第11話 四季姫VS色姫
任木田先輩の切り札、三学年の人気女子生徒である色姫。
姫の名に恥じぬ美しさ、佇まい、存在感。四人も集まると流石に圧巻である。
任木田先輩はやはり人気なのか、色姫は彼に寄り添うように立っている。
これに太刀打ちできるのは四季姫しか……後は彼女達を上手く乗せる事ができるかどうか。
全ては陽乃姉さんの手腕に掛かっている。
「こっちも切り札よ――――九郎、来なさい」
「了解っ!! …………は?」
反射的に飛び出してしまったが……な、なんで俺を呼ぶのだ? まさかの捨て試合か?
そんな!! 四季は色なんかに負けていないのに!!
「……どういう事だい? まさかうちの色姫に彼をぶつけると言うのかい?」
「こっちの姫の扱いわね、アタシより九郎の方が上なのよ」
扱いって……そんな事ないはずだが。そもそも彼女達は物じゃないぞ。
「そうかい、まぁどうでもいいけど。それで……九郎君だったかな?」
「あっはい、そうです」
「じゃあ九郎君、さっさと敗北宣言をしてくれないかな? うちの色姫の方が圧倒的に可愛いだろ?」
……この人、本当に人気なのか? 誰かを上げるために誰かを蹴落とすやり方なんて、人気者がするとは思えないんだけど――――
【敗北宣言】
【宣戦布告】
――――そっちがそういうやり方なら、こっちも倣おうじゃないか。
あまり優劣を付けるような事を声に出したくないのだけど……それ以上に、四季姫の方が下だと言われるのは我慢ならん。
「……先輩、視力悪いんですか? どう見てもうちの四季姫の方が可愛いでしょ」
辺りがザワつく。不穏な雰囲気を感じ取った後輩たちは静かになり、陽月姫は面白そうに顔を綻ばせ、公太と央平の顔には良く言った! と書いてあった。
そして舞台に上げられた四季姫が、九郎に聞こえないようにボヤく。
「うちの四季姫って言ったわよ」
「そこは俺のって言って欲しかったよね」
「ウチ(俺)のって事じゃない?」
「あはは、きっとそうですよ」
「仕方ないなぁ、もう」
「にゃはは、面白そう!」
「彼のためなら頑張ります」
「恥かかす訳にもいかないし」
俺の宣戦布告に感化されてくれたのか、後ろにいた四季姫が前へと進み出た。
微笑む者や面白がる者、意気込む者にやれやれといった者など様々だが、みんな見せつけるかのように俺に寄り添ってくれた。
まさに花園。四風学園でもトップクラスに人気を誇る八人の女子が、互いに互いを意識し始めた。
……ヤバイ。いつだったかあり得ないと思ったけど、冗談じゃなく鼻血でそう。
「ふふ。可愛いね、君」
「先輩もお綺麗ですよ」
桃姫VS春姫。優しさが渦巻いております。
「あははっ! 面白くなってきた!」
「ですねっ! 負けませんからっ!」
青姫VS夏姫。笑顔が弾け合っております。
「彼の頼みなら仕方ないですね」
「彼のためならなんでもします」
赤姫VS秋姫。癒し。この二人だけは癒し。
「まったく、なんでこんな騒がしくなるのかしら」
「でしたら、さっさと負けを認めたらどうです?」
白姫VS冬姫。この二人だけは怖い、寒い。
というか、どういう状況だよこれ? 威圧とまではいかないが、あまりいい雰囲気ではないような気がするんだけど。
そもそも、どうやって勝負を付けるんだ。容姿対決か? そんなの、ここまでレベルが高い子が集まったら完全に個人の好みになるじゃないか。
……というか、やっぱり雰囲気が悪いぞ!?
「でも君、可愛いだけかな? 顔だけ?」
「あははは、先輩もそんな感じですよ?」
や、優しさはどこへ……?
「ねぇねぇ! あなたってちょっと頭悪そうだよね?」
「そうですか? 先輩ほどじゃない気がしますけどね~」
なにその、威圧する笑顔。
「なんでもするとか、そんな嘘を吐くのは止めてくれますか?」
「勝手に嘘だって決めつけないでください。先輩とは違います」
癒しは!? 消えた!?
「あなたも大変ね? なにか弱みでも握られているのかしら?」
「それは先輩ではないですか? 私は好きでやっている事です」
険悪!? 目が鋭利!?
目から光が消えた四人。先輩方の挑発に乗ったのだろうか? そういう子達じゃないハズなのだが。
……なんだろう、さっきまで和気あいあいとは言わないけど、どこか楽しんでいた所もあったのに。
後輩達は完全に引いている、というか怖がっている。八人ともめちゃくちゃ可愛いのに、なんか変なオーラが出ている。
それは任木田先輩も予想外だったのか、ちょっと狼狽えているようだ。
「こ、こうしよう! 彼女達からどれくらい信頼されているのか、そこで勝負しようじゃないか!」
「……それって、彼女達の勝負じゃなくて俺と先輩の勝負になりません?」
なんでそんな方向転換を。出来ればやめて欲しい、巻き込まないで欲しい。もう巻き込まれているかもしれないが。
しかし任木田先輩は焦ったような表情で俺に耳打ちしてきた。
「か、彼女達を見たまえっ! このままだと大変な事になる気がする!」
「まあ、それは同感ですけど。あんな彼女達は初めて見ましたし」
「じゃあそういう事で! いいね!?」
そう言うと任木田先輩は自陣に戻って行った。
そしてなにやら色姫と打ち合わせをし始める。
「それはちょっと……嫌なんですけど」
「報酬が足りなくない?」
「そこまでする間柄じゃないですし」
「お断り。報酬に見合わないわ」
「た、頼むって! 報酬は増額するから! な?」
なにやらコソコソと……声は聞こえないけど色姫の顔が曇っているのが分かる。
しかしどうやら打ち合わせは終わったようで、ニヤニヤした任木田先輩があり得ない事をし始めた。
「どうだ九郎君! これを見たまえっ! これが信頼だ!!」
そこには任木田先輩の両手両足に、腕を絡ませる色姫の姿が。
なんて羨ましい……でも微妙に色姫が嫌そうな顔をしているのは気のせいだろうか?
「信頼があるからこそ、このような事ができる! 君の姫には出来まい!」
「それ……信頼ですか? ただの俺様系ハーレム野郎じゃ……」
「信頼されているからこそ! 信頼していなければこんな事できないだろう?」
「……そう、なんすかね? であれば確かに、彼女達には出来ないですね。というかさせられない――――」
「――――できるよ!」「――――できるし!」「――――できます!」「――――できるわ!」
なんとビックリ。今までにないほど顔を赤くした彼女達が、にじり寄って来るではないか。
嘘でしょ……いいの? いくら勝負だからと、陽乃姉さんのためだからって、そんな体を張らなくても。
何も言えずに驚いていると、ついに傍まで来た四季姫の指が俺の体に触れ――――
ヤバイ、本当に出るかも。鼻血。
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→【bloody nose】




