最終イベント・その五
カメラを手に、怪しい笑みを浮かべた男が入場。誰がどう見ても犯罪者、第三者が目撃でもしようものなら即通報であろう。
しかしなんと合法なのだ。カメラを持って温泉に入れる男がどれほどいる事だろうか。
旅館への許可と、貸し切りの手筈は東森さんが行ってくれたらしい。これで誰にも邪魔されずに撮影できる。
若干の湯気はあるが、視界は良好。彼女達はタオルを巻いているという事だが、全体像が見えれば高校生の豊かな想像力もって、タオルなしの姿を見る事も可能。
「ふふ、隠しても無駄だじぇ……」
さて、いよいよ彼女達の姿が見え始めた。何やら楽しそうに談笑しているようだが、すぐ近くにカメラを持ってニタニタした男がいると知ったら、どんな反応をするだろう。
慌てて逃げ出す? 必死になって体を隠す? 大声を出して助けを呼んじゃったりする? いやいや、これは彼女達の許可があっての事だ。
ならば見せてもらおう。隠しても無駄だ、俺の想像が隠された部分を補完してくれる。
「目標をセンターに入れてスイッチ……とりあえず動画でいいか」
録画開始、彼女達のリアクションが楽しみだ。
準備万端。恋愛ゲームのように、都合のいい湯煙などないぞ!
そして視界に入る四人。みんな髪を上げており、わずかに上気した顔が色っぽい。
普段は見る事が出来ない姿。この姿をみる事が出来ただけでも、来て良かったと心から思う。
そして湯から頭を出している両肩。なぜこうも湯から出る肩は扇情的に見えるのか。
しかし目的は、その更に下である! タオルで隠そうが、我が想像を持ってすれば…………ん?
「……なんだ? なにも見え……乳白色!?」
湯、まさかの不透明。目がボヤけている訳でも、レンズが曇っている訳でもない。お湯が濁ってやがる!!
なんという濃度、一分の隙も無く隠されている。これではいくら妄想豊かな俺でも、脳内補完させる事は不可能だ。
「なんてこった……俺の女体補完計画が……」
「いきなり叫んだと思ったら、何を言ってるの?」
「どうせえっちぃ事だよ! 女体とか呟いてたし」
「ニヤニヤしてると思ったら、急に肩を落としましたね」
「どうせ、温泉が乳白色で残念だとか、そんな所でしょ」
「……いや、まだだ。まだ俺にはメモリーがある」
夏、彼女達の水着姿を思い出せ! あれだって露出的には同じようなもんだろ。なんなら水着の方が露出が多いじゃないか。
……馬鹿な! どうして想像できないんだ!? 取れない! どうしても水着が取れない!!
「なんだこの水着!? なんで脱げないんだ!?」
「……ねぇ、目を瞑ったと思ったら、今度は水着とか言い出したよ?」
「脱げないとか脳内で何をしようとしてんの? なに想像してんの?」
「元気になったと思ったら、急に怒り始めましたね。ちょっと怖……」
「どうせ、温泉がダメなら水着姿を思い出そうとか、そんな所でしょ」
「記憶ではダメなのか!? えぇいもどかしい!」
どんなに念じても取れない水着、手を伸ばしても届かない。
あと少しなのに、どうしても届かない。あんなに近くにあった水着が、今はなぜこうも遠いのだ。
「……ねぇ、今度は悲しそうな顔しながら手を伸ばし始めたよ」
「ちょっと可哀そうになってきたかも。何したいのか知らないけど」
「もう、仕方ないですね! ほらクーちゃん、こっちですよ」
「秋穂、その前に掛け湯よ。カメラは置いておいて……まったく、世話が焼けるわね」
「ありがとう……あぁ、あったけぇ……」
彼女に手を引かれ、温泉に浸かったら疲れなんか吹き飛んだ。
なんかもう、どうでもよくなってきたな。タオルとか水着とか、バカバカしい。
見えないから、想像がかきたれられていいんじゃないか。
みんなのいつもの違う髪型、妄想捗る肩より下、もう十分ですな。
「いいお湯だよね~、美肌効果もあるらしいよ」
「マジ!? 混浴のくせにやるじゃん!」
「美肌……そういえば混浴って乳白色が多いですよね」
「そうなの? 混浴なんて初めてだから分からないわ」
美肌効果か~、そう言われれば肌スベスベ。
きっと彼女達の肌もスベスベなんだろうな。触れられないのが残念だ。
(……いや待てよ? 触れられない? なんで触れられないんだ?)
「この後のお料理も楽しみですね」
「でも部屋食なんでしょ? 皆でワイワイ出来ないのは残念だね」
「明日の夕食は部屋食じゃないみたいよ」
「なら明日は彼氏君にあ~んしなきゃ」
(そう彼氏君だよ! 彼氏君なら触れてもいいんじゃないのか!?)
「また春香は、すぐそういう事を言う」
「でましたね、どさくさ春香ちゃん」
「どさくさの事前宣言とか、流石だね」
「え? みんなはしないの?」
「「「いやするけど」」」
反応を予想してみよう。
九郎< 触っていい?
春香< き、急になに!? ど、どうしてもって言うなら、いいけど……。
夏菜< にゃにゃにゃ!? そ、そんなのダメ! 恥ずかし過ぎる!
秋穂< いいですよ、どこでも触って下さい。
冬凛< は? 嫌よ。まぁ……皆がいない所ならば、考えなくもないけど。
……アキだな。君に決めた。
「ねぇ、そういえばつっきーは? 温泉に入るって言ってたよね」
「絶対ここにいると思ったのですが、いませんね」
「混浴じゃなくて、普通の方にいったんじゃないの?」
「わざわざ宣言したんだから、何かあると思ったんだけどね」
さりげなく、下心などないように、自然に会話に加わりつつだ。
ゆくゆくは聞かなくても自由に触って大丈夫な関係になりたい。
「それより秋穂、そろそろ場所かわってよ!」
「冬凛さんも! 場所交代!」
「仕方ないですね~」
「はいはい、どうぞ」
よし、言うぞ。アキなら大丈夫だ、いつも通りなら雰囲気も悪くなることはないはず。
「きゃっ! ちょっと夏菜、変な所触らないでよ」
「冬凛って細いのに大きいよね、ムカつく」
「春香ちゃんも、凄く柔らかいですよ~」
「ちょ、ちょっと秋穂さん! あまり触らないで!」
「ア、アキ! お、おお俺も触っていい?」
「「「「…………」」」」
……おや? なんかみんな、静まり返ったぞ?
俺も混ぜて貰おうと思っただけなのに、会話に。
「……えっと、どうぞ? でも私の方が大きいですよ?」
「どうぞじゃないよ! でも触るならあたしのにして!」
「これだから男は! どうせウチは小さいですよ~だ……」
「……なんで春香よ? その流れなら私のでもいいじゃない」
よく分からないが、みんな言い合いを初めてしまった。
「私が触ってもらいます。私のが一番大きくて、触り心地がいいですし」
「大きさより形だよ! 形には自信あるもん!」
「なら両方を兼ね備えた私が触ってもらうべきね」
「……あなた達さ、ムカつく会話すんなよ。このサイズにも需要あんだぞ?」
しかしこの雰囲気なら、なんとなくオッケーが出そうだ。ここで攻めるしかない。
本命のアキに頼むか、一か八か夏菜か。
ちょっと頭がボーっとしてきて視界が揺れ始めたが、ここでやらねば男じゃない!
【ハーレム補完計画】
【安全本命補完計画】
【大穴狙い補完計画】
そうだな、贔屓よくない。
「じゃ、じゃあさ……みんなのを、触っていい?」
「「「「みんなのを触る!?」」」」
真っ赤になった四人が慌て出す。その表情からかなり驚いているようだが、もはや引くに引けん。
なんて強引にでも触れてやろうと覚悟を決めた時、奥にあった岩場の影から人が出てきた。
どうやら先客がいたようで、俺を含めた全員は固まってしまい冷や汗を流した。
しかし現れた人物は、よく見知った人であった。
「しぇんぱ~い……私のも、しゃわって下しゃぃ……うきゅぅ……」
それは顔を真っ赤にして、呂律が回らない程に逆上せてしまっている月ちゃんだった。
立っているのもキツかったのか、風呂に沈みだした月ちゃんを四人が慌てて引き上げる。
タオルなど纏っていなく真っ裸。色々と見えてしまったが、本人のためにも見なかった事にしよう。
その後はバタバタ。月ちゃんを介抱する四人の指示に従って、水を持ってきたりと走り回った。
撮影の事なんてスッカリ忘れ、なんならカメラを風呂場に忘れ、東森さんには怒られ、公太や央平には呆れられ、陽乃姉さんに殴られ。
まぁ、いい思い出になりました。最初に見た彼女の裸が月ちゃんだったのは、少し意外。
……小さいのも、いいなぁ。
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