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最終イベント・その七






 二日目の朝。俺は目の下に軽く隈を作った状態で、朝食を食べていた。


 昨夜のキス騒動、公太から衝撃的なカミングアウトをされた影響で、全く眠れなかったのである。


 公太はしていないと言ったが、俺は誰かに押し倒されてキスされたのは事実。となれば、彼女である六人の誰かにキスされたとしか思えない。


 あの子の性格的にそんな事はしないだろうとか、あの子ならあり得るとか、電気が消える前にいた場所とか、色々な事が頭を駆け巡ったが答えは出なかった。


 そうこうしている内に窓の外が明るくなり、鳥の鳴き声が聞こえてきた辺りで、限界を迎えて眠りについてしまったらしい。


 どちらにしろ、俺のファーストキスがなくなった事に変わりはない。やはり最初は特別なものだとは思うが、そんな事より彼女達との関係を一歩進める事の方が重要だ。


 彼女達だって色々と考えているだろうし。最初というものが無くなったのだから、少しは変化があるとは思うのだが。



「……お前、大丈夫か?」

「ん? ああ、大丈夫だけど」

「ご飯粒、めちゃくちゃ服についてるよ?」


 一緒に朝食を取っていた公太と央平が、俺の様子を見て心配そうに声を掛けてきた。


 朝食は大きな広間でのバイキング形式となっていたのだが、女性陣の姿はなかった。


 約束していた訳でもないので、女性陣はこれから食べるのか、食べ終わったのか。男と女では朝の準備も色々と違うだろうし。


「そんなんで今日、遊べんのかよ?」

「別に運動する訳じゃないし、ちょっと眠いだけだから大丈夫」

「今日の自由時間、どうするか決めてるの?」


 公太が口にした通り、今日は夕食まで自由時間となっていた。


 東森さんは部屋に籠り、昨日撮影した写真などのチェックを行うらしいので一緒には行動しない。


 俺は彼女達と周辺を観光するつもりだった。部屋にあったパンフレットに、温泉街からさほど離れていない場所に、色々と観光スポットがあるらしいし。


「俺はみんなと色々と見て回るつもりだけど……二人は?」

「俺も零那と見て回るよ?」

「お、俺も一応、四葉先輩に声を掛けた」


 公太は当然だが、央平も様子を見るに上手くいったようだ。まぁカップルのデートを邪魔しないようにとの西河先輩の判断かもしれないが、なんとなく西河先輩も央平に気があると思わなくもないし。


 その後、進展があったら報告という話などを行い、食事を済ませて俺達は部屋に戻った。


 出かける準備を早々に終わらせた俺達は旅館のロビーに移動し、女性陣を待つ。


 最初に現れた大陰さんと公太が外に出て行き、それに続いて西河先輩と央平が外に。


 人数が多い我がグループは当然のように最後。揃ったのを確認し、気合を入れて来たであろう服装を褒めちぎり、可愛いを連呼。


 俺はこれを、普通のカップルの四倍も五倍もしなければならない。みんなが機嫌よくなってくれたのならばいいが、疲れるのは疲れる。



 ――――

 ――

 ―



 彼女達を連れ添って、一先ず温泉街を散策する事に。


 注がれる視線は中々に多かった。カップルや家族連れ、老夫婦など例外なく俺達を興味深そうに見つめてくる。


 しかし俺達は慣れたもので、さほど気にならなくなっていた。


 左には腕を絡めたアキがいて、右には手を握っている春香。二人も彼女がいるのか!? と周りが驚けば、次の瞬間には左に夏菜、右にトーリが。


 これも最近は見慣れた光景だった。彼女達は特殊能力でも得たのか、言葉にしないでスムーズにローテーションしているのだから驚きだ。



 しかし本人達が気にならなくても、やはり周りは気になるもの。男一人に女性が複数のお友達グループは割と見るが、彼らの様子はそれとは違う。


 どうみても、仲の良いカップルそのものなのだ。女性が四人という事以外に、おかしな所は何もない。


 一人の男性を取り合っているといった様子は見られない。みんな仲良く、みんな笑顔。当たり前のように他の女性に男性を譲り、男性も特に気にしている様子がない。


 どういう事? と周りが変化しても当人たちはお構いなし。周りなど全く目に入っていないように見えた。



「月乃ちゃん。大丈夫でしょうか? 大した事ないって言ってましたけど」

「旅行中に風邪をひくとか、ついてないわね。あれだけお風呂に入ったのに冷えたのかしら?」

「ちょっと熱が出ただけみたいだよ。陽乃さんが付いてるから、大丈夫だとは思うけど」

「色々とお土産買って行かないとね! つっきーと陽乃姉の好みは把握済みだよ!」

「……絶対ノーパンだったせいだ」


 え? まだ他にいるの? なんて更に周りを驚かせてくれたご一行は、記念撮影をしてくれるお店に入っていった。



 ――――

 ――

 ―



 記念撮影をしてくれるお店に入ってきた、五人の……カップル?


 店員が驚いているのに気付いているのかいないのか、自分達の世界を展開し始めていた。


「おっ? これとかトーリに似合うんじゃない?」

「そう? ちょっと……大きすぎない?」

「そういうもんなんだよ! 案外トーリに似合うと思うよ」

「そ、そこまで言うなら……」


「これは夏菜だな!」

「おお! なんか意外なチョイス!?」

「たまにはいいんじゃない? そういう夏菜も見てみたい」

「そこまで言うなら、見せてあげなくもない!」


 一瞬にして背の高い女性を赤面させたかと思えば、ニコニコと元気そうな女性の笑顔をワンランクアップさせている。


「春香春香! これ、着てみて!」

「え、えぇ!? こ、これを着るの?」

「うん。これは春香にしか似合わない。絶対に可愛い」

「わ、分かったよ。でも笑わないでよ?」


「アキは~……こういうのいっちゃう?」

「下心が満載の服ですね? えっちです」

「アキは露出が少ないと思うんだよ。そこがいいんだけど、たまにはさ」

「他の人に見せちゃダメですよ? クーちゃんだけですからね」


 流石にそれは無理という表情の女性が、可愛いの一言で即落ち。それ着るの!? と店員が驚く中、彼のためならと完落ちの表情の女性が服を手に取った。


 こりゃ間違いなくカップルだ。ただ彼女が四人いるだけの普通のカップルだ。普通って何なんだろうなと、彼氏のいない店員は思った。



「お、お決まりですか~? ではこちらで着替えましょうか」


 女性店員に連れられて彼女達は奥へと進んで行った。俺が選んだ衣装に着替えて、これから写真撮影をするのだ。


 特殊な衣装も選んだが、基本的に普通な衣装のはず。ただせっかくだから。あまり着ないであろう服装をチョイスさせてもらった。


「えっと~……か、彼氏さん? 彼氏さんは着替えますか?」

「いや、俺はいいっす」


 受付をしてくれたお姉さんが、未だに信じられないと言った表情で話しかけてきた。


 受付をした際、カップル割なるものがあったためそれでお願いしたのだが、あの時のお姉さんの苦笑いは忘れられない。


 そこまで厳しくないようだから、カップル割を認めてくれたのだろうけど、本当にカップルだとは思っていなかったんだろうな。


 それが衣装を選ぶ辺りで、違和感を覚えたのではないだろうか? 彼女達の表情や、雰囲気がマジモンのカップルだと。


「では彼氏さんは、先に撮影室に向かいましょうか」


 店員さんに連れられて、俺は一足早く撮影室に進み、彼女達が来るのをドキドキしながら待つ事に。


 どのくらい時間が掛かるのだろう? トーリとかは早いだろうが、春香は時間が掛かるだろうな。ちょっと悪かっただろうか?


お読み頂き、ありがとうございます

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