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第1話 安易なメッセージの結果

第ニ章です

宜しくお願い致します

 





 ――――ピコンピコンピコンピコン。


 中間テストに向け、流石に勉強していたある日。


 赤点回避をせねば夏休みも消えるし、お小遣いも消える。それだけは避けねばならないとの必死な思いで俺は、机に噛り付いていた。


 しかし数十分前から、俺が見ていたのは教科書ではなくスマホだった。


(……送信っと……よし、勉強再か――――)


 ――――ピコンピコンピコンピコン。



 春< ところで空手の見学って、いつ行けるかな?

 九< いつでも大丈夫、休みは水曜だけだよ。でもまずは中間テストだ。


 夏< それより脇谷いいんちょ~、体育祭の準備っていつからだっけ?

 九< 来月末からだったような気がするな。だがまずは中間テストだ。


 秋< そう言えばアルバイトですが、いつ頃からがいいですか?

 九< 任せるよ、俺はいつでも大丈夫。けどまずは中間テストだ。


 冬< それと次回の麻雀だけど、予定はあるのかしら?

 九< 基本は五郎丸さんからの誘い待ちだよ。しかしまずは中間テストだ。



(……送信。勉――――)


 ――――ピコンピコンピコンピコン。



 春< もしかして、勉強中だったかな?

 九< そうだ。赤点だけは絶対回避せねばならん。


 夏< 委員長って頭がいいイメージなんだけど!?

 九< 偏見だ。世の中にはお馬鹿な委員長もいる。


 秋< 来週からテストですもんね、もうバッチリですか?

 九< まさか。勉強がバッチリな事は一度もない。


 冬< テストなんて、あんなものどうとでもなるじゃない?

 九< ならん。どうとでもなるほど俺は賢くない。



(送信!! ちょっとぶっきらぼうに送ったし、これで静かになるだ――――)


 ――――ピコンピコンピコンピコン。



 ……うるせえぇぇぇ!! 三分間で活動限界宇宙人ヒーロー並みにうるさい!!


 なんで女の子って返信が早いんだ!? しかも4人なんてキャパオーバーだ、とてもじゃないが捌ききれん!


 でも喜んでいる自分がいる。通知切ればいいだけなのに切れない!


 だってしょうがないじゃん! 女の子とのメッセージなんてした事ないんだもん! お母さんくらいだもん!


 うるさいと思いつつ、通知音がなると嬉しいんだ。終わってほしくないと思う反面、勉強がぁぁぁ……!!



 春< 良かったら、勉強見てあげるよ?

 夏< じゃあさ、一緒に勉強しよ~よ?

 秋< 勉強でしたら、教えられますよ?

 冬< まぁ勉強なら、見てあげるわよ?


 九< マジで!? ぜひお願いします! ×4



「――――っあ!?」


 何も考えずに送ってしまった。色々な意味で嬉しくて、つい。


 大丈夫だよな……? 別に二人きりで勉強しようとは書いてないし、他の人と勉強するなって言われた訳でも……ないし。


 最悪、一日ごとにローテーションすれば。我ながら最低な事を言っている気がしないでもないが、まだ一週間以上もある訳だし。


 なんか、浮気している気分になってきた。本命は誰だ? そもそも俺は誰に言い訳しているんだ?


 勉強を教えてもらうとの約束をしただけだ。なんて事はない――――と考えていた翌日に事件は起こった。



 ――――――――

 ――――――――



 何事もなく終わるはずだった次の日。さぁ帰って勉強だ、図書館なんて選択肢が出たらそれを選ぶのも面白そうだと思っていた放課後。


 央平に別れを告げ家に帰ろうと教室を出たら、やけに廊下がザワついていた。


 人だかりのようなものもあるし、誰か有名人でもいるのかと言ったレベル。興味がない訳じゃないけど、人混みをかき分けて進むほどの熱量もない。



『誰か待ってるの? 呼んでこようか?』

『ううん、大丈夫。ここで待ってるから』


『いいじゃん! ちょっとだけ遊びに行こうよ?』

『一人で行けばいいじゃない。私は用事があるの』


 人だかりは二つで男が多いなと思ったが、どうやら女子生徒を囲んでいるらしい。


 こんな扉の近くに人だかりを作られると迷惑なんだが……しかし気のせいか、聞き覚えのある声だったような。


 まぁ俺には関係ない、輝かしい夏休みを得るために勉強だ! っとスルーして人だかりを通り過ぎた時、両腕が引っ張られる感覚がして足を止めた。



「ねぇ九郎くん、どこに行くの?」「ちょっとクロー、どこに行くのよ?」


「えっ……なんだ、蓮海とトーリか」


 左手を蓮海に、右手をトーリに掴まれていた。正確には制服の裾になるかもしれないが、俺を引き留めるには十分すぎる破壊力だった。


 裾を掴まれ見上げられる、それも美少女に。勉強なんてどうでもよくなった。


 しかし二人はニヤける俺とは対極的に、どこかムスッとしている。



「なんだ……ねぇ。そんなこと言うんだ」

「ごめんなさいね、私なんかで」


「え……い、いや! そういう意味で言った訳では……!!」


「「じゃあどういう意味?」」


 どういう意味って、引っ張られた感覚に振り返ったら知り合いがいたから、なんだお前らか……という意味だったんだが、おかしかったか?


 なぜ責められている、なぜ突っかかる、なぜ不機嫌そうな顔をする!?


 ともかく何か言わなければ。彼女達に群がっていた男子生徒からの視線がヤバイ。



「い、いや……だから――――」


「――――お~い脇谷く~ん、待ってよ~」

「クーちゃん、置いて行くなんて酷いです」


 教室から出て来た愛川とアキ。


 その二人は蓮海とトーリが俺の制服の裾を掴んでいるのを確認すると、露骨なまでに表情を変化させた。


 愛川は珍しくもつまらなそうな顔をし、アキは似つかわしくないほどに眉間に皺を寄せた。



「脇谷君、ウチと勉強するって言ったよね?」

「クーちゃん、どういうことですか?」


「え……いや、勉強……どういう事……だろうね?」


 輪に加わる愛川とアキ。いつの間にか蓮海とトーリの手は裾から離れていたため、逃げようと画策するも……。



「九郎くんの勉強はあたしが見るよ?」

「ここは副委員長のウチに任せてっ!」

「クーちゃんと約束したのは私です!」

「本当かしら? 約束なら私もしたわ」


「あの、みんな……もうちょっと静かに……」



「「「「なら誰と勉強するの?」」」」


「そ、それは……」



 壁際に追い詰められ4人に囲まれては逃げられない。俺を放っておいて会話を始めた4人に静かにするように言うも、逆に窮地に立たされてしまう。


 傍から見れば羨ましく見えるのだろうか、彼女達の奥から人を射殺せそうなほどに鋭い視線が俺に飛んでくる。


 悪い状況とは、得てして更に悪い状況に転がりやすいものである。


 いや嬉しいんだけど! なにもこんな廊下のド真ん中でェェ!!


 やはり選択肢が出なかったせいだ、出ていれば正解の選択肢を選んだはずなのに。


 そうやって神に責任を押し付けていると、神の怒りを買ったのか恐ろしい選択肢が眼前に現れた。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【終盤の選択肢】

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