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月姫・酒神月乃

おまけ

一応、サブヒロイン扱いなので

 





 おかしい、絶対におかしい。


 おかしいのは私の兄、酒神公太の事だ。


 別に兄さんに大きな変化は見られない。性格が変わった訳でも、環境が変わった訳でもない。


 では何が変わったのか、それはまだ分からない。でも間違いなく、高校二年生になってから何かが変わったのだ。


 性格でも環境でもない。言うなれば設定だろうか……? おかしな事を言っている自覚はあるが、兄という設定が変わってしまったかのようである。



 思えば初日からおかしかった。


 いつも朝起こしに来る、幼馴染の夏菜さんが起こしに来なかった。


 夏菜さんだって人間だ。そういう日もあるだろうし、逆に言えばこの変化は二人の関係性を進めるイベントの一つだったのかもしれない。


 でも次の日も、夏菜さんは起こしに来なかった。


 兄さんに聞いても分からないと言う。夏菜さんに聞いてみろと言っても嫌だと言う。


 夏菜さんとの関係について、何の選択もせず何の行動もしない兄さん。現状維持と言えば聞こえがいいが、一歩後退してしまった事に気づいていないのだろうか?



 そしてその日、私は兄の変化に関係しているかもしれない一人の先輩と出会った。


 新入生である私達に、学園内を案内するために設けられたオリエンテーション。


 それには一クラスに付き二年生の先輩が一人、補助に入るらしい。こういうイベントに選ばれるのは兄さんの得意分野、恐らくいるのだろうと辺りを見渡した。


 最初に目についたのは、綺麗な黒髪で優しい微笑みをしていた蓮海先輩だった。


 その人を見て確信する、隣には絶対に兄さんがいると。


 こういう、特別なオーラを発している人は兄さんに寄って来る。夏菜さんも秋穂さんもその中の一人。


 学校が変わり、高校が変わり疎遠になった人もいる。その人達の代りだと言うかのようなヒロインの登場。この高校生活ではどんな事を巻き起こしてくれるのかと胸を躍らせた。


 しかし蓮海先輩の隣には、凡人がいた。凡人と言うのは流石に失礼か、ごめんなさい先輩。


 脇谷九郎先輩。最初の印象は、パッとしない脇役みたいな人。イケメンかと聞かれれば……私の基準は兄さんです。


 ――――どうしても、蓮海先輩の隣にいる脇谷先輩には違和感しか覚えなかった。



 とはいっても進んだイベントは取り戻せないので、これからの行動次第となるのでしょう。


 そのため私は、主人公である酒神公太の妹として、兄にイベントを起こしてあげました。


 妹から兄への、お使いのお願いイベントです。


 ちょっとコンビニに行ってくると言った兄さんに、駅前まで行って買い物をしてくるようにお願いをします。


 少しだけ嫌そうな顔をした兄さんを見送り、タイミングのいい所で兄に電話をしてイベントを誘発します。こうすれば、なぜか兄はイベントを起こしてくれるのです。


 主人公みたいな兄さんの事ですから、今頃は新しい出会いイベントでもしているだろうと思った時。


 兄さんは普通に、ネギと納豆を買って帰ってきました。


 少し早い気がしたので直球で聞きました、出会いはあったかと。


 何を言っているんだと言う兄さん。電話を掛けた時どこにいたのかと聞くと、雀荘の近くという如何にも何か起こりそうな所にいたと言う。


 ……なぜ何も起こらない? なぜ何も行動しない? なぜ何も選ばない? なぜ主人公をやめようとする?


 オリエンテーションには来ないし、幼馴染の朝イベントは消失させるし、アルバイトをしたいと口だけで行動しないし、新たな出会いも起こらない。


 まるで兄が脇役になったかのよう。それが普通なのかもしれませんが、兄さんとしては普通ではなく異常です。



 …………

 …………



 おかしい、絶対におかしい。


 昼休みに兄さんの様子を見に行った時の、二年C組の教室は異様な光景と空気を醸し出していました。


 四人の先輩。四季姫と呼ばれる美少女たちが、一堂に会していたのです。


 その中心にいる人物は酒神公太ではなく、あの脇谷九郎だったのですよ。


 兄さんの姿を探せば、数人の男女に囲まれてはいましたが、他のクラスメイトと同じように呆けた顔をしていました。


 なんというリアクションを……それでは本当に脇役みたいではないですかっ!


 囲んでいる人たちの中にはイケメンも、美少女も確かにいました。顔だけ見ればそこまで大差はないように思えますが、脇谷先輩を囲んでいる四季姫と比べるとヒロイン度(存在感)が圧倒的に違います。


 なぜヒロインたち(四季姫)が囲んでいるのが主人公(酒神公太)ではなく、脇役(脇谷九郎)なのでしょう。


 脇谷先輩。なるほど、興味深いです。


 しかしこれは、何かが狂ったとしか思えません。それなのに兄は特に何とも思っていない様子です。


 気づいてからでは遅いと言うのに……いいでしょう、それならば私が協力して差し上げます。


 主人公の妹は、お節介なのですよ。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【鳴り止まぬ通知音】

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