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サキちゃんの妄想

 「来るよ~~」とサキちゃん。「今からもっと来るよ。アピールしなよチナも」

「何を!?」

「私の弟なんだから!みたいな」

「しないよ絶対しない。サキちゃんすごく面白がってるね」

「なんかさ、好きな男子のキョーダイとかに取り入って来る子が来たら怖いよね~~」

「そんな事までする子いないよ。マンガとかケイタイ小説の世界だよ」

「いるんだって。実際チナの事見に来てたじゃん。マンガ貸そうか?禁断のやつ」

「…いい」

「でも弟クンは完全にシスコンだと思うけど」

「違うよ。違う違う。中学の時はすんごい反抗期があったんだって」

「それもさぁ、お姉ちゃんの事が好き過ぎて反抗してたんだったらどうする?」

「…」

「見たもん。だって対面式みたいな全校生徒の前でも手ぇ振って来てさ、ヒロセと嬉しそうに喋ってたところにも無理矢理割り込んでったし」

「あれは…」

「結局ヒロセじゃなくて弟くんと帰ってたじゃんチナ」



 んん~…そうなんだよね。

 私はヒロセと行く気満々だったのに、いや、そりゃチハルの事も気にはなったけど。でもヒロセに『じゃあまたな』って言われちゃったんだよね…。

 でもその夜にラインでヒロセに、「今日はなんか弟が感じ悪くてごめんね。でもあいつ、いつもあんな感じなんだよ、ほんとゴメン」て送ったら、「いや、オレこそごめん。急に恥ずかしくなった!いろんな事話過ぎたかも。なんか良く考えたら告ってるみたいだったなって思ったら恥ずかしくてな?このまま二人で勉強とかしたらもうやべえと思って」と返って来た。

 ぎゃああああ~~~、とスマホを片手に心の中で叫んでしまった。

 『告ってるみたいで恥ずかしくなって』ってどういう事!?

 告られたと取っていいの?告られてたみたいだって取ったらいいの?嬉しいから告られたと取るけど私!!



 …そりゃ『みたいだ』の方だよね。だって本人がそう言ってる。

 でもそれで、『このまま二人きりになったらヤバい』って思ってくれたんでしょ?それはもう、やっぱり私の事が気になってるって取っていいんだよね?

「そんなこと言われたら私が恥ずかしいよ。明日ヒロセの前で変な顔しても、それはヒロセのせいだからね。おやすみ」と送った。

 ド恥ずかしいのを我慢して可愛い感じを前面に出してみた。『おやすみ』を付けたのも、この間ヒロセが私の『おやすみ』に反応して嬉しい事を言ってくれたからだ。あざとい私だった。



 でもその後ヒロセから返って来たラインは、「キモトの弟って、もしかして、オレがキモトを誘うのを邪魔したかっただけなんかな。姉ちゃんに似合わねえ近寄んなって、キモトの弟に思われてんじゃねえかと思って、ちょっと心配になってんだけど今」

「そうじゃなくて」と私は送ったのだ。「弟は私の事をずっと嫌ってたの。中学は離れた所に行ってて寮に入ってたんだけど、家に帰って来る事も少なくてるほとんど喋る事もなかったし。小6くらいからずっと、姉ちゃんなんて呼んでくれてなかったくらいあんま仲良くなかったんだよ。だから私のする事が何でも気に入らなくてまだ邪魔して来てるんだと思う。ごめんね、ヒロセにも気を使わせてしまって」

 ヒロセは「そんな事はねえよ。オレが勝手に気にしただけ」とまった送ってきてくれて、ヒロセの弟が、ヒロセのうちの柴犬を泡まみれになってシャンプーしている写真を送ってくれたのだった。

 可愛かったなぁ…柴犬もヒロセの弟も。チハルなんて全然可愛くない。




 「それもいろいろあるんだよ」と私はサキちゃんに説明した。夕べヒロセにもラインで送ったような事だ。

「『姉ちゃん』なんて向こうが小6の時には呼んでくれなくなっててさ。それが最近になってやっとまた呼んでくれるようになったんだよ。そういうのがあったから、また仲悪くなるのも嫌だなって思って」

「へ~~」とサキちゃん。「なんかますます興味深いけど」



 「なんかさ、ずっと仲良かったキョーダイがね」と語り出すサキちゃん。「ある日突然本当のキョーダイじゃなかったんだって知ってね」

「…」

今私、うちは仲が悪かったって言ったばっかだよね?

 それにうちは最初っから本当のキョーダイじゃないってはっきり認識できる小5と小4だったからね。


 サキちゃんは嬉しそうに続ける。「そこから急激に意識し始めんの」

「お互い本当はずっと好きだって思って、でも親に反対されたりとかさ、友達気にしたりとかさ。どっちかだけが好意を持って、でも相手は『ずっとキョーダイのままでいたい!』みたいなね。わざと違う人と付き合ってみたりね。すでにお互い付き合ってる子がいたりね。いろんなパターンがあるわけよ。邪魔もいっぱい入るわけよ。でも!最後には結局その人しかいないみたいなね、運命って感じでくっついちゃうんだよね~~~」

「…」

ね~~って言われてもな。


「私が一番萌えるのはね、」サキちゃんがじっと私を見ながら言う。「弟が姉を好きになるってパターンだな」

「…サキちゃん?」

「そして弟は姉をすんごい好きなんだけど、姉には気になる同級生がいるってパターンだな」

「サキちゃん止めてマジ止めて」

「もうオレは『姉ちゃん』なんて呼べねえよ!みたいなさ」

「うちは最近また『姉ちゃん』て呼び始めたとこだから」

「オレは『姉ちゃん』なんてほんとは1回も思った事ねえよ!みたいなさ」

 それは…その通りなんだろうな。

 だって本当の『姉ちゃん』じゃないの最初からわかってたから。



「1回さ、泊まりに行っていい?」とサキちゃんは目をキラキラさせる。「チナんち。見たいんだよね。弟クンが家の中ではどんな目でチナを見るのか見たいんだけど」

あ~~…一緒に住んでないからなぁ…

でもそれは今は言えない。それを説明するならまず義理のキョーダイなんだって事も話す事になるし。そうしたらますますサキちゃんの興味を引いてしまう。



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