3-11 オレたちの日常が、一変してる……
「ちーっす、先輩」
「うっせ!」
「うるさい!」
もう何度目だろう、数える気にもならない。久々のクエストの日、ギルドに向かうオレたちに、さっきから周りのパーティーが声をかけてくる。中には今みたいに、語尾に明らかに「www」が見えるようなヤツもいて、その度にリアが一発ケリをくれている。あのケリ、骨折れねえのかな……。まあ大半は「すげえな」とか「がんばれよ」とか言ってくるんだけど、それはそれでなんかプレッシャー感じるな……。
ステラと合流してギルドの中に入ると、やはり人々の好奇の視線を浴びる。うう、これいつまで続くんだ……?
そして、頭痛のタネがここにもひとり。
「あら、いらっしゃい! 今日はBランクになって初のクエストね!」
「ああ、アンジェラ、おはよ……」
アンジェラ、なんで朝からこんなテンション高いの……? オレたち、もっとひっそりとやっていきたいんだけど……。
「今日は三十七階で、キノコと薬草の採集ね。まあ、今のリアたちなら楽勝ね。肩慣らしにもならないんじゃないかしら」
だからいいってそういうのは! なんかオレらが急に調子乗り始めたみたいな感じに聞こえかねないじゃん!
「三十六階ゲートから行けばすぐね。リアとルイ君は初めてかしら?」
「一応この前のクエストで使わせてもらったけど、自分たちで使うのは初めてだよ」
「え、オレら使った事あったっけ?」
「ほら、この前のクエストの帰りの時ですよ」
「ああ、ゾンビ退治の時か」
そん時はオレ気絶してたもんな。どおりで記憶にないわけだ。
「それじゃ、これが地図と薬草を入れる袋ね。これいっぱいに詰めてきてもらえるかしら」
「りょーかーい」
リアが受け取ると、その袋を全部オレの方に放り投げてくる。おい! またオレが全部持つのかよ! あ、でも今日の袋は肩かけカバンか……。これ後でまたステラに持ってもらおうかな。ま、パイスラなら普段着のセーターの方が破壊力ありそうだけどな。
「それじゃ、行ってくるね~」
「ええ、いってらっしゃい。気をつけてね」
笑顔でオレたちを見送るアンジェラ。気のせいだろうか、心なしかリアがいつもより早めに出かけるあいさつしたような気がするんだけど……。
三十六階行きのゲートを抜け、オレ的には初めて三十六階の詰所にやってきた。部屋にはやっぱり何人かの冒険者が詰めている。
オレたちに気づくと、男どもが寄ってきた。若い兄ちゃんがリアに声をかける。
「お? リアじゃん。ここで会うのは初めてだな」
「あー、久しぶり~」
お、お前ら知り合いなのか?
「この階に来たって事は、リアもやっとCランクになったんだな」
「え? あ、うん、まあね……」
ああ、この兄ちゃんはまだ知らないのか……。他のギルドのヤツなのかな?
そんな会話に、おっさんが割りこんでくる。
「あん? お前さん、知らないのか? 今ウチじゃこいつらの話題で持ちきりなんだぞ?」
「そうなのか? ウチって、シティギルドで?」
「おう。なんせこいつらは、この前王様に褒美をもらった上……」
「わー! わー、わー、わー!」
上機嫌で口を開こうとするおっさんを、リアが両手を振って慌ててさえぎる。いや、かえって気になるだろ、それ……。
「ナイショ! その話はナイショ! いい?」
「お、おう……? わ、わかったよ……」
強く口止めされて、困惑しまくるおっさん。ま、おっさんにしてみればワケわからんよなぁ。
「それじゃ、行ってくるね」
「じゃあな」
「行ってきます……」
「おう、気をつけて行ってこいよ」
詰所の連中が、あいさつするオレたちを送り出す。
外に出ると、三十六階はオーソドックスな洞窟だった。
「さーて、今日も張り切っていきましょうか」
「おう」
「はい」
そうして、オレたちは三十七階目指して出発した。
……詰所の連中、ステラには特に反応しなかったな。女斧兵の地位が改善してるのか、それともオレたちが色モノパーティーとして認知されているからなのか……?




