表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/62

38.有志のイベント(運営公認)に参加する

ある日、SNSにこんな投稿があった。


『TRF大規模交流会(運営公認)開催のお知らせ


 この度、運営と交渉の末、プレイヤー及びギルド主導による大規模な交流会を開催することになりました!本イベントは古参プレイヤーから新規プレイヤーまで老若男女に参加頂けるものとなっており、たくさんのプレイヤーに参加して頂きたいと思ってます!


日程:10/13(日)三連休の真ん中です!


開始時間などは未定です・・・


このイベントを共に盛り上げて頂けるギルドや有志を募集しています!もしご協力頂ける方がいましたらリプライまたはDMをお願いします!』


というもの。何やら楽しそうな内容だし、協力してもらえる有志を募っているみたい。でもボクたちのギルドにできることないしなあ。


===============================


「ってことがあって・・・」


「へえ、プレイヤー主導のイベントねえ。面白そうではあるけど、確かに私たちに何ができるかって考えたら、思いつかないわね」


「まあ、一般プレイヤーとして参加するくらいならいいんじゃないかしら~。別にあたしたちが声かけなきゃ人手不足ってわけじゃないんでしょう?」


「あ、うん。もう色んな人が声かけてるね」


さっきその投稿を確認したところ、名前は聞いたことあるような有名プレイヤーから個性的な人、何かしら秀でた特技を持つ人など様々な人たちが声をかけていた。


「だったら、私たちはありがたく楽しませてもらいましょ~」


「私もそれでいいと思います」


「私もなのです」


「そうだね。まあ、流石に他人の主催のイベントで配信するわけにはいかないし、たぶん向こうの人が配信するだろうから。ボクは詳細が決まったら拡散しておこうかな」


そうすれば当日は入れないって嘆くであろう一部の人々に情報が行ってくれれば御の字だね。


「モミジちゃんはいいこねぇ。細かいことが発表されたら教えてね~」


「あ、うん。わかったら伝えるね~」


そういったやりとりの後、ボクは先に落ちさせてもらった。




それから数日後、ボクの携帯にあるメッセージが届いた。

差出人は深雪さんで、本文には


『紅葉、私たちのバンド、一夜限りの復活をしようと思ううんだけど』


という突拍子もないことだった。


『ドユコト?』


と思わず片仮名で返信してしまうのも無理ない、はず。


『いやね、もしかしたらもう知ってるかもしれないけど、TRFでイベントやるらしいじゃん?』


『う、うんそうだね』


『それでねえ、私たち実はみんなやっててさ、TRF。声かけてみようって話になったわけよ』


はいい?


『そ、それで?』


『あとは最初に言った通りよ。せっかくゲーム内で楽器が実装されたんだし、ステージで演奏、しない?』


まさかの提案だった。正直あの頃のボクはこの一人称に慣れてないがきんちょだったので黒歴史なんだけど・・・。でもまあ、大人数の前で演奏できる機会が久々にやってきたのは確か。やりたい自分もいるのは認識してる。前にみんなで集まった時、本当に楽しかったんだもの。


結局、30分くらい熟考した結果、


『やりたい』


というメッセージを送った。


『意外と早かったね。私としては割と気にしてたみたいだし、一晩はかかるかと思ったんだけど』


『だって、前に集まった時の楽しさが忘れられないんだもん』


『オッケー、じゃあ主催に声かけとくね。つってもこういうことを考えてる~っていうことは伝えてて、あとは決まったって伝えるだけなんだけど』


『で、一回話し合いたいからさ、明日は厳しいだろうから明後日の夕方、空いてる?』


『空いてるよ~』


『ならアインまで来て。私たちの拠点まで案内するから』


『わかった~』


そこでやりとりを終え、その日は就寝した。でもなんで深雪さんは明日は厳しいって知ってるんだろう?・・・あ、そういえば配信見られてるんだった・・・。


================================

2日後・・・


「あっ、くr・・・モミジ、こっちこっち~」


「お待たせ、ミセツさん」


ボクは言われた通り、ウノの地方のマップに存在するアインという町に来た。ウノの街が都市とするなら、ここは郊外といった感じだね。


「二人も拠点で待ってるから、行こうか」


そして少し歩いたところで拠点にお邪魔した。


「お邪魔しまーす」


「邪魔するんやったら帰ってー」


「はいよー」


「帰るな帰るな」


「ごめんて。さ、お約束も終わったことだし、色々説明とかお願い」


「はいよ。まあ説明つっても、一昨日ミセツから聞いた通りだよ。てか俺が言い出したことなんだが」


いつの間にか慎司兄の一人称が変わってる・・・!


「最初はそうだったけど、あたしもミセツも2つ返事でオッケーしたし。まあ当日、ステージが組まれるらしいからそこで演奏するだけよ」


「いやー、楽器が実装されなかったらこんなことできなかったわ。運営には感謝よね」


「それで、打ち合わせをしときたいんだが。まずバンド名だよ。当時のノリで『生人形倶楽部』なんてつけたはいいけど、とっつきづらいしださい。ってことで名前かえよ?」


「まあそれはずっと思ってたよ?活動することが無かったから何も言わなかったけど」


「で、名前をどうするかよね」


「ゆうて一夜限りだし、安直でわかりやすいのでいいと思うわよ?」


「じゃあもうさ、特に由来とか考えずにかっこいい横文字の羅列にしましょ。例えば『スノードロップ』とか」


「そうだね。あ~、なんであんときこんな恥ずかしい名前にしちまったかねえ」


「『ウェストウィンド』とか、『ファイアフライ』とか。いろいろあるけど?」


「あたしら割と速いの得意だし、『ソニックウェーブ』とかでもいいと思ってる」


「音速を越えた時にでる衝撃波だっけ?いいんじゃない?」


「よし、バンド名は『ソニックウェーブ』でいいかい?」


首を縦に振り、肯定の意を示す。


「オッケー。それじゃ次にセトリを決めるとしてーーー」


その日から、密かに当日に向けての会議・練習を始めるのだった。


===================================


当日・・・


「うひゃ~、もうたくさん来てますねぇ」


ボクはギルドのメンバーと会場に来ていた。まだ開会前にも関わらず、会場にはかなりの人が集まっていた。


「席とっときましょ?下手したら座れなくなるわ」


「おっと、そうだね。後ろが詰まっちゃうし、早く行こうか」


そうしてなんとか全員の座れる席を確保した。それから程なくして、主催の人が壇上に上がり、開会式が始まった。


「えー、お集りの皆さん、本日は運営公認、第一回大規模交流会にお越しいただきましてありがとうございます!この度主催を務めさせていただいております、ファルコンと申します。さて、この会なのですが、途中退席も途中参加もオッケーです!時間が無くて途中で帰らなきゃいけない人、途中からしか参加できない人、いると思います。全然大丈夫です!この会の目的はただ一つ。全力で楽しんで、知り合いを増やすことです!配信を見てる皆さんも、楽しんでってくださいね!そして有志の方々による出し物や食べ物・飲み物のブースもございます!それでは少々長くなってしまいましたが、ただいまより、第一回大規模交流会、開幕です!!」


その瞬間、ワァっと会場中から歓声が上がった。その騒ぎに乗じて、ボクは席を外すことに。


「ちょっと向こう行ってくるね」


「ん、いってらっしゃい」


「席はとっておくわね~」


そうして抜け出したボクが向かった先は、ステージ裏。


「お待たせ」


「大丈夫、予定通りよ」


そこにいたのは、深雪さんもといミセツさんたち。今から最終調整をして、出番が来るのを待つ。


「セトリの再確認するよ。まずこれではいって、次にこれ。そのあとMC挟んでこれとこれで終わり。もしアンコールがかかったらあとから時間もらえることになってる」


「オッケー。音の確認は上で」


しばらく待ちだね。裏方の人がてきぱきと誘導や準備をしてくれているおかげで予定通りに進んでいるみたい。


ステージでは漫才やモノマネ、大道芸など色んな出し物をやっていた。


『だから言ってやったんですよ、お前はもう、死んでいるって』


『いや頃すな!ワンちゃん助けたかったんでしょ!?』


といった漫才や、


『お、速かった。じゃあ行きましょう』


『はい。あの職人さん、よく肩が凝るってぼやいてるんですよ』


『どうしたんでしょうね?』


『なんでも凝り性って有名な方らしいんですよ』


『綺麗だね。一枚あげて!』


といった〇点を彷彿とさせる大喜利など、実に様々。


しばらくして、裏方さんから


「『ソニックウェーブ』の皆さん、お願いします」


と誘導され、ステージへ上る。

楽器はインベントリから出せばいいので、本当に楽だね。自動でアンプもついてくるし、チューニングさえしてしまえばどこでも演奏できるというシステムに助けられる。


「行くよ。ワン、ツー、スリー、フォー」


その号令に合わせて、最初の曲に入る。懐メロの類に入るけど、ほとんどの人は知っててかつ一緒に盛り上がれるような曲。


『そして輝く?』


『『『ウルトラソ〇ル!』』』


一曲目は終わり、続いてボカロの名曲を演奏する。二曲目が終わった時には、ボクたちは結構な数の人たちを取り込んで盛り上がっていた。


「というわけでボクたち『ソニックウェーブ』です!よろしくおねがいしますー!」


「ここで簡単にメンバーの紹介をさせてもらいます。まずはこっちのギター、ミセツです」


「ミセツです、よろしくお願いしま~す」


「次はベース、アイです」


「アイと申しますー、よろしくー!」


「次、ドラム!イカリ」


「イカリっていいます、よろしくー」


「そして最後はギター兼ヴォーカル、モミジの四人でやらせていただきます、どうぞよろしくー」


「ね、ボクたちも裏で聞いてましたけど、漫才とか大喜利とか、面白かったですね!正直そんな逸材たちの後にボクたちでいいのかって思いますけど、気にせずやっていきます!」


「まあ長くMCやって後ろが詰まっちゃいけませんから、次の曲いかせてもらいます。知ってる方いたら一緒に盛り上がってねー」


そういって三曲目に突入する。結構前に流行ったアニソンだったので、これまた結構な数が乗ってくれた。


「というわけでですねー、はやいもので次が最後の曲になってます」


『ええー!』


「あはは、ありがとう。それで最後の曲なんですが、ボクたち速く弾くのが大好きで、しかも昔のロックが大好きで。曲はわからないかもしれないけど、インパクトは残せるって曲、やっちゃっていいですか!?」


そういうと口々に肯定の意を示す言葉が投げかけられる。


「ありがとう、みんな!それじゃ最後の曲、いくよー!」


ボクたちが昔から好きでカバーしてるバンドの曲を弾く。最近はそんなに速弾きが誰もがするテクではなくなったので、一周回って珍しい部類に入ってる。


『In the sky a mighty eagleーーー』


予想通り、この曲を知ってる人は少ないみたいだけど、それでも楽しそうに乗っているひとがたくさんいたので助かった。


「以上、『ソニックウェーブ』でした!この後も楽しんでいってくださいねー!」


歓声に包まれながらステージをあとにする。


「あー、楽しかった!」


「久々に人前で演奏したわね」


「モミジ、MC上手くなったねー」


「ほんとよ!やっぱり配信のおかげかしら?」


「あはは、かもねー」


「てか、めっちゃアンコールなってるわね。後で調整してもらいましょ」


「そうね。ほらモミジ、あとは私たちにまかせてあの子たちのとこにいってあげな」


「そうだぞ。きっと質問責めにされるだろうね」


「あ、うん。いってくるね」


席に戻ると、案の定質問責めに遭った。


「モミジあんたバンドやってたの!?」


「昔ね。あのメンバーはその頃の面子」


「上手だったわ~」


「あはは、ありがとう」


「ほら、そのへんにしてあげな。モミジ疲れてるでしょ?座って座って。ご飯も買ってあるから」


「あ、ありがとうお姉ちゃん」


「いいってことよ」


お姉ちゃんはいつも通りで、ボクに助け舟を出してくれた。ありがたい。


======================================


それから時間がたち、ステージ企画の終わりが近づいてきたころ。ボクはまたステージ裏に来ていた。その理由は、大歓声のアンコールに応えるため。

深雪さんたちが話をつけてくれていて、今壇上にいる人たちの演目が終わった後、少しばかりのギミックを用意してもらった。


演目を終えた人たちが降りてきて、アナウンス。


『以上でステージ企画は終了となりますーーー』


観客席からはええーっという声や拍手などの喧騒が舞っている。ここでボクはマイクをとり・・・


『以上でステージ企画は・・・』


『ちょっとまったあー!!』


と叫ぶ。途端、観客席からは歓声が。


『まだ一個残ってるよー!アンコール、いっぱいもらってるんだから!』


そう、これが用意してもらったギミック。終了のアナウンスと共に暗転したステージに上がりながら待ったをかける。粋な計らいをしてくれたものだよ、まったく。


「いくよ、ワン、ツー」


ボクたちが演奏を開始するのと同時に照明がつき、ステージを照らす。瞬間大歓声があがった。


「お待たせしましたー!アンコールありがとー!ボクたちの最後の曲、盛り上がっていくぞー!」


演奏する曲は某主人公の本名が最後まで公開されないアニメの作中歌。


『私ついていくよどんなつらい世界の闇の中でさえーーー』


演奏が終わるとステージは興奮冷めやらぬまま、幕をとじた。


「すいません、無理言って、聞いていただいて」


「いえいえ、あんなに盛り上がってたんですから、アンコール入れない方がおかしいくらいですから!」


と熱のこもった声で言ってもらえた。


「はー、楽しかった!ねえ、またたまに演奏会とかしようよ」


「みんなの予定があえばやりたいなー」


「はいはい、ボクもやりたいと思ったし、どこかでね」


「やったー!モミジー!」


「わぷっ、急に抱き着くのは勘弁して・・・」


そうしてボクは別れ、お姉ちゃんたちのところへ。ここでこのイベントは終わりなので帰ろうと思うのだ。終わってから考えるとボクがやってたのってどっちかというとフェスに近いかも?


あとから聞いた話では、最初終了のアナウンスが流れた時に結構な数が帰ろうとしたみたいだけど、ボクたちのギミックが始まった瞬間みんな戻ったらしい。



最後までお読みいただきありがとうございます。作者は実のところフェスとか行ったことないので、割と想像で書いてます(笑)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ