最終イベント・その二
シルバーウィーク、初日。
集合時間の朝早く、駅前に集まった総勢……11人!
俺、公太、央平。春香、夏菜、秋穂、冬凛。月乃に陽乃。そして今回は公太の彼女さんである大陰さんも参加している。
全部で……おっと、一人忘れていた。
「本当に私も参加していいのかな~? 私だけ大学生だし」
「い、いいんすよ四葉先輩! 俺がどうしてもってお願いしたんですから!」
張り切る央平だが、それも仕方がない。
西河四葉。何を隠そう央平の好きな人で、現在は大学一年生のお姉様だ。
おっとりした感じの眼鏡女子。どうして眼鏡を掛けていると知的に見えるのだろう。
まぁ西河先輩は前生徒会長だった人だから、勝手に頭がいいっていう刷り込みでもあるのかもしれないな。
「なんでこんな事になったのよ? 二人きりの旅行じゃなかったのかしら?」
「いや……どうせならみんなでね? 思い出を作ろうと……」
微妙に不機嫌そうな、現生徒会長の陽乃姉さん。姉さんも頭はいいはずなのに、生徒会長なのにどうして知的に見えないのだろう?
もしかして俺と二人っきりが良かったのかと勘繰ったが、後から聞いたら団体行動が嫌いなそうです。
生徒会長なんてやってるのに団体行動が嫌とか、なんかおかしくないだろうか。
「じゃあみんな! 準備はいい? そろそろ電車が来る時間だよ」
旅行が決まってから念入りに打ち合わせをした結果、スケジュール管理を公太に任せる事になった。
こういう事は得意そうだし、何より男連中はこの旅行中は様々な雑務を行わなければならないのだ。
我が父親との取引により、旅行費用を親父の会社持ちとなったために実現した団体旅行。
宿泊費と交通費以外は自分達で出すのだが、それにしたって何とも魅力的な旅行なのは間違いない。
「向こうの駅で担当の人が待ってるんだっけ?」
「ああ、そうらしい。向こうに着いたら電話するって話になってる」
いつの間にか隣にいた夏菜。そのまま自然な流れで腕を絡ませ始めた。
夏は誰よりも薄着なくせに、今日は誰よりも厚着な気がする。夏大好き元気少女は寒いのが苦手なのだろうか?
「トーリは逆に寒さに強そうだよな? 吹雪の中でも微笑んでそうだ」
「誰が雪女よ? 私だって寒いのは寒いわ」
若干不機嫌そうな声を出しながら唇を尖らせるトーリだったが、徐に近づいて来るとそのまま腕を絡ませた。
夏と冬に挟まれてしまったが、俺的には春や秋の季節の方が過ごしやすくて好き……おっと、あくまで季節や気温の話だ。
そんな中、俺が望んでいる季節はというと……。
「……向こうに着いたら交換だからね。電車の席もあたしが隣だからね」
「二人とも気が付けばいつも腕を組んでますよね。油断も隙も無いです」
まぁご機嫌斜め。春香はいつも通りだが、アキが珍しくも厳しい目で二人を睨みつけている。
でも彼女達、何か決まり事でもあるのかローテーションで俺にベタベタしだす。俺が順番とか考えなくても、向こうが調整してくれるから助かる。
「……ねぇ央平君。あの子達……どうなっているの?」
「ああ、アレは気にしなくて大丈夫です。というか、この旅行中は嫌ってほど見ると思うんで、慣れて下さい」
「えと……酒神君と大陰さんは雰囲気的にアレだよね? あの子達は?」
「あの子達も……雰囲気的にアレだと思います」
友人の彼女を紹介するのが、これほど難しいとは思わなかった央平。自分達は慣れたものだが、彼女が四人も五人もいるとか……正直伝えにくい。
ここはご想像にお任せしようと央平は考えた。
「九郎先輩。ちゃんと私の事も構ってくれないと拗ねちゃいますよ?」
「拗ねる? 月ちゃんが? ないでしょ、想像できないわ」
「もういいです……先輩のばか」
「お……え!? うそうそ! そんな顔しないで!?」
ここで月姫のカットイン。さっきから何かを狙っているような動きをしていたが、これ以上に説明のしづらくなる事態になるのは困る。
あの月乃の表情を見るに、本当に拗ねたのだとは思えない。しかしそれに気づかない九郎は、夏菜たちから腕を放して月乃を追いかけに行ってしまった。
「ご、ごめんって! 謝るから!」
「……別に、なんとも思ってませんけど」
「そんな顔で言われても……ど、どうしたら許してくれる?」
「そうですね。では、旅館での部屋は私と同室という事で」
ほれ見た事か。月姫の行動には全て理由がある。なんの考えもなしにあんな顔や態度を取る訳がないのだ。
ちょっと拗ねた振りをしただけで、頭一つ抜け出した。腕を組むだの席が隣などとは訳が違う。
「へ、部屋はさ? 男同士、女同士……」
「もういいです……先輩のばかばか」
「ああ! 分かったから! 俺でよければ一緒に――――」
「「「「――――いいわけねぇだろっ!!!!」」」」
吠える四季だが、どう見ても月の方が上手の様子。四季が月に勝っている光景がまるで浮かばない。
まぁ勝てるとしたら……。
「アンタ達、ふざけた事を言わないの。九郎と同室はアタシよ?」
「「「「は、はぁ!? なんでですか!?!?」」」」
「姉さん。いくらなんでもそれはないです。彼女として認められません」
この陽姫くらいなのだが、この姫の場合は……。
「――――黙れ」
「「「「「…………」」」」」
「そもそもね? アタシと九郎の旅行なのよ? アンタ達はくっ付いてきただけ」
有無を言わせぬ圧倒的感。なにが圧倒的なのか……全てである。そんな化け物に勝てんよ。
「で、でも! 彼女でもない女性と二人で同じ部屋なんて認められません!」
「そうだそうだ! 横暴だぞ陽乃姉! ブーブー!」
「どうしてもと言うなら、せめて私達も同室を求めます」
「二人きりはダメです。絶対に認められません」
「み、みんな。ちょっと冷静に……」
もはやあの男の声は届いてない。届いていたとしても、もはや彼の意見や願いなどは聞き届けられることはない。
本当に彼氏なのだろうか? ガツンと言ってやればいいのに……無理か。
「九郎」
「は、はい」
「アタシと付き合いなさい」
「は……なんだって?」
「アタシもアンタの彼女になるわ。いいわね?」
「い……いやいやいや! ダメだって! だ、だめだって!」
「いいわね?」
「だから……だめだって……」
「いいわね? あと三」
「あと……三?」
「いいわね? あと二」
「なんのカウントダウン!? やめてよ!?」
「い、い、わ、ね? あと……一」
「わ、わかった! 分かったからカントを止めて!!」
怖い。あのカウントが零になっていたら、どうなっていたのだろう?
しかし九郎の奴、また彼女が増えた。あんなに綺麗な酒神先輩と付き合えるなんて……なんでだろう? これに関しては羨ましくない。
「これで問題ないわね? ちゃんと彼女になったのだから」
「「「「「…………」」」」」
今、なんとなく分かった。
酒神先輩って、どことなく九郎の母親に似ている。外見じゃなくて、性格というか雰囲気が似ている気がする。
どこかで男は母親に似たような人を選ぶとか聞いた事があるけど、それなら九郎は最終的に陽姫を選ぶのだろうか?
いやぁ、ないな。あんなに怖がっているし……なによりポッと出もいいとこじゃないか。
「……ねぇ央平君。あの子達……どうなっているの?」
「ああ、アレは気にしなくて大丈夫です。でも、見ていると楽しいと思うんで、楽しんでください」
「う、うん。まぁ……あまり関わらないでおくね」
四葉先輩は深く考える事をやめたようだ。恐らくそれが正解なんだとは思う。
始まる前からこれなのだ。この旅行も、面白い事が起こるのだろうと予感せずにはいられなかった。
「……ねぇ公太クン。私……影薄くないかな?」
「れ、零那はそれでいいんだよ! あんな風になられても困る!」
あちらのカップルも、アレらには深く関わらない事を決めた。
というか、いつの間に名前で呼ぶようになったのだ? 俺だって……この旅行で!
「ちょ、ちょっとみんな! もう電車来ちゃうから!」
時間には余裕を持って集合していたはずが、気が付けばギリギリになっていたという、スタート前の一悶着であった。
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