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そんな事は言わない

 ブスか…

「…ねえチハル、あんたほんとは普通に家に帰って来たいんじゃないの?」

少し考えたような顔をして、チハルは「いや」と言う。

「それはねえよ。でもうまくやって行きたいとは思ってる。オレは高校の3年間はばあちゃんちに住むつもりだけど、中学の時みたいに姉ちゃんに出来るだけ関わらないようにしようとすんじゃなくて、これからはまた仲良くやっていきたいと思ってるから」

そうなんだ!

 そっか…それは嬉しい。私だって仲良くやっていきたいと思ってるよ!



 「じゃあさ、」と嬉しくなった私は言う。「なおさら土日はおばあちゃんも一緒にご飯食べに来たりしたらいいじゃん。私もおばあちゃんちに行ったりしてもいいのかな」

「そりゃいいよ。ばあちゃんも喜ぶし」

そっか!

「姉ちゃんすげえ嬉しそうじゃん」

「だってそりゃ…嬉しいよ。あんた大人になったじゃん。つっても半年しか違わないけどさ。すんごい反抗期、みたいな感じだったもんね中学の時。超感じ悪いクソガキだったじゃん。私あれがずっと続くと思ってたから」

「あんなもんでしょ」とチハルはしたり顔で言う。「中学生なんてあんなもんだよ気にすんな」




 「じゃあ帰るか」

ほら、という感じで私を促すチハル。

「あ~~、…私もうちょっとしてから帰るよ。…ちょっと本探してるから」

「本?」少しムッとするチハル。

「本」と私。

本じゃないけど。ヒロセ観るためだけど。

チハルがまた窓の外に目をやってから言った。「本当は待ってんの?ヒロセさんの事」

「待ってないよ!勝手に見てるだけだか…、」しまった。「いや、違うよ違う違う」

「やっぱ見てんじゃん。本探すとか言って。そんなに否定しなくてもいいよ。オレもじゃあ本探すから、姉ちゃんはゆっくりヒロセさん観たらいいじゃん。30分くらいしたら帰ろ。ヒロセさんと帰る約束までしてないんなら。それとも最後まで見てたいの?」

「してないし最後までは見ないよ」そんなのヒロセにバレたら気持ち悪がられそう。「そんな事言われたら見れないよ。恥ずかしい…もういいよ、じゃあ帰ろう」




 結局今日もチハルと家に帰る事になる。

 校舎を出て体育館の脇を抜けて校門へ回るのだけれど、その間に部活中の女子から結構見られる。

見られるっていうか、見られてるのはチハルだけど。

「なんかさ、」とチハルに言う。「うちの教室に私を見に来てた1年の女子がいたらしいよ。私は気付かなかったんだけど」

「へ~~…」

「なに気のない返事してんの?あんたを好きな子たちだと思うけど。すごいじゃん入学したてでそんな」

「それはなに?見に行かないようにオレに言え、みたいな感じで言ってる?」

「言ってない言ってない。そういうつもりでは言ってないよ。そんな事言わない方が良いと思うよ?別に何かされたわけじゃないし。私は気付かないくらいだったし。まぁ恥ずかしいけど…。あんたが人気あるんだなって話だよ。今も結構女の子たち見て来てたじゃん」



「姉ちゃんはそれが嫌なん?」

「嫌じゃないよ…弟が人気あるってちょっと嬉しい事だと思うし」

みんな外見だけで判断してるなとは思うけど。

「姉ちゃんはどう思ってんの?」

「え、だから今言ったじゃん人気あるって嬉しいって」

「そうじゃなくて」とチハルがふざけたように笑いながら言う。「オレの事を1個体として見て、姉ちゃんはどう思ってんのって事」

1個体?

 …男子としてって事?姉にそんな事聞くの?学校帰りに自転車置き場で?



 横で自転車を押しながら歩くチハルを少し睨みながら聞く。「あんた姉にそんな事聞いて恥ずかしくないの?」

「ほんとの姉ちゃんじゃねえじゃん」急に言い切るチハル。

「え…」

一瞬言葉を失ったら、ハハ、とチハルが笑った。「姉ちゃんすげえ気にするよな?そういうフレーズ」

「…」

「オレも恥ずかしいけど聞きたいから聞いてんの」

「…そっか。けどやっぱそんな気持ち悪い事聞かないでよ」

「気持ち悪い?」

「気持ち悪いっていうか…」



 どうしようか迷って、でも言う事にする。「ねえこれ黙っててよお母さんには。お母さんたぶんそういう感じの事心配してるっぽい」

「そういう感じの事って?」

「チハルと私が…言うのも恥ずかしいけどお互いを意識して好きになったりとかね、そういうの」

「オレは姉ちゃんの事好きだけど」

「へ!?」

チハルは笑っている。

「もう…。でもあんたがそんな事言って笑ってくれる日が来るとはね~~。しかも学校一緒に帰りながらとか。もうほんと、入学式まで想像してなかった」

「発言がもうババくせえな」

「だってあんた私に対する態度ひどかったよね中学の時はほんとに!」

「まぁな。あれはあれでしょうがなかった」

そっか…そうかもね中学生ってそういう親やキョーダイに対して反抗する時期かもね。私はそういうの無かったけど。



 チハルがピタッと歩くのを止めて言う。「なぁめんどくせえから2ケツして帰る?」

「二人乗り?しないよ!目立つじゃんそんな事したら。…いやマジでね、お母さん心配してんだってほんとは。あんたには聞かないかもだけど私にはいろいろ聞いてくんだって」

「いろいろって?」

「んん…あんたが入学式の日に私の部屋にいた時に何してたかとか。…これも言っちゃだめだからねお母さんに!え?言う?言わないでよ?お母さんも困ると思うから秘密だからね」

「言わねえよそんな事は」

 また歩き始める私たち。




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