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夏姫・愛川夏菜

 





 あ~、高校二年の初日から最悪だぁ~。思いっきり寝坊してしまった。


 目覚ましのアラームはセットし忘れたし、お母さんは起こしてくれないし、隣に住む幼馴染は一人で先に行ったようだし!


 いつもウチが起こしに行ってあげているのに、ウチが寝坊した時くらい起こしに来てよ!


 ……いや、実際こられたら色々と見られるわけだし、恥ずかしくて死んじゃうけど。


 ともかく急がないと! まだ急げばギリギリ……間に合うかなぁ?



 そうして家を飛び出した時だった。玄関の扉を開け放つと同時に、隣の酒神家に誰か勢いよく駆けこんで行った気がした。


 公くんのお母さん? まさか公くん? 忘れ物でもして取りに戻ってきたり?


 あり得る、公くんならあり得る。公くんはそういう何かを起こすタイプの人。ウチも昔からそれによく巻き込まれてきた。


 思えば公くんと登校しない日というのは、初めてかもしれない。というか、初めてだ。


 自分でも公くんとは不思議な繋がりを感じる。公くんはいつだって気が付けばウチの傍にいて、いつだってウチの事を助けてくれた。


 ウチはそんな公くんに恋心を…………抱いていないんだなぁ~これが。


 なんだろう? しっくりくる言い方をすれば家族。関係性で言えば兄と妹……かな? 実際、公くんには妹がいて、ウチも同じように扱われている気がするし。


 近すぎたのかなぁ~? それに公くんの周りには何故か女の人が集まるから、そういうバトルに参加するのは遠慮したいし、遠慮してきた。



 なんて、幼馴染は負けヒロインだ~と馬鹿な事を考えて走っていた時、彼と出会った。


 我が目を疑った。急いでいるウチとは対極的な人がいたんだもん。ある意味、公くんみたいな事をする人だと思った。


 なんでこの人は、桜を見上げながら春の陽気に中てられているのだろう。


 もしかして時計を見ていない? 遅刻するとは思っていない? だとしたら大変だ、教えてあげなければと近づいた時だった。



『桜咲く~、舞い散る花びら、いとおかし』


 ……え? なにそれ? ウケるんですけど? 遅刻ですけど? ただの陽気な俳句野郎だったんですけど?


 しかし彼の考えに共感したウチは、あり得ないほどノンビリ登校し、当たり前のように遅刻した。


 そんな彼とは同じクラスに、これは一年間面白くなりそうだな~と思っていた時だった。


 息を切らした公くんの登場。やっぱりあの時のあれは、公くんだったんだ。


 そうこうしている内に、彼は荒木先生に引きずられていった。それを苦笑いしながら追いかけるウチと公くん。


 ……おい、なにか言う事はないの? なんて考えれば、公くんは何故かウチの望んだとおりの事を答えてくれる。


 でも、今日に限ってはそれがなかった。いつもの公くんらしくないけど……まぁ、いいか。


 分かりました~、もう起こしに行かないからね!! ずっと起こしに行っていたのに、何も言わないし聞かないんだ? その程度だったんだ? 後悔しても遅いんだからねっ!


 何かが変わったような感覚を受けながら、ウチは始業式を終えた。



 その日の午後、友達である連山秋穂と公くんと一緒に商店街に来ていたウチは、窮地に立たされていた。


 窮地……ではないけど。ただのナンパ、慣れたものであしらい方も心得ていた。


 隣には去年から四季姫と呼ばれるほど綺麗な秋穂がいるから、男が寄って来るのは仕方ないんだけど。ちなみにウチも呼ばれてるよ! イェイッ!


 でも今回の男達は、ちょっとしつこかったんだよね。断っても引かないし、挙句の果てには腕を掴んでくるし、ナンパじゃなくて痴漢じゃん!


 でも正直、心配はしていなかった。なんと言っても近くには公くんがいる。


 公くんって、こういう時はなぜか必ず助けてくれる。一度や二度じゃない、何度もだ。ここまでくると、公くんと居るせいでナンパされると思う程に。


 またいつものように、公くんがやってきて助けてくれるだろうな~と思っていた。



『ア、アイカワしゃん!? お、お困りですかねぇ!?』


 もう、やっと来たか幼馴染……!? あれ、脇谷君じゃん!? え……あれ? 脇谷君じゃん!?


 驚いた。そこにいたのは公くんではなく、衝撃的な出会いを果たした彼だったのだから。


 脇谷九郎君。最初の印象としては、何を考えているのか分からない変な人。イケメンかと聞かれれば……顔が全てじゃないよっ!


 公くんと同じ匂いがするのに、幼馴染じゃない彼。



『おおりゃ空手やってんだじぇ!? か、かか勝てると思ってんだが!?』


 公くんのようにスマートだったとは言い難いけど。

 それ故に私達を絶対に助けるんだと言う想いが強く伝わってきて。

 言い慣れていないのか言葉を噛んでいる彼がひたすらにカッコよく見えて。



 ――――やっぱり何かが、ウチの中で変わったような気がした。



 …………

 …………


 ……へぇ~、脇谷君って意外と、モテるんだ~。


 四季姫が勢ぞろいとか、これはちょっとなぁ……。


 公くんのようにずっと傍にいた訳じゃないから、脇谷君の事はほとんど何も知らない。


 だから知りたいと思ったし、脇谷君が学級委員長に選ばれた時、勇気を出して副委員長になるように仕向けたんだけど。


 これは……ウチって出遅れている……? 何か他の三人には、学園外での脇谷君との繋がりがあるっぽい……。


 が、学園だけのウチはどうしたら…………まず、脇谷君の事を名前で呼んじゃう……?


 く、く、くろ……む、むむむりぃぃぃぃぃぃ!! 恥ずかしい!! めっちゃ恥ずかしいよっ!!


 だめ、いま絶対真っ赤になってる! 今のウチを見ないでぇぇぇ!!


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【秋姫】

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