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第19話 冬との出会い

麻雀はお好きですか?

マニアックな麻雀話はしないようにします

 





 一階の営業フロアに俺はやって来た。


 時間的に仕事帰りのリーマンなどが多い時間帯だからか、卓はほとんどが埋まっており、面子を探している雰囲気の人はいなかった。


 一応アルバイトの方に聞いてみたのだが、今は面子を探している人はいないらしい。



「う~ん、そんな都合よくいかないか」


 一部とはいえ住宅スペースに他人をいれるのだから、ちゃんとした人を選んだ方がいいと思う。五郎丸さんはそういう所が適当だし、八千代さんだと逆に男が寄ってきそうだし。


 俺は……まぁ女性の方がいい。竜さんのように、背中が煤けてるぜ、が口癖の渋い男性なら歓迎だが。


(まぁ、雀荘に女性は滅多に来ないんだけど)



 なんとなく、雀荘の外になら誰かいるのではないかと思い外に出てみた。


 雀荘と言えば中々入りづらい雰囲気もあり、興味はあっても入って来られない人は大勢いるのだ。


 もし興味深そうに様子を窺っている人でもいれば、という軽い気持ちだったのだが。


(…………んん!? マジかよ? 公太じゃん!!)


 私服姿の公太が、雀荘にほど近い場所で誰かと通話していた。足は完全に止まっており、どこかに向かおうとしている様子も見られない。


 もしかして公太は雀荘、麻雀に興味があったり……? ではないにしても、公太であれば人柄的にも何も問題はない。


 一応声を掛けてみようと、公太に向かって足を進めようとした時だった――――



 【雀荘に戻る】

 【公太に話しかける】

 【目についた人に話しかける】



 ――――本当に、偶然だった。


 公太と俺の間を横切った人のスクール鞄に、身に覚えのあるキーホルダーが付けられていたのだ。


 それは俺がプレイしている麻雀ゲームの公式キーホルダー。とある大会イベントの上位入賞者に特典として与えられた物であった。


 ちなみに俺はいい所まで行ったのだが、天敵である冬SORAとの対局に負けて、上位入賞を逃していた。



「――――あ、あの! 麻雀お好きなんですか!?」


 選択肢に背中を押され、自分でもビックリするほどの勇気を出して声を掛けた。


 声を掛けた理由はあるとはいえ、傍から見ても彼女から見てもタダのナンパだ。


 俺の声に反応して振り向いた彼女の顔は、怪しい者でも見たかのように歪んでいたが、目の前の雀荘に気づいたからだろうか? 立ち止まり話を聞いてくれるのだった。



 …………

 ……

 …



「――――お、お前……よくこんな美人をナンパできたな?」


 彼女を連れだって南雲夫婦の元に戻ると、開口一番そう言われた。


 あの後、彼女も麻雀が好きな事が分かり、一緒に遊ばないかと誘ったのだ。


 流石に怪しんだようで断られたが、彼女が着ていた制服は俺と同じ四風学園のもので、俺が同じ生徒だと分かると、そこからはトントン拍子だった。



「なっ……! そんなんじゃないっすよ! 彼女も麻雀が好きだって言うから!」

「いやでも、まさかこんなに若い女性が……それに高校生だろ?」


「ちょっとアナタ? 黙っていてくれる?」

「え、でも……あ、はい」


 八千代さんに睨まれた五郎丸さんが大人しくなる。五郎丸さんに代わって、柔らかな雰囲気を持った八千代さんが彼女に話しかけた。



「初めまして、私は南雲八千代です。そっちのが五郎丸と言いまして、九郎ちゃんは……血の繋がってない息子ね」


 こんな時でも息子アピールをする八千代さんに呆れるが、そのお陰で場が和らいだのか、僅かに微笑みを携えた彼女がゆっくりと頭を下げた。



「私は向空冬凛(むかいぞらとうり)と申します。本日はお誘い頂き、ありがとうございます」


 亜麻色の髪をサイドテールにしている向空さん。肩の前で結んでいるから、確かルーズサイドテールとか言ったはずだ。


 切れ長の釣り上がった目は涼しげで、俺より低いものの身長も高いせいか、とても凛々しく見える女性。とても同じ高校生とは思えない。


 なんだろう。立てば芍薬、座れば……みたいなアレ。多分、こういう人の事を言うのだと思う。


 まぁ言いたい事は、やっべー美人だって事だ。なんでこんな美人に声を掛けられたのかが不思議でしょうがない。



「こちらこそありがとう。麻雀が好きって九郎ちゃんが言っていたけど、ある程度は出来るのかしら?」

「はい。と言ってもゲームでの経験だけで、雀卓は初めてです」

「それなら大丈夫よ。全自動だし、色々教えるわ。良ければ今後も仲良くしてくれれば嬉しいわね」

「ありがとうございます。凄く……実際に牌を触って打つのには興味がありましたので、私も嬉しいです」


 話が纏まった所で、なぜか八千代さんにウインクされた。どういう意図があってのウインクなのか分からないが、これで面子は揃った。


 八千代さんと五郎丸さんが飲み物などを準備しようと動いたのを確認して、俺達は先に卓に座らせてもらう事にした。


 俺から見て下家に座る向空さん。座るだけの仕草すら美しく、見惚れてしまっていると目が合ってしまう。



「九郎くんも、ありがとう。いい経験をさせてもらえるわ」

「い、いやいや! こちらこそありがとう! ごめんな、急に声を掛けたりして」

「ふふっ、そうね……正直、ナンパだと思ったわ」

「だ、だよな……」


「でも同級生だし、あの麻雀ゲームの事も知っていたし。それに九郎くんオドオドしてて、ナンパ慣れしているとは思えなかったもの」

「オドオド……そりゃ、向空さんみたいな美人を前にしたらたじろぐだろ……って、同級生なのか!?」


 マジかよ。同級生って事は同い年って事……信じられない、完全に先輩なのだと思っていた。向空さんに比べたら俺なんてガキじゃないか。



「冬凛でいいわ。同い年なんだし、私も名前で呼びたいから」

「なっ名前で呼びたい!? 何ゆえ!?」


 え? えっ? そういう事だろ? 勘違いしちゃうぞ!?


「呼びやすいじゃない、クローって」

「あ……なるほど、ですよね。えと……じゃあトーリで、いい?」


「ええ、よろしく、クロー」

「ああ、よろしく、トーリ」



 落ち着いていて、綺麗に微笑むトーリ。礼儀正しいし、とても同級生とは思えないほどに大人っぽくて、話しやすい。


 そんな彼女が、数時間後……あんな姿をさらす事になるとは夢にも思っていなかった。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【あンた、背中が煤けてるぜ】

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― 新着の感想 ―
個人的には麻雀は好きだったのである程度深い話(何切る、場況等)になってもついていけるのですが、このジャンルの話を読む人は麻雀をあまり経験されてない人が多そうですね… ちなみに私は四麻派です。鳴きを気に…
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