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4-7 加入記念のプレゼント






 喫茶モンベールの片隅。オレたちは食事を終え、作戦会議という名のお茶会を楽しんでいた。

「じゃあクエストは二、三日後でいいよね」

 焼き具合はバツグンながら、なんだかよくわからん味のするクッキーをつまみながらリアが言う。

「はい、大丈夫です」

「そうしないと間も空くしな」

 まあ、報酬自体は結構もらえてるんだが、さすがに一週間ほども空けるのはアレだし。

「次回はさ、二十六階から三十階の間にしようよ」

 お? いつもならもっと上の階に行きたがるのにどうした?

「あ、わかった。お前オバケに会いたくないんだろ」

「バッ……そんなんじゃないもん! 別にいいじゃん!」

「はいはい、そういう事にしてやんよ」

 ぷーっと頬を膨らませていたリアが、ふと思い出したかのように口を開いた。

「そんな事よりルイ、あれ、いつ渡すのさ」

「ああ、そう言えば」

 思い出したというより、話をそらしたかっただけか? ともかくオレは荷物を取り出す。

「ステラ、これどうぞ」

「え?」

「オレたちでマント買ってきたんだ。これならクエストの時も街歩きやすいと思ってさ」

 そんな事を言いながらマントを手渡すと、ステラは驚いた表情でオレたちの顔をキョロキョロ見る。

「こんな、悪いです」

「いいんだって。それがないとステラ、仕事終わっても私たちといっしょに食事とかできないし」

「パーティー加入のお祝いって事で、な」

 オレたちの言葉に、どうやらステラも納得してくれたようだ。

「それでは……ありがたく、いただきます……」

「気に入ってもらえるといいんだけど」

「そんな! 大事に使わせてもらいます!」

 そう言うと、赤みが差した顔でマントを見つめるステラ。か、かわいすぎる……。

「本当に、皆さんありがとうございます……」

「いいっていいって。これからがんばってね?」

「期待してるぜ」

 それにしても、これだけ喜んでもらえると嬉しいもんだな。思えば、オレ今までマトモに贈り物とか誰かに渡した事なかったわ……。

 あ、そうだ。今度リアにもなんかプレゼントするか。こっち来てからこのかた、なんだかんだでずっと世話になってるしな。


 その後お茶も飲み終え、会計を済ませて店を出る。今日はちゃんと200リル以内に収まってよかったわ。そして次のクエストを請け負うべく、三人でギルドへ向かった。ま、リアがゾンビにビビってるから三十一階以上には行かないだろうし、次回はだいぶラクできそうだな。







 モンベールを出て少々、ギルドに着くといつものように受付に向かう。これまたいつものように、アンジェラが笑顔でこちらに手を振ってきた。どうでもいいけど、この人いっつもいるよな。ちゃんと休み取れてるのか? 気になったんで、リアに聞いてみる。

「なあリア、アンジェラっていっつもいるよな」

「ああ、だって私アンジェラのいる日しか来てないし」

「あ、そうなの?」

「まあ、だいたいいつ仕事なのかはもう覚えてるんだけどね」

「なるほど」

 フタを開けてみれば、えらい単純な話だったわ。


 受付に着くと、アンジェラが声をかけてきた。

「あら、私の噂話かしら?」

「うん、ルイがいつもアンジェラに会えて嬉しいってさ」

「あら、ありがと。うふふ」

 まあ、それは事実だから別にいいけどな。

「今日はなんのご用かしら?」

「うん、次回のクエストを決めようと思ってね」

「そう言えばこの前は決めてなかったわね。今用意するわ」

 依頼書を取りに行こうと立ち上がったアンジェラが、リアに確認する。

「三十一階から三十五階あたりでいいのよね?」

「あ、いや……。今回は二十六階から三十階でお願い」

「あら? 珍しいわね」

「まあ、たまにはね……」

 いや、オバケが怖いだけだろ。気配を感じたのか、口を開こうとするオレをリアが鋭くにらむ。

「ああ、そう言えばそうだったわね」

 その様子を見て察したのか、一言残してアンジェラが依頼書を取りに行く。

 すぐに戻ってくると、机に依頼書をいくつか広げた。クエストを物色するリアだったが、何を思いついたのか突然顔を上げた。

「あ! そうだ!」

「なんだ、どうした?」

「ステラ、さっきのマントつけてみてよ!」

 ああ、なるほど。ここならある程度広いからジャマにもならないか。アンジェラにも見てもらおうって事だな。

「あ、はい。今つけますね」

 ステラがマントを取り出して、セーターの上から羽織る。こげ茶色で体をぐるりと覆う感じのマントだが、まあビキニアーマーを隠すって目的は果たせそうだな。

 ふと思ったんだが、もし更衣室みたいなのがあるんなら、そこで着替えすれば済む話なんじゃね? ま、ビキニアーマーはロマンだから、そんな提案をする気はさらさらないけどな。


 そんな事を考えている間に、ステラがマントをつけ終わる。うん、なかなかいいんじゃないか? 今時の日本人的感覚だと怪しさ満点な姿だが、ま、あのカッコで街中歩くよりは遥かに……。

「おー、いいじゃん」

「似合ってるわよ」

 リアとアンジェラが口々に褒める。しっかし、こんなマントが「似合ってる」ってのは、女の子的には褒め言葉になるんかね……。ま、オレも褒めるんだけど。

「ああ、いいと思うぜ」

「あ、ありがとうございます……」

 真っ赤になって照れるステラ。マントを脱ぐ姿がまたエロティックだな。

「よかったわね、ステラちゃん」

「はい、皆さんありがとうございます」

「次回からはクエストの前にここに預けていってね」

 うん、これで前みたいに男どもに囲まれる事はないだろうな。再びクエストを物色するオレたちに、アンジェラがつぶやいた。

「そうそう、あなたたちにおすすめのクエストがあるんだけど」

「え? マジで?」

「どんな仕事なの?」

 興味津々に尋ねるリアは、しかし次の瞬間、その表情を凍りつかせる事になるのであった。







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