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5-6 ようやく探索開始!





 司教先生のクッソ長い話が終わり、やっとクエストが始まるようだ。まとめ役の人が説明を始める。

「えー、それではこれからの流れを説明します。ここからは、ペースメーカーとして中央ギルドのパーティー『獄炎騎士団』が皆さんを先導します。皆さんはその後に続いてください。はぐれてしまわないよう、くれぐれもお気をつけ下さい」

 はあぁ? なんじゃそりゃ? 完全に遠足じゃねえか! ホントにこんなんでいいのかよ!

「なお、最後尾からはギュスターヴさんご一行とテンプルギルドの僧兵の皆さんがついていきますので、安心してクエストに臨んで下さい」

「えー、いいなー。ねえ、私たちも後ろから行く?」

「行くわけねえだろ。どんだけミーハーなんだよ」

「みーはー? みーちゃんとはーちゃん?」

 はあ? 誰だよそれ。むしろよく「ミーハー」からそんなの思いつくな。バカ言ってないでさっさと行くぞっと。





「それじゃ、皆さんオレたちについてきてください」

 ああ、あれが先導するパーティーか。しっかし、その後をいい年した大人がぞろぞろついていくとか、ホントどういう絵だよ。遠足って言うより、ある種デモ隊みたいな物々しさがあるな……。

「てか、『獄炎騎士団』とかどんだけ厨二なんだよ」

「ちょっと、やめなってー。数年後には黒歴史確定なんだしさー」

「くすっ」

 そっち系のワードはわかるのかよお前ら! もう意味わかんねえ!

「この調子で三十五階までしらみつぶしに調べていくんだよね」

「気が遠くなるな」

「でも、三十五階より上で目撃報告がなかったのは幸いでしたね」

「ああ、まったくだ」

 三十一階はわりと明るくて木々も青々してるんで、あんまそういうのが出そうにはない。

「三十二階はまた出そうだな」

「そうですね」

「リア、今度はビビんなよ」

「だ、だからビビってないもん!」

 正直ああいう所で出くわすのはカンベンなんだが……。このあたりでさっさと出てきてもらった方がありがたいな。

「目撃報告は三十二階と三十五階に集中しているようですしね」

「ああ、そう言えばステラは三十五階に行った事ある?」

「はい、何度か」

「どんなフロアなんだ?」

「そうですね……暗くて霧が濃くて、石ばかりですね。墓場のようでした」

 ステラの説明に、リアの表情が一気に強ばる。コイツ、ホントおもしろいヤツだな。

「あーそりゃ出るわ。絶対出るわ」

「そ、そりゃそうでしょ、出てきてもらわなきゃ退治できないじゃん!」

「あ、出るってのはオバケの方な」

「ひッ……!」

 いやいや、そんなに怯えなくてもいいだろうによ。てかコイツ、ホント大丈夫なのか? 今からこんな調子じゃ、こっちが不安になってくるわ……。

「ルイさん、戦う前にあんまりおどかすような事言ってはダメですよ?」

「そ、そうだよ! こっちにだってモチベーションてのがあるんだから!」

「ま、そういう事にしてやるよ」

 ぶー、と何か言いたげにオレをにらむリア。

「それに、せっかく作ったお守りもあるんだしな」

「あ、そっか。そう言えばそうだよね」

 リアが胸に手をあてる。

「これが、私を守ってくれるんだよね」

「お、おう。その通り」

 時々妙にカワいいなコイツは。見ればステラも懐から取り出したお守りを見つめている。ま、少しでも気休めになってくれればオレも作った甲斐があるってもんだ。よっし、それじゃ今日はいっちょがんばるか!






 ゾンビ退治という名の遠足が始まってしばらく。オレたちは例の三十二階に来ていた。

「相変わらず不気味なとこだなあ……」

「やだ、やめてよ……」

 あたりは暗く、細い木々が道の両側に生い茂っている。いや、葉っぱがあんまないけどこういうのも生い茂るって言うのか? そして濃い霧。うう、マジでこの前のを思い出すぜ……。オレ、早くこのフロア抜けたいんだけど。

「でも、ゾンビってどのくらいいるんだろうな」

「目撃者も多いみたいですしね」

「ゾロゾロ出てきたらヤだよなあ」

「だからやめてよ、キモいじゃん」

「正直さ、少しずつ出てきて先頭の連中が全部片づけてくれればラクでいいのにな」

「ああ、それいいね。たまにはルイもいい事言うじゃん」

 大抵こういう事言うと怒られるんだが、今回に限ってはリアもオレに強く同意する。

「しっかしアイツら、マジでクサかったよな。あれはもはやブレス攻撃だろ」

「うんうん、あれはキツかったよ」

「鼻栓、いつでも取り出せるようにしないとですね」

 まったくだ。てか鼻栓、地味に生命線じゃね? あんなの嗅ぎながら戦うなんてどう考えてもムリだろ。




 三十二階はゾンビの目撃情報が多い事もあって、かなり念入りに調べていく。いや、ホント気が滅入るわ……。しっかし全然見つからないな。

「いないねー」

「これだけいると、ビビって出てこないのかもな」

「ゾンビさんにも恐怖心ってあるんでしょうかね」

「うーん、どうなんだろ?」

「でもアイツら、脳ミソも腐ってんだろ?」

「だからやめてよぁ、そういう事言うのー」

 すっげえイヤそうに、リアが顔を歪める。てかオレよくわからんけど、あんだけ腐ってたらヤバい菌とかも撒き散らされてそうだよな。そこんところはどうなんだ?

「なあ、ゾンビって病原菌みたいなのは大丈夫なのか?」

「はい、僧兵さんがいますから。何かあれば治してくれますよ」

 おお、僧兵ってそんなにオールマイティなのか。それじゃ医者の立場なくね? てか、教会が病院みたいなモンなのかね。



 そんな調子でずい分長い事三十二階を調べたが、結局ゾンビは見つからなかった。出発前に説明あったけど、仮に一匹も見つからなくても300リルはもらえるんだろ? 逆に一匹でも出たら1000リルってんだから、国のクエストってのは太っ腹だな。

 もっともこういうクエストってのは、目立った活躍すれば国の仕事を取りやすくなるそうだから意外とみんなよく働くらしいが。まあ実際、ゾンビ以外のモンスターとはちょくちょく出くわしてるしな。オレたちは別に国の仕事には大して興味ないから、ゾンビがちょこっと出て先頭グループがさっさと退治しちゃうってのが理想だわ。







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