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2-2 ビキニアーマー、危機一髪!






 ああ、憂鬱だ……。

 アンジェラは「がんばってね」なんてお気楽に言ってくれるし、詰所の連中は例によってオレをイジってくるし。

 せめてもの救いと言えば、三十階に行くのに三十一階のゲートが使える事か……。本来Dランクパーティーのオレたちはまだ三十一階のゲートを使えないはずなんだが、プレイヤーのレベルがひとつ上のランクに準じる場合は、手続きすればある程度融通が利くんだな、これが。今回はリアが昇格目前だからOKだったらしい。

 そして今オレはサルマイトとかいう謎の石を集めてはリュックに詰めている。てか、この世界にリュックがあったのはせめてもの救いだぜ……。このあたりはさすがに国産ゲームといったところか。だったらネットや携帯も使えるようにしてくれよ。

「ルイー、早く来なよー」

「うっせ! こっちはクソ重い石しょってんだ!」

「何さ、ルイのくせに反抗的ー」

「当たり前だ!」

 くっそ、オレがまるで戦力にならないのをいいことに雑用やらせやがって! てかこれもう奴隷労働のレベルだろ!

「あーあ、今日の曲はよくできてるって褒めようと思ってたところなのに」

「そんな言葉より、少しでも石持ってもらった方が遥かにありがたいね」

「あ、それはムリ」

 即答すんな! 腹立つなコイツ! 

「だいたいさっきからバトル無双してんだから、石の一つや二つ持ったって変わらんだろ!」

「変わらないんだったら自分で持っててくださーい」

 ぐっ……。ムダにヘリクツこねやがって、ムカつくムカつくムカつく!

 しっかしアレだ。三十階ってのはレベル30のパーティーでちょうどいい難易度のハズなんだが、何でレベル30のリアが一人で無双できるんだろうな? いや無双は言い過ぎだけど、今のところオレがピンチになるような展開にはなってないし。ここまでに出てきた敵も結構強そうだったのに。

 まーおかげで仕事がはかどるはかどる。もう20キロ以上は積んでるぞ。こりゃ帰る頃にはエラい事になってそうだ。




 それからしばらくして。

「あ、お仲間がいるね」

「おお」

 角を曲がった先に見えたのは、女の子がモンスターと戦う姿。今日はこれで三回目か、他の冒険者と出くわすのは。女一人ってのは初めてのパターンだけど。それにしても……。

「ビキニアーマーって、ホントにあるんだな」

「なに? びきにあーまーって」

「ああいうエロエロな水着みたいな鎧の事だよ」

「へー」

 大して興味もなさそうな感じでリアが返事をする。だったら聞くなよ。てか、そもそもこの世界ってビキニとかあんのか? 

 いやしっかし、あれはヤバいな。リアと比べてもしょうがないが、あのコはマジでちょっとヤバいぞ? あれはFどころかG、いや、ヘタしたらHくらいあるんじゃないか? あのボリュームでビキニアーマーとか、もう痴女とかいうレベルじゃねーぞ!

「ルイ、アンタちょっとニヤけすぎ。キモいよ」

 う、つい夢中になって見入ってしまった……。だって、あんな金髪ツインテの牛チチちゃんが半裸で戦ってあちこちプルンプルンいわせてんの見せつけられたら、誰だって目が離せないだろ! 手に持ったバカでかい斧がまたアンバランスで無性に萌える。ん、て事はあのコは斧兵って事か? マジかよ、女斧兵があんなカワいいとかオレ聞いてねーぞ!


「……あのコ、ちょっとヤバいかも」

「え?」

 急にシリアスな声になったリアに、オレは間抜けな返事をしてしまう。

「ヤバいって、何がだよ」

「ほら、おっきい蛾が三匹飛んでるでしょ? あれ、痺れ効果のある鱗粉まいてるんだけど、どうもそれがまわってきてるみたい」

「それ、ヤバいどころじゃないだろ」

「パーティーならどうって事ないんだけどね。ソロプレイだと致命的だよ」

 見れば女の子のまわりにはリザードマンやロックタートルの死骸が横たわってる。そっちの強モンスター相手にしてる間に痺れがまわってきたって事か。女の子の方も最後のリザードマンとのタイマン中だってのに、もう足元がおぼつかなくなってきてる。確かにヤバい。

「いくよっ!」

「おう!」

 言うや否やオレはリアの後ろから飛び出し、バトル用の歌を歌う。駆けろ、駆けろ、駆けろー。

 今や立っている事もできなくなりついに座りこんでしまった女の子に、リサードマンが剣を振り上げる。その脇腹に、リアが投げた短剣が唸りをあげて突き刺さった。距離をあっという間に詰めたリアが、絶叫を上げる化け物の腕を叩き切る。返す一振りでトカゲの首が飛んだ。つ、強ええ……。飛んでいた蛾も、リアの投げナイフの前になす術もなく霧散する。いや、ホント文字通り霧と化しちまったよ! いつも思うけど、どんな威力なんだよそのナイフ!



「ふー、間一髪だったねえ」

 何事もなかったかのようにリアが額をぬぐう。いや、お前汗なんかかいてないだろ。

「あなたも大丈――夫……?」

 女の子に声をかけたリアが絶句した。そのまま女の子を凝視する。何かあったのか? オレも駆け寄っていった。

「おいリア、どうし――た……?」

 疑問はすぐに氷解した。リアの視線の先には――ありえないほどボリューミィな、生まれて初めて見るサイズの双球が。間近で見ると、信じられんデカさだ……。これ絶対G、いやHだろ! ヤバい、何だか吸い込まれそう……。

 その時、オレの脇腹に猛烈な痛みが走った。てか、ってえぇぇえ! 吐き気をもよおすレベルの痛みだぞ!

「ルイ、どこ見てんのさ」

 るっせぇ! 脇腹殴るヤツがいるか! オヤジにも殴られた事……とか言ってられる痛さじゃねえ! 死ぬ、死ぬ!

「あの……助けてくれて、ありがとうございました……」

「あ、痺れとれてきた?」

 オレをおいて会話進めんな! だいたいオマエが乳見て固まったからオレもつられたんだろうが! 何でオレが一方的に変態扱いされなきゃなんねえんだよ!?

「なんかろれつが回ってないね。まだ痺れる?」

「はぃ……すぃません……」

 痺れのせいなんだろうが、舌足らずなしゃべりが何かエロいな。服装はもっとエロいけど。

「ルイー、痺れとれるまで何か歌ってあげなよー」

「歌えって、ハァ、言われても……」

 オマエに殴られたせいでマトモに呼吸できねえんだよ! 少しは加減ってモンを考えろ! ハァ、ようやく落ち着いてきたぜ……。

「あ、あの、どうぞお構いなく……」

「あ、だいぶ治ってきた?」

「はい、どうにか……」

 何かこのコ、声も萌えるな。どうでもいいけどこの声、オレの好きなロリっ娘キャラに似てるわ。 







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