最終イベント・その三
忙しい確定申告時期が終わったので、ボチボチ再開します
「――――や、やっとついた……」
電車を乗り継ぎ、揺れに揺られる事……数時間。
初めはみんなテンション高めで、若干の騒がしさもあり周りに申し訳なくもあった電車の旅は、やっと終わった。
最後の方はみんな静かなもので、春香とアキに至っては俺の隣で爆睡する始末。春香はなんとなく起きていた気もするが、寝ている可能性もある春香を起こしてまで代わってと言う子はいなかった。
「みんな、お疲れ様」
自分の荷物を背負いこみ、姉妹の荷物を両手に持っている公太くん。文句をいう事もなく普通にしているが、酒神家では当たり前の事になっているのだろうか?
まぁ特に大きな問題もなく目的地に着いた。とりあえず旅館に向かう事になってはいるのだが、迎えが来ると言う話になっている。
ここは御津郷にある朱木温泉街。そこの最寄り駅に到着した俺達は、現地で合流する事になっている人を待っていた。
到着の連絡をした時の電話口から聞こえてきた声は女性のものだったが、随分とテンションが高いなと思ったのは内緒だ。
そろそろ来るはずだと待っていると、向こうからそれっぽい人が近づいて来るのが見て取れたのだが……え?
あの人……寒くないのかな? 温かそうな上着を羽織って入るが、ショートパンツを穿いており脚がガッツリ露出しているのだが。
なんだろう? なんとなく待ち人がこの人であってほしくない。まぁでも、遠目から出でも分かる、美人なやつやん。
「みなさんお疲れっす! 脇谷ご一行様でよろしかったっすよね?」
小さな願いも虚しく、やはり待ち人であったお姉さん。
月ちゃんや陽乃姉さんと同じくショートカット。キャップが恐ろしく似合っているボーイッシュな人だ。
綺麗な人だけど、どこか中性的な容姿のせいか男性と言われても驚かないぞ。
「僕は東森七緒って言うっす! 今回のみなさんのアシスタントとかをさせてもらいまっす!」
そうハッキリと申した東森さん。僕……? 七男……? やはり男性か……?
「よろしくお願いしま~す。あの、東森さんって男っスか?」
流石だ央平。少し聞きづらい事でも躊躇なく聞ける所は尊敬する。でもだからダメなんだと思う。隣にいる西河先輩が微妙な顔をしているぞ。
「男に見えるっすか!? こんなに美人でスタイルもいいのに! 正真正銘の女っす!」
危ない。当然だがやっぱり女性だった。人柱になってくれた央平は、周りの女性達から厳しい目で見られている。
どこからどう見ても女性じゃないか。本人申告の様にスタイルがいい。
身長はまぁ高め、トーリや陽乃姉さんより低いけど。胸は……大きいな! アキや陽乃姉さんよりは小さいけど。
でも脚は素晴らしい美脚! 流石にこの季節に露出するだけはある。まぁ俺は夏菜の脚の方が好きだけど。
「まったく失礼っすね! そこの男子を見てみるっす! めっちゃ脚に視線を感じるっすよ! こんな美脚の男がいるっすか!?」
そう言って東森さんが指をさしたのは、俺。舐めまわす様に見ていたせいか、指摘されてしまった。
その途端に周りから厳しい目が。央平の時以上に視線が厳しい気がするのだが、気のせいだろうか?
「その足フェチどうにかならないのかな? 節操なさすぎだよ」
「綺麗なら誰でもいいだね。なら好きなだけ見ればいいじゃん」
「こんなにたくさん侍らせておいて、まだ足りないのですか?」
「不快、不愉快。彼女の前でよくそこまで堂々と出来るわね?」
「身体的特徴で差別を図るのは、褒められた事ではありません」
「九朗って足フェチなの? それなら蹴り飛ばしてあげるわよ」
いっせいに反応を見せた彼女達。厳しい声、目、雰囲気。蔑みから暴力沙汰まで取り揃ってる彼女達の前では、不用意な行動は危険だった。
公太カップルは我関せずと明後日の方を向いており、央平カップル(仮)は面白い物でも見ているかのような笑顔をしている。
誰も助けてはくれそうにない。当たり前なのだが、本当に外の女性に対する行動に対する彼女達の反応がキツイ。
「そ、そういう意味で見ていたんじゃない! この微妙に寒い季節、なんで脚を出してんだろって思ってただけだ!」
我ながらナイスな言い訳だと思う。もっともらしい理由だし、この時期に脚を出していたら誰でも見てしまうでしょう。
「だからって見ていい理由にはならないよ」
「嘘つき! 鼻の下をのばしていたくせに」
「別にそこまで寒くないですし、普通です」
「言い訳とかみっともないと思わないの?」
「珍しくはありますが、変ではないですよ」
「だから九郎って足フェチなの? 踏む?」
これはダメだ、どんな理由であれ許してはくれないらしい。しかしちょっと見ただけでここまで機嫌が悪くなるとは、この先が思いやられる。
ここは黙って謝ろう。その前にせめてもの復讐だと、東森さんの事を軽く睨んだ時だった。
「あ~確かに寒いっすね。今日、実はタイツを履き忘れてしまったっすよ」
悪びれもせずにそういう東森さんは、太ももをポンポンと叩きながら理由を話し始めた。
露出狂じゃなくドジっ子だった彼女だが、どんな理由であれもう遅い。
そんな微妙に彼女達の目が厳しい中、とりあえずは昼食をという事で東森さん案内の元、まずは昼食をとレストランへと向かうのであった。
――――
――
―
昼食、そして自己紹介などを終えた俺達は、今後の事についての話しをしていた。
東森さんが色々と説明し、それに対して俺達は質問をしたり肯定したりする形だ。
今回の旅行、それを成立させた親父の会社との取引。簡単に言えば今親父たちが携わっている、この朱木温泉街での仕事を手伝えって事だ。
「じゃあ予定通り、みんなには朱木温泉街のPR動画に出演してもらうっす!」
現在親父のチームが行っているのが、この朱木温泉街のPR活動なのだとか。
温泉街のPR動画やパンフレット、ホームページの作成や様々な施設の宣伝など、一手に引き受けているそうだ。
その事もあり、温泉宿の宿泊券がビーチコンテストの商品になったそうだが。
「親御さん達に許可を頂いているとはいえ、上手い事編集して顔バレはしないようにすしますから、そこは安心して欲しいっす」
事前に彼女達の親には、親父が今回の事を説明して了承を得ていた。なにか契約書のようなものを交わしたそうだが、そこらへんはよく分からん。
ともあれ親と本人が良いと言うのならば、とりあえずいいのでは……ないか?
「動画って、どんな所を撮るんですか?」
「温泉街を歩いている所とか~、浴衣を着ている所とか~、足湯とか~」
春香の問いに笑顔の東森さんが答える。
「なにか喋ったりするの?」
「ないっすないっす! どうせ後でBGM付けるんで、声は出しても大丈夫すよ」
夏菜の問いに冗談顔をした東森さんが答える。
「撮られてるって思うと、緊張しちゃいそうです」
「大丈夫っす! 自然な感じが欲しいんで、隠し撮りみたいな感じで撮るっす!」
アキの呟きに盗撮顔をした東森さんが答える。
「やっぱり、温泉に浸かっている所も撮るんですか?」
「もち、それは絶対っす! 誰だか分からないようにするから大丈夫っすよ~」
トーリの問いに悪戯顔をした東森さんが答える。
「動画が好評だったとして、再生数に応じた報酬は頂けるのですか?」
「え? そういう事は知らね」
月ちゃんの要求に真顔の東森さんが答える。
「男どもは? 参加しないわけ?」
「男なんていらねっすよ。そんな温泉街の動画やパンフ、誰が見るっすか」
陽乃姉さんの問いに怒顔の東森さんが答える。
色々な質問に、色々な表情を見せながら答える東森さん。男の俺達は撮影には参加しないため、黙って聞いているしかなかった。
とりあえず俺が言いたい事は、編集する前の動画データが欲しい。
「パンフ用の写真撮影の時は、ちょっとポージングをお願いするかもっすけど、基本は自然体で大丈夫っす」
どうやら本当に盗撮するつもりらしい。いつもどおり自然体で勝手に楽しんでればいいとの事だが、それだけで本当にいいのだろうか。
まぁ、実際に動画やパンフレットになるのは女性陣なのだ。俺が何か言えた義理ではないが、とりあえず出来る限りのフォローはしようと思った。
そして一行は昼食を済ませ、宿泊先となる温泉宿へと向かうのであった。
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