさつ運動の話し合いとか……言っていたような」
「それ、一番面倒なやつじゃないか? そもそも俺達は補佐なんだけど?」
愚痴は止まらない。央平にしたって可愛い子と一緒にいたいだけで、仕事をしたい訳じゃないのだろう。
しかし夏休みかぁ。公太は部活漬けって言ってたし、央平は補習漬けだ。
去年は俺も補習漬けで、央平と一緒にいた記憶しかないのだけど、今年はどうしようか。
頭に浮かぶのは四人の彼女達。せっかく仲良くなれたのだから、今年は一緒に遊んだりしたいものだ。
だがそれを成し遂げるには……。
「……期末テストだな」
「嫌な事を思い出させるな」
「期末は十科目。補習対象科目の五科目だけは、赤点を回避しないとね」
「……回避しないとねって、公太は回避確定してるだろ」
「か、確定はしてないよ」
「でも自信あるんだろ? 一位に返り咲くのを狙ってんのか?」
「自信というか……赤点を取ると部活が出来なくなるから、気合は入ってるよ」
生徒会の人が次々と紹介されて挨拶をしていく中、俺達三人は全く話を聞かずに夏休みの話を続ける。
「部活かぁ。俺はバイト三昧だな」
「あの人に会えるからだろ? 大学生のお姉さん」
「あ~なるほど。ねぇ央平、デートに誘ってみれば?」
「べ、別にそんなんじゃ……デ、デートとか……」
「そんな事いってると他の男に取られるよ? 大学生ってさ、色々ありそうだし」
「確かに。高校生とは恋愛事情が違うイメージがあるよな」
「わ、分かってるよ! つか公太に九郎! お前らだってどうなってんだよ!?」
「それも気になるねぇ! なぁ九郎、彼女達の事、どうするつもりなんだ?」
「ど、どうって……別に」
「なんだよ? 誰の事を言ってんのかは分かるみたいだな? 相当意識してんじゃねぇかよ」
話の矛先が俺に向いたので、誤魔化す様に壇上に目を送った。
……気のせいだろうか? 陽乃姉さんと目が合っている気が。
「九郎も夏休み、頑張らないとな!」
「ったくよぉ、羨ましいぞこの野郎」
「う、うるせぇな! というか公太! お前こそどうなんだよ!?」
「う~ん、どうなんだろうね?」
「爽やかにはぐらかしたぞコイツ」
「高校生の夏休みだからなぁ……とりあえずさ、彼女ができたら報告な? 絶対だぞ!?」
「分かったよ、九郎もいいね?」
「わ、分かったよ。万が一できたらな」
「じゃ約束だ! 我ら三人、生まれし時は違えども、願わくば彼女――――」
「――――公太っ!! 九郎っ!! 真ん中の三馬鹿っ!! 後で生徒会室に来いッ!!!」
大音量で陽乃姉さんの怒号が体育館中に響き渡った。
慌てて私語を止めて姿勢を正すも後の祭り。夥しいほどの蔑みの視線とピンク色の視線を浴びせられた俺達は、総会が終わるまで縮こまった。
放課後、生徒会室にビクビクしながら足を運ぶと、鬼の会長と化した陽乃姉さんが生徒会長席で脚を組んでおられた。
しかし軽いお小言を頂いた後は、生徒会長就任に力を貸した事を感謝された。
その後は陽乃姉さんの奢りで、四季姫も加えた九人で簡易祝勝会を行った俺達。
各々が期末テストに向けて意気込む中、すでに夏休みの事で頭が一杯の者もいた。
「央平はどうする? 期末テスト……俺と勉強するか?」
「え? 中間みたいに、みんなでやらないのか?」
「あそこに割って入る勇気はないよ……」
央平と公太の目が、他とは違う雰囲気を醸し出している一角を見る。というか、逆に央平と公太の場違い感が凄かった。
「クーちゃん、期末テストはどうしますか?」
「そりゃもちろん、勉強するよ! 夏休みのためだ」
「仕方ないわね。またお姉ちゃんが教えてあげるわよ」
「陽乃先輩は生徒会長で忙しいですよね? 九郎くんの事は任せて下さい」
「先輩。暇だったので二年生の勉強も終わらせました。私もお手伝いします」
「いやいやつっきー! それは同学年のウチに任せてくれればいいから!」
「……ねぇクロー。買い物の約束、忘れてないわよね? 夏休みでいいかしら?」
「え? おお、罰ゲームな。いつでもいいよ、でも洗濯機は勘弁」
「冬凛ちゃん? どういうこと?」
「冬凛、それって抜け駆けじゃないの?」
「抜け駆けって……だってこれは、結構前の約束だもの」
「……九郎くん。あたしも、ちょっと買い物に付き合ってほしいな」
「ちょっと春香!? いっつもどさくさに紛れるんだから!」
「クーちゃん、私もお願いしたいです」
「ええ!? ならウチもっ!」
和気あいあいとする九郎たちを見て、央平と公太は思う。
ここまで好意を向けられているのに、なぜあの男は気づかないのだろう? 気づかないと言うより、はなっからあり得ないと決めつけているようにも感じる。
まぁしかし、四季姫たちの様子、彼女達のグイグイ感を見るに、遠くない内に何かしらの行動には出そうな気がするが。
「まだ早いけどさ……二学期、アイツらどうなってんだろうな?」
「この夏休みに何か動きそうだよね」
体育祭前とは違う。彼女達は己の想いを自覚したのだろう。
問題は当の本人が、自覚していなさそうという事なのだが。
「なんにせよ、楽しみだよね」
「だな。俺もがんばろっかなー」
「……だね。俺も頑張るよ」
「はぁ? どゆこと? お前まさか……?」
不敵に微笑みながら九郎を見る公太を見て、冷や汗が流れる央平。
もしかして公太は四季姫の誰かを狙っているのだろうか? もしそうなら、俺はどうしよう?
中立である事に変わりはないが、二人が争うなど考えたくもなかった。
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自覚編、前半終了となります
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→【自覚編・夏休み】




