第11話 体育祭・二人三脚
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助かっております
「は~い確認しますね~……オッケーで~す」
二人三脚の記録係をしていた俺は、一着の担当をしていた。
とはいっても難しい事など何もない。一番早くゴールしたペアの元に行き、結んである紐が解けていたりしないかを確認するだけ。
後は金色の細いゴムバンドを手渡し、生徒会の人に一着のクラスを報告する。
一着は金、二着は銀、三着は銅。公太なんか、左手の手首が金色に輝くほど様々な種目で一着になっていた。
オシャレな女子だと、うまい具合に髪を結うんだっけよ。まじ可愛い。
「九郎、一着のクラスは?」
「B組でした、姉さん!」
「……お、ね、え、ちゃ、んっ!!」
「お、お姉ちゃん、B組が一着だったよ」
幸か不幸か、二人三脚の仕切りは陽乃姉さん。紫のハチマキを輪っかにして首に下げると言う、なんかヤンチャ系。
いや凄い綺麗な人なんだけどさ、スタイルもいいし。でも報告が遅れるとスゲェ怒るんだよね。三着担当の男子がさっき泣かされてたもん。
『アンタ、頭の中が三着みたいね?』
いや意味が分からなかったけど、マジで怖かったよ。
――――パンッ!!
おっと、次のグループがスタートしたようだ。
あまりに接戦なら目を凝らして見ていなきゃいけないのだが、このグループは圧倒的だな。
「お疲れさん、確認するぞ~……オッケーだ」
「いえいっ! やったね秋穂!」
「うん! 頑張りました!」
愛川とアキの、我がC組の黄金ペア。二人の手首に金色のゴムバンドを付けてやる。
愛川……金が三つ目。流石だねぇ。
「じゃあね脇谷君! 頑張って!」
「また後でです、クーちゃん」
「おう」
二人を見送り次のグループに目を向けると、遠目からでも分かってしまう程に目立つ子がいた。
蓮海だ。ロングヘアーをお団子にしていたため一瞬迷ったが、やはり存在感が違う。
どことなく緊張している様子。そして気のせいか見物する男子が多いような気がする。
ジッと見ていると蓮海が小さく手を振った。俺と目が合っている気がするが、間違いだったら恥ずかしい。
俺は当り障りなく、蓮海と目を合わせたまま一着のフラッグを振って見せた。
――――パンッ!!
蓮海、一着にならないかなぁ。そうすれば俺の元に来るんだけど……厳しいか?
あ!? バランスを崩したぞ!? 転びはしなかったけど、大きく出遅れた。
頑張れ蓮海!! まだ勝負はこれからだッ…………あらぁ、ビリ。どんまい。
「はい、オッケーっす」
一着のクラスの確認をして、陽乃姉さんに報告。元の場所に戻ると……あれ? 最終レースだったのか。
やっと終わったと代表テントに戻ろうとした時、蓮海の後ろ姿が目に入った。
なんか俯いているな? そんなにビリだった事が悲しかったのか? 仕方ないなぁ。
「おう蓮海、元気出せって!」
「え……あぁ九郎君。あはは、惨敗だったよ」
まぁ申し訳ないが、まさしく惨敗だった。でも蓮海は人気女子だから声援が凄かったし……あぁ、それが逆に嫌だったか? 見世物みたいで。
「ごめんね? フラッグ振って待っててくれたのに」
「あぁ気づいてた? まぁ、次は頑張ろうぜ?」
「う、うん……じゃあ九郎くん、あたし行くね」
「ん? おう」
そう言うと蓮海は、どこか余所余所しく俺から離れていった。
なんか変な違和感が……あいつ、あの歩き方……まさか!?
【肩を貸す】
【おんぶする】
【お姫様抱っこ】
やっぱりそうか。蓮海の奴、バランスを崩した時に足を挫いたか? なんにせよ足を痛めたっぽい。
俺に変な気を遣わせないように、迷惑を掛けないようにって考えたのか。黙られる方がよっぽど迷惑なんだが。
ちょっと主人公っぽい危険な行為だが、蓮海のためだ。
「――――蓮海」
「……ん? なに九郎く――――キャっ!?」
蓮海の膝裏と背中に手を回し、強引にお姫様抱っこ。さっきの様子から、手を貸そうかと聞いても蓮海は断ったに違いない。
肩を貸すはさぁ、身長が違うから厳しいし。おんぶはさぁ、色々とさぁ……当たるじゃん? ただでさえ今は薄着なんだし。
「く、く、く九郎君!? なに!? なに!?」
「何って……お姫様抱っこ? お前、軽いなぁ~」
「そ、そうじゃなくて! お、下ろして! 恥ずかしいっ!!」
両手を突っ張り、俺から逃れようとする蓮海にちょっとだけ傷つくが、ここは強引にでも連れて行かなければ。
下心はない、ほとんど、あまり。それはもう湯気が出そうなほどに真っ赤になった蓮海に、ちょっと強めに言い聞かせる。
「いいから! 足、挫いたんだろ? 少しだけ我慢しとけって!」
「で、でもぉ……みんな見てるよぉ……」
「ふふんっ役得だな」
「もぉぉぉ!!」
ついには手で顔を隠して、イヤイヤと首を振り出してしまった蓮海。恥ずかしさの限界を超えてしまったようだ。
確かに視線は集まっているが、我慢しよう。別に悪い事はしていない……よな? もしかしてこれも痴漢になってしまうのか?
「しっかし蓮海、よく足を挫くな?」
「う、うるさいよ! ばかっ! ばかぁ! もぉ……」
やっと大人しくなった。相変わらず顔を隠しているが、とりあえず逃げる事は止めたらしい。
まだ午後の部もあるんだから、ちゃんと処置しておかないとマズいって。
しかし回した手に蓮海の温もりが……やば、今更だけどちょっと緊張してきた。
「……ねぇ」
「ん? どした?」
「……く、臭くないよね?」
「臭いって……なにが?」
何を蓮海はビクビクしているんだ? 臭いって、湿布とかの話か? それは我慢してもらうしかないな。
でも俺、実は湿布の匂い好きなんだけどなぁ。
「だ、だから! あたし臭くないよね!?」
「う~ん……? いや、蓮海はむしろいい匂いだけど」
「か、嗅がないでよっ!! もうばかっ!」
急に両手を解放したと思ったら、ポコポコと俺の胸を叩いてきた。
開かれた顔、頬は真っ赤で目は潤み気味。気温のせいもあるのだろうが、耳まで真っ赤になってしまっている。
「なんでだよ!? 蓮海が嗅げって言ったんだろ!?」
「言ってないよ!? 変な事いわないでよ!」
もう意味が分からないと、胸を叩かれ続けながらも救護テントに駆け込んだ。
そこにいたのは陽乃姉様。事情を話すと大層お喜びで、大げさなほどに褒めてくれました。
頭を撫でてくれたんだけど、手を頭に置かれた時は握りつぶされるのかと思って恐怖した。
保健の先生に蓮海を任せて一段落。さすがアタシの弟! っと訳の分からない事いう陽乃姉さんと一緒に、テントと出ようとした時だった。
「――――く、九郎くん」
蓮海に声を掛けられ振り向いた。モジモジしてキョロキョロと視線を彷徨わせる蓮海を見て、よほど恥ずかしい思いをさせてしまったかと若干後悔する。
「あ、ありがとう……」
「いいって、困った時は~って奴だよ」
「……九郎くんで良かった」
「まぁ俺しかいなかったからなぁ~、気づけて良かったよ」
「……そういう事じゃないのに……」
どういう事だ? まぁ深い意味はないか、知り合いで良かったという事だろう。
「また、助けられたね」
「そういえばそうだな、ほんとよく足を怪我するお姫様だよ」
「……九郎くんは、お姫様がピンチの時に助けに来てくれるヒーローみたいだね」
な、なんて恥ずかしい事を!? いや嬉しいけど、隣の陽乃姉さんが笑うのを我慢しているのがムカつく。
ヒーロー顔じゃない事は俺が一番分かってるよ!
「ま、まぁとにかくお大事にな!? 午後、無理はするなよ?」
「……うん!」
蓮海は最後の最後でやっと笑顔を見せてくれた。
ほんと、嫌がってたらそうしようとばかり頭を過ったが、行動して良かった。
【お団子】
【おにぎり】
【お好み焼き】
な、なんだこれ? 食べ物? あぁそういえば次はお昼休憩だな。
いやでもお団子だけ違和感…………そういう事か。
「そういや蓮海、お団子ヘアー似合ってんじゃん」
「ほんと? ありがとう!」
ここまで変われば流石に気づくが、気づいても伝えなくてはダメだよね。選択肢様々だな、みたらし団子が食べたくなってきた。
今日の俺、結構主人公っぽい活躍をしているんじゃないか? 選択肢のお陰とはいえ、大分自信が付いてきたように思える。
しかし……腹へったな。
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次回
→【教室から弁当取って、わざわざ外に出て、昼食】




