表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/50

48話



曽川隆平。それが美月 梓の結婚相手だと夏弥が教えてくれた。

相変わらずテレビの中ではその話題が熱っぽく語られ、美月 梓の記者会見が今日の夕方行われると何度も伝えられている。

この騒動の内容で、今とりあえずわかっているのは、美月 梓が妊娠したわけじゃないって事だけらしい。

そして、彼女が電撃入籍した相手が『住宅会社の営業マン』ではないかと語られて、思わず夏弥を見上げた。


「ばーか。俺じゃねえよ。それは花緒が一番わかってるだろ」


テレビの前で棒立ちになっている私を背中から抱きしめると、私の肩に顔をのせた。

私のお腹の前で両手を交差させて、二人でテレビを見ながら嬉しそうに笑うと。


「これだけ世の中を騒がせる女よりも、俺は単なるOLだと言われてる花緒を愛してるんだ。

そんな俺が側にいることが、『住宅会社の営業マン』の正体が俺じゃないってわかるだろ?」


「うん……でも、じゃ、誰なの、ずっと噂されてる『住宅会社の営業マン』って。

前に、それは俺だって夏弥言ってなかったっけ」


思い返せば、確かに夏弥はそう言っていたような気がする。美月梓の熱愛の相手だと噂されているのは自分だと、軽く笑っていたような記憶が確かにある。


「自分が相手だって言ってた。彼女の熱愛の相手だって噂されてるのは自分だって、言ってたのにー」


私の手をぎゅっと掴んでいる夏弥の手を振りほどいて後ろにいる夏弥に体を向けると、


「妬くな妬くな。それって無駄な感情だぞ」


私の頭をぽんぽんと軽くたたいてにやりと笑う夏弥と目が合った。

きっと涙も目に浮かんでいるに違いない私の顔を見て、夏弥は満足そうな声をあげておまけに口元は緩んでいて。

夏弥をいい気分にさせたんだと気づいて一層いらいらとした。


「だって、噂の相手は夏弥だって自分で言った」


年甲斐もなく拗ねたような声が出るけれど、そんなの脇において、ずっと気になって我慢していた思いが止まらない。

出張で沖縄に行っている夏弥が巻き込まれた美月 梓のスキャンダル。

どれだけ私がショックを受けたのか、夏弥は理解してないんじゃないかと思うと本当に切ない。

私一人が必死に夏弥を想っているみたいで泣きたくなる。


私のそんな必死な想いを感じて、さすがに焦ったのか夏弥は私の肩を掴むと。


「確かに噂になっていた『住宅会社の営業マン』は俺の事だけど、それは噂の相手であって、美月梓が熱愛している本当の相手は『住宅会社の営業マン』じゃないんだ」


「え?えっと……ちょっと意味がよくわからない……あれ?」


「落ち着けよ、結局、梓が付き合っていたのは『営業マン』ではなくて『宣伝マン』だ。

俺と同期の曽川隆平。うちの宣伝部のエースで、CMを担当している。だから、梓と接する機会も多かったんだ。

で、二人は恋人同士になってこの度結婚に至るってわけだ」


ゆっくりと、私が理解できるように話してくれる夏弥は、それでもどこか面白がっているように見える。


夏弥の言葉を理解しようとするけれど、もう一つうまくかみ合わない。そんな私がばかなのか。


「隆平と梓は結婚する事を決めていたんだ。梓の事務所も結婚させなきゃ梓は引退するって言われて渋々了解していたんだけど、スポンサーとの契約やら細かくて面倒な問題もあってタイミングを図ってたんだよ」


「……なら、どうして夏弥が巻き込まれるの?」


「あれは予想外だったんだよ。……俺も悪いんだけどな」


はあ、とため息をつく夏弥は、どこか落ち込んでいるようで、普段見る強気な態度はどこにも見えない。

どうしたの?と聞いても小さく笑って肩をすくめるだけだ。


「俺が、花緒の事を好きになりすぎて、無茶をした結果だ」


「……あのー、もう少し、色々と私が理解できるように、話して欲しいんだけど。夏弥が教えてくれること全部よくわからない」


っていうよりも、全くわからない。夏弥が私を傷つけないように心を砕いてくれてるのは、よくわかるけど、ただそれだけだ。


「お願いだから、もう少しわかりやすく……お願いします」


夏弥はそうだなあと首を傾げて、私の体を抱き寄せた。そして、気づく。会社には遅刻だ。ま、いいか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ