酒神公と大陰、恋の行方・その十
公太恋愛話 最終話
「え~と……か、彼女ができました」
四季姫と色姫によるコラボ発表も終わり、後片付けをした後に中庭で駄弁っていると、顔を真っ赤にした二人が仲良くやってきた。
……見れば分かる。仲良さそうに手を繋いで、見た事もないほどに赤面している二人。
周りを見れば会場に来ていた生徒なのだろうか、おめでとうだの野次を飛ばしている生徒が複数見受けられた。
「……ふざっっっけんなっ!!!」
先ほどまでは公太の成功を祈っていたはずなのに、今は何故か険しい顔をした央平が唾を撒き散らしながら怒声を上げていた。
央平の気持ちも分からないでもない。なんだろうこの、全開の幸せオーラは。
色々と乗り越えた二人というのは、ここまでの雰囲気を醸し出せるものなのだろうか。
「あ、いや……すまん。つい……なんかムカついて」
「う、うん。その、色々とありがとうね」
負の帝王である央平は幸せそうな二人を見て反射的に言ってしまったようだ。俺も彼女がいなかったら、あんな風になってしまっていたのだろうか?
人の幸せを祝えないとは。ああはなりたくないものだね。
「まぁなんだ。上手くいったんだろ? おめでとう」
「うん、九郎もありがとう。あの時、背中を押してくれて助かったよ」
あそこからどうやって大陰さんと付き合えるようになったのか興味があるが、あまりそういう事は聞くべきではないのだろうな。
まぁ間違いなく、二人のキューピッドは俺様であろう。
大陰さんはというと、春香たちに囲まれて色々と質問攻めされているようだ。
なにやら時折黄色い声が聞こえてくるが、公太はいったいどんな恥ずかしい言葉で彼女を落としたのだろうか。
「ねぇ九郎。俺にもさ、見えた気がするんだよ」
「見えたってなにが?」
「選択肢が」
「……マジで? 大丈夫か? 病院行った方がいいぞ」
「気のせいかもしれないんだけど、この前九郎に借りたクソげ……恋愛ゲームの選択肢が見えた様な気がしたんだ」
「クソゲーじゃねぇよ。神ゲーだろ」
なんでどいつもこいつもアレをクソゲーというのか。まぁ売り上げも悪く、内容も酷いととある掲示板で盛り上がったそうで、途中で投げ出す者が続出したらしいが。
俺からすりゃ、あのゲームのお陰で彼女が出来たと思っているのだが。
「あのゲームをやったから、彼女が出来たんだぞ?」
「え……そうなの? でも俺、バッドエンドにしか辿り着けなかったんだけど……」
「とことんハーレム素質がない主人公だな」
「……まぁ、実は大陰さんと話した時、ゲームのセリフを使わせてもらったんだけどね」
「ほれみろ! 大体だな、そもそもそのゲームの選択肢――――」
「――――九郎くん! 大変だよ! ちょっとこっちに来て!」
「九郎、早く! こんな事している場合じゃないのっ!」
「由々しき事態です。先輩だと思っていたら後輩でした」
「ほら、さっさと行くわよ。そしてさっさとするわよ」
「な、なんだお前ら!? いきなり!?」
公太と神ゲーについての議論が熱くなろうとした時、大陰さんと話していたはずの四季姫が急に現れ、有無を言わさず俺をどこかに連れて行こうとした。
流されるままに未だ騒がしい校内を突き進み、辿り着いたのはいつもの屋上。
この場所だけは施錠されており、文化祭真っ只中であるのに人は一人もいない。最近は少し寒くなってきた事もあり、来る事は減っていた。
四人に手を引かれ校内を走り回ったのだ。後で何を言われるか分かったもんじゃないぞ。
「それで、どうしたの? こんなに急がして」
「「「「…………」」」」
あれだけ急いだと言うのに、屋上に来てからその勢いがなくなってしまった四人。もしかしたら緊急かとも思ったが、そうではなさそうだ。
誰もいない屋上とはいえ、周りからは大勢のワイワイとした声が聞こえている。こんな雰囲気が何故か特別だと感じてしまった。
なんて言っても、若干の疎外感も感じていた。特に何もないなら、俺達もあれらに混ざってワイワイしようじゃないか。
「……なぁ、何もないなら出店でも回らない――――」
「「「「――――ちゅーしよう!?」」」」
「…………は? はぁ!?」
なぜそんな話に? そりゃ付き合っているんだから、する事はおかしな事ではないのだが。
四人という事もあり、中々踏み出せないでいた領域だ。俺もこの文化祭中に出来れば……なんて思った事もあったが、実行するとなると難しい。
だって四人もいるんだもん。絶対に揉めるでしょ、誰が最初かとかで。
「だ、だって零那ちゃんはもうしたって!」
「な……う、嘘だろ!? だってアイツらさっき付き合ったばかりじゃないか!?」
「嘘じゃないよ! あの雰囲気は本当だった!」
「そ、そんな……数時間前には告白失敗すらしたんだぞ!?」
「本当です。先輩風を吹かせるつもりだったのですが」
「という事は公太も……いきなり大先輩かよ!?」
「だから私達もしようって言ってるの。というかしたいの」
「そ、それはだな……色々と雰囲気とかあるじゃないか」
「「「「いいからするのっ!!!!」」」」
なんて手の早い主人公なんだ! 告白失敗してボケーって突っ立ってたくせに! 先輩として色々とアドバイスするつもりだったのに!
あの幸せ全開オーラはそういうことか!!
そして恐らく公太からいったのだろう! 流石だな! 俺とは真逆だ、俺は彼女から迫られている!
「お、俺だって好きな彼女としたい! でもな……でも……」
「い、未だに好きって言われるとトクンってするね」
「うん。もっと言ってもらいたいよね~」
「クーちゃんは少し少ないと思うんですよ」
「あまり多くても微妙だと思うわよ?」
暢気なものだ。頬を染めてニヤニヤする余裕があるようだが、これから俺が言う言葉にどんな反応を見せるか。
……予想がつく。コイツら仲はいいのだろうけど、自分が一番って想いは持っていやがるからな。
「……誰が最初にするんだ」
「「「「…………え?」」」」
「だから、誰が最初にキスするんだ?」
「「「「…………」」」」
ほれ見た事か。誰も口に出せないが、みんな我先にを狙っている表情だ。
俺が思った時にぶち当たった壁、最初の壁から高すぎた。どうしようどうしようと悩んでいた時にこれだ。
「……誕生日順であたしで」
「……五十音順でウチかな」
「……大きさ順で私ですね」
「……身長順で私がするわ」
口にしやがった。誕生日順や五十音順はまだわかるが、身体的特徴での順番と言うのはどうなんだろうか。
俺は選べない。というか選ばない。ここは彼女達に任せる、そう決めた。
「どうしよう? なにかいい方法ってあるかな?」
「難しいですね。みんな一番がいいのは分かってますし」
「一番を作るのがダメって事なら……」
「みんなで同時にしちゃえばいいんじゃない!?」
「同時は……厳しくない? 二人ならまだしも、四人だよ?」
「唇をむーーーって伸ばせばいけるよ!」
「むーーですか。なら私は中央付近にむーーします」
「むーーは嫌よ。なんでファーストキスがむーーなのよ」
「みんながむーーしている所は見てみたい」
「たしかに、むーーしている顔を見られるのは恥ずかしいかも」
「えっ!? キスって目を瞑ってするんじゃないの!?」
「四人同時にするんですよ? 目を開けてないと難しいです」
「というかそもそもむーーしても届かないわよ。タコじゃないんだから」
「なぁ、ちょっとトイレに行ってきてもいいか?」
「じゃあどうするのさ!? 他に伸ばせる所なんて……!?」
「……ありますね。伸ばせるところ。れろれろ」
「えぇ!? でもそれ、すごく……エッチくない!?」
「悪くないけど、それにそれを伸ばしている顔も微妙じゃない?」
「色々とすっ飛ばしたな。それにそれはキスじゃなくねぇか?」
「最有力候補はれろれろとして……他には?」
「もう流石に伸ばせる所はありませんよ?」
「伸ばす事から離れなさいよ。例えば目隠しをして……」
「も~れろれろでよくない? そんなに変わらないよ!」
「れろれろなら……公太より先に行けるか……?」
「……先輩方、何を馬鹿みたいな会話をしているんですか? というか、私を忘れないで下さいよ」
「「「「「あ……」」」」」
その後、ブレインを加えての作戦会議に突入。まぁこの子の事だから、何かは思い付くのだろう。むーーやれろれろ以外で。
とりあえず今日は、同時に頬にキスという事で落ち着きました。
お読み頂き、ありがとうございます
公太目線は投稿しようか迷ってます
ご想像にお任せでもいいかなと…




