3-6 そ、そんなにスゴい事だったの!?
「よく来たわね! 待ってたわよ、あなたたち!」
ギルドの受付に近づくや、大声でオレたちを呼ぶアンジェラ。ああ、ヤバいくらいテンション高い……。
げんなりしながら彼女の所へと向かうと、ニッコニコしながらアンジェラが話しかけてくる。
「あなたたち、お城はどうだったかしら? 王様も感心してらっしゃったでしょう!」
「うん、まあ……気に入られたみたい……」
ああ、あのリアが引いちゃってるよ……。こんな上機嫌なアンジェラ、初めて見るな……。
「私の方からもしっかり言っておいたわよ、上の方に! この前も理事さん、凄く喜んでたでしょう?」
「ああ、うん……そうだね……」
アンタ、そんなにがんばったのかよ……。てか前から思ってたけど、アンジェラの発言力って妙に強くないか……?
「あなたたちも、ついに認められる日が来たのね……。こんな小さい頃から面倒見てるからかしら、感慨もひとしおね……」
あらら、なんかひとりで感極まっちゃってるよ……。斜め上を向いて目頭を押さえちゃってる。
「大げさだよアンジェラ。私らが登録してから、せいぜいまだ三、四年じゃん」
「あら、そうだったかしら? 私ももう年なのかもしれないわね……」
そう言うと、少し遠い目になる。いやいや、あんたまだ二十代でしょ? 年齢聞いた事ないけどさ。
「ところで、王様から何かもらわなかったかしら? メダルとか……」
「あ、もらったよ。これでしょ?」
そう言って、リアがポケットに無造作に突っこんでいた金ピカのメダルを取り出す。そういやいつも持ってるようにって言ってたな。オレとステラもメダルを懐から取り出す。それを見たアンジェラの顔色が変わる。
「ちょっと……これ、凄いじゃない!」
「え? そんなにスゴいの? このメダル」
「凄いってレベルじゃないわよ! これ、王家の紋章じゃない! このメダルがもらえるのは大臣や将軍クラスの高官ないしそれに準じる者に限られるのよ!? あなたたち、こんなに高く評価してもらったの……!?」
「え……」
「うそ……」
「そんなに凄いものなんですか……?」
ちょっと待って、じゃあ王様は、式典の前からもうオレらの事をそんなに評価してたって事……? 思考が止まりかけているオレたちをよそに、アンジェラが珍しく大声を上げる。
「凄いわ、あななたち! あの賢王アンリ四世陛下に認められたのよ! これからはもっと堂々と振舞いなさい!」
「やめてアンジェラ! みんなが聞いてるから!」
慌ててリアがたしなめる。てかオレらの周り、いつの間にやら聞き耳立ててる連中に囲まれてるよ! 「ホントに王様に会ったのかよ……」とか「噂は本当だったのか……」とか言ってるし! あー、これもう引っこみつかねえな……。
メダルを見てテンションMAXのアンジェラ。ひとしきりオレたちを褒めまくった後、一息ついて再び口を開く。
「でも、これからは大変になるわよ? ギュスターヴさんと、何より王様のお墨付きもついたわけだし、これは間違いなくなんらかの役がつくわね」
えー、もしかして仕事増えるのー? あんまり面倒なの、ヤだよオレ。
「役って、どんな役がつくの?」
「前にも話したけど、リアとルイ君はまだレベルが低いから幹部候補生として補佐や見習いになるかしら。ステラちゃんはもうすぐBランクだから、もしかすると班長あたり任されるかもしれないわね」
それを聞いたステラの表情が強ばる。
「そ、そんな、私、班長なんて無理です……」
「心配しないで。名目的な役職で、実際には班長って感じの仕事はほとんどないから。みんないつも通りにクエストしていればOKよ」
「あれ? さっきアンジェラ、忙しくなるって言ってたじゃん」
疑問をぶつけるリアに、アンジェラが答える。
「忙しくなるのは、主に会議やイベントよ。これからは食事会や、学校での説明会の仕事も増えるでしょうね。もちろん、王様にも招かれたりするでしょうし」
「げっ……」
アンジェラの言葉に、オレとリアの口から思わず声が漏れる。メチャクチャ疲れるから、マジカンベンだよ、お城は……。ご飯がウマいのは嬉しいけどさ。ギュス様にウェインさん、チョイ悪、そしてあの王様……。ヤバい、思い出したら頭痛がしてきた……。
「み、みんな!? 大丈夫!?」
同時に頭を抱えだしたオレたちに、驚き声をかけるアンジェラ。ああ、この人にはわかんねーだろうな、この苦労……。




