最終イベント・その六
色々とあった混浴風呂騒ぎも収まりを見せ、今は夕食中。
今日の夕食は部屋食のため、男三人での食事となっているのだが、混浴風呂とは絵面がえらい違いである。
向かい側に座る央平は浴衣が開け、見たくもない布がチラチラと視界に入る。斜め隣に座る公太は、流石のイケメンっぷりではあるが、別に嬉しくもなんともない。
先ほどまでは、央平を筆頭に混浴風呂の事を根掘り葉掘り聞かれ、月ちゃんの話になった時の公太の目が厳しくなり、大変疲れた。
月ちゃんは少し休んだらすぐに元気になったようで、一安心だ。
「でも女性陣は大変だよな~。今も撮影しながらのメシなんだろ?」
「そうみたいだな。まぁ料理の撮影がメインだって言ってたけどな」
「撮られているってだけで、変に緊張したりで食べづらいと思うよ」
あの東森さんの事だから、その料理まだ食べないでっ! とか変な注文が入ったりしているのではないだろうか?
彼女達も疲れているだろうに。のんびりと食事をしているのが申し訳なくなってくるな。
「今日はゆっくり休んでもらって、明日も色々とフォローした方が良さそうだね」
「そうだな。明日は今日みたいにガッツリ撮影って事はないと思うけど」
「そんな事よりさ~、これで終わりって事はないよな!? 女子と温泉旅行に来てこれで終わりって事はないよな!?」
口元に米粒を付けた央平が、身を乗り出して叫んだ。
夕食を食べ終えたらもう一度風呂に入って、後は就寝。移動の疲れもあり、皆そう考えているであろう中での発言は続いた。
「女子と温泉旅行に来て、これで終わりはないだろ!? 見張りの先生もいないんだぞ!? 終わりはないだろ!?」
気分は先生がいない修学旅行生なのだろう。気持ちは分からないでもないが、今日はみんな本当に疲れたと思うんだ。
一応、成人したお目付け役はいるし、まぁ俺は彼女達と一緒に風呂に入れたし、今日はもう満足かな。
「公太! お前だって彼女と少しくらいなぁ!? したいよなぁ!?」
「お、俺は零那と少しだけ散歩でもするつもりだったけど……」
「……だめ。散歩するならみんなでしよう」
「だめって言われても……央平も西河先輩と何かすればいいじゃないか」
すでにグループが出来上がっている今回の旅行。央平だって西河先輩の事が気になるから誘ったのだから、みんなで遊ぼうではなく、勇気を出して西河先輩を誘えばいいのだ。
西河先輩も、全くその気がないなら誘いに乗らなかっただろう。ただの遊びではなく温泉旅行、それも二泊なのだから。
「公太の言う通り、西河先輩を誘ってみろよ」
「そうそう。ちょっと軽く話しませんか~って」
「……断られたら気まずいじゃん! 初日だし、明日も明後日もあるんだから!」
そんな女々しい事を言う央平にため息が出るが、そういえば俺もそのタイプだな。
なぜかいい返事を貰えた時の事は頭に浮かばず、断られた後の関係性ばかり想像してしまう。今回のような、逃げ場のない所での行動はかなり勇気がいるのかもしれない。
まぁでも、央平だしな。
「めんどくせぇやっちゃな! 当たって砕けろや!」
「砕けたくないわ! 他人事だからって適当言うな!」
「ま、まぁまぁ二人とも。とりあえず女性陣に聞いてみたらどうだろう?」
そう公太が言うものだから、公太は大陰さんに、央平は西河先輩にメッセージを送った。
俺は一度も使った事のない、交際関係にある七人の部屋にメッセージを送った。
――――
――
―
「――――中学三年の中間テストで、五科目の合計が13点でした!!」
なんて恐ろしい事を大声で叫んだのは、ババ抜きで最後までババを所持してしまった央平。
浴衣姿の彼女達は大変可愛らしく、いつもと違う雰囲気にドキドキでもしてしまっているのか、男連中は全員が下位でのフィニッシュだった。
あの後メッセージでやり取りをして、男部屋に集まって少し遊ぼうという話になり、最初に開催されたのがトランプだった。
まぁただトランプするだけなのは面白みに欠けるので、負けた人はトップで上がった人が出す命令に従うという事になったのだ。
今回トップだった大陰さんが出したお題は、過去の恥ずかしい失敗。それを最下位の央平が暴露した訳だが。
「……やば」
「平均、2.6点って事?」
「10点満点のテストですか?」
「逆に天才なのかもしれないわ」
「本物の馬鹿って初めて見ました」
「アンタ、よくウチの学園に入れたわね」
「ご、ごめんなさい。私が変なお題にしたせいで……」
「あ、あはは~。すごいね、央平君……そこまでなのか」
「取ろうとしても取れる点数じゃないっす」
「というか、お前にとっては通常で、なにも恥ずかしい事じゃないだろ」
「きっと名前を書き忘れたんだよ。四科目……」
驚く子、引いてる子、申し訳なさそうにしている子など、様々な反応をする面々。みんなの注目を集められて嬉しいのか、当の本人はヘラヘラとしている。
フォローにもならないが、そのテストは60点満点だったので、そこまで致命的な馬鹿でなないはず……いや手遅れか。
「ちなみにその時の九郎の合計は?」
「俺は~そうそう! 50点じゃすと……はっ!?」
いつもの気軽な感じで聞いてきた夏菜の声に、反応してしまい点数を暴露してしまった。
俺は最下位じゃないのに、なんで恥ずかしい思いをしなければならないのだ! 央平のネタ的な点数ならまだしも、50点ってかなりアレだ!
「「「「…………(反応に困る……)」」」」
「量産型の馬鹿は面白くないですよ」
「アンタ、ウチの学園卒業できるの?」
「え~と……え~と……こ、公太く~ん……」
「……噂で聞いたんだけど、背後の馬鹿なんとかって本当だったんだ」
「流石、脇谷先輩の息子っすね」
「……さ、さぁみんな! もういいから! 次の勝負と行こうよ!!」
変な雰囲気になってしまったところを、公太が気を利かせて強制的に進行させる。
果たして助かったのか? ここはしっかりと説明をした方が良かった気がする。彼女達の目が可哀そうな奴を見る目に変わってるもん。
「……ねぇ、大丈夫かな? あたし達の馬鹿れし」
「ま、まぁ馬鹿でもなんとかなるよね」
「私達がついてますから、馬鹿でも大丈夫ですよ」
「そうね、馬鹿でも別にいいわ。私達が養ってあげれば」
「馬鹿と天才は紙一重っていいますが」
「確実に馬鹿の方じゃないの」
聞こえてるっつーの!! こそこそ話してるつもりだろうが、どっかの姉妹は普通の音量で話してるし。
馬鹿馬鹿と馬鹿にしやがって! そんな馬鹿の彼女になったはどこのどいつだっつーの!
憤ってババ抜きを再開。十人以上のババ抜きとか、ほんと時間が掛かってイライラするぜ!
なんてプンプンしていると、彼女達の魅惑から抜け出せたのか、俺は上手いことトップで上がる事ができた。
最下位が決まってからのお題では面白くないという事で、トップが決まった時にお題を発表するルール。
だがしかし四分の三の確率で最下位は女性だ。みんな可愛らしく美しい女性だ、なんて割のいいゲームなのだろう。
男が出すお題なんてピンク色に決まっているだろう。
「……馬鹿にしやがって。お題は~……下着の色を詳細に暴露して頂きます!」
それを言った時の女性陣の非難の声と言ったらもう……心地よかった!
当たり前のように嬉しがる央平。公太はやめろとか言い出すかと思いきや、意外にも何も言わなかった。ムッツリだったんだな、公太。
圧倒的女性率。高確率で最下位は女だろう。その内半分以上が俺を馬鹿にしてくれた我が彼女達。
彼女に恥をかかせる彼氏など本来ならダメだろうが、これはゲームだからな。
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