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20.協力クエストに参加する

<本日、日本時間22:30より、サーバー全体での協力クエスト『暴走した魔物から街を防衛せよ』が始まります!参加される

旅人の皆さんは開始時間までにシティにいるようにして下さい>


というアナウンスがあり、そういえば今日かと思う。そのイベントの告知があったのは1週間前ほど、公式SNSからお知らせがあった。


『旅人の皆さん、お疲れ様です!来たる1週間後、TRF初となるサーバー全体での協力クエストを実施致します!第3の街、トレスに襲いかかる魔物の暴走。放っておいてはトレスが壊滅してしまいます!!旅人の皆さん、トレスを守って下さい!イベントの詳細は下記HPをご覧下さい。≪TRF公式サイトのURL≫』


という内容で、公式サイトに飛んでみると詳しい日時、推奨レベルが書いてあった。その中でもボクが参加しようと思ったきっかけとなったのが、


『イベント戦闘では普段よりも豪華なドロップが!さらにイベントに成功すると街の住人たちが取引をお安くしてもらえるかも・・・!?奮ってご参加を!!』


という文章。

個人的にレアな武器だったりウェアなどは欲しいし、なにより回復アイテムや消耗品のお値段がお安く済むようになるなら頑張りたいと思ったので参加。


ーーただここで怖いのが、どのゲームでも必ずいる、輪を乱したい、極端な話PKに走る輩たち。戦闘のどさくさに紛れて後ろから他プレイヤーを殺す、わざと狙撃の狙いをずらしてプレイヤーに当てるなどといった卑劣な行為に及ぶ人達が一定数いるのが現状。どのゲームも運営がなんとかして撲滅しようとするも、ゲームコンテンツとしてのPvPが無くなったり、偶然当たってしまった人に対してもペナルティが課されたりと上手く行かない。多分TRFにもいると思うので、まずは信頼できる人を探すことから始めるというか、背中から撃ってくるような人を避けるところから始めるべきなのでもう少ししたらシティの広場にでも行って仲間になってくれそうなプレイヤーを探そう。


===============


「う〜ん、たくさんいるなぁ。・・・おや?」  


プレイヤーが集まる広場へ来てみたら、案の定そこはプレイヤーでごった返していた。そんな中、ボクは何やら気になる行動をしているプレイヤーを見つけた。


「・・・・・・あの、あ・・・。・・・」ソワソワ


何やら声を掛けようとするも上手く声が出ないのか、声が出ても聞こえていないのか、道行くプレイヤーにスルーされ続けている少女を見つけた。


「君、どうかしたの?」


「ほぇっ?あ、ああの、えっと」


「ああ、落ち着いて。別に取って食おうだなんて考えてないから。深呼吸して?」


「すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。・・・すみません、取り乱しました」


「落ち着いたみたいだね。どうしたの?」


「実は、このイベントに参加しようと考えていたのですが、私と近い年齢の方を見掛けず、誰かしら近い年齢の方と組んで参加しようと思っていたので混乱してしまい・・・」


「そもそもTRFって見た目は自由に設定できるから君みたいに実年齢っぽい見た目の子がいないんじゃ・・・?」


「いえ、何度か声を掛けたのですが、『ガキはすっこんでな』とか『ロリっ子は大歓迎さ!おじさんと行こう?』とか、信用に足る方がいなかったのです」


やけに大人びた喋りの少女だけど、まさかボクより年上だったりする?


「あの、口調が大人びてるけど何歳くらいなの?あぁいや別に答えたくなければそれでいいんだけど」


「私は14です。口調は母の教育の賜物です。母からは色々と教わりましたから。基本的な戦い方から変態不審者の撃退方法まで色々と」


「親御さんは何を教えているんだ・・・」


「と、まあ気取ってはみましたが今のところ1人なので泣きそうです。ぐすん」


「あ、そうなんだ。君、名前は?ボクはモミジ」


「モミジさんですか。私はサクラです」


「サクラちゃんね。よかったらボクと組むかい?」


その瞬間サクラの目がキラキラと輝き出したように見えた。


「問題なければ是非!これでぼっち卒業です」


後の方はなんで言ってるか聞こえなかったけど、メンバーが増えたので何よりだ。


「っと、すいません」


油断していると、誰かと肩がぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさい。・・・・・・」


「え、あの?」


ぶつかってしまった人に謝るとその人はお姉さんで、お姉さんも謝っていて、ボクを見て沈黙していた。


「か」


「か?」


「可愛い〜!!」


「へ?むぎゅ!」


突然視界が暗くなり息苦しさと柔らかさを感じるその感覚にデジャヴを覚える。どうやら抱きついてきたお姉さんの胸にホールドされているようだ。


(ギ、ギブギブギブ!!)


空いていた手でお姉さんの背中を叩く。


「あっ、ごめんなさいね。お狐ちゃんがあんまりにも可愛かったから、つい」


「ぷはっ、はぁ、はぁ、だ、大丈夫です・・・」


「あ〜ほんとにごめんね!えっと」


「も、モミジです」


「モミジちゃん!あたしはマリア。よろしくね」


「宜しくお願いします・・・」


「あたし、友達と2人なんだけど、2人もイベント参加?」


「はい、そうです」


「やっぱり?良かったらあたしたちとも組まない?大丈夫、友達も信頼できる女だから」


「あ、いた!マリア!」


向こうからお姉さんがもう1人現れた。


「と、話をすればね。サキ、この子たちもイベント参加なんだって。組もう?」


「え、知り合いなの?」


「いや?今さっき会ったばっかり」


「へぇ・・・、流石コミュ力の女。2人ともごめんね、急に。驚いたでしょ?」


「あ、あはは・・・、ま、まあ大丈夫です」


「でもおっぱいホールドは正直羨ましかったです」


「ちょ、サクラ!」


「え、なにマリアまたやったの?も〜、あんたバストでかいんだから気をつけなって。あんたそれで何人の男の子の性癖歪ませてきたと思ってるの?」


「だって可愛かったんだもん・・・」


サキさんに怒られてシュンとしているマリアさん、可愛いな。


「まあ、私は組んでも全然いいけど、2人はいいの?」


「あ、はい。ボクは元々何人かで行こうと思ってて、組んでくれる人を探していたので是非」


「私も1人は嫌なのでお願いします」


「じゃあ、決まりね。あたしがパーティ作るからみんな招待するわ」


< マリア からパーティの勧誘が届きました>


というウィンドウが表示されたので承認する。他の2人も同様の操作をしたようで、パーティメンバー一覧に4人の名前が表示されている。


「モミジちゃんとサクラちゃんか。改めて私はサキ。よろしくね」


「よろしくお願いします」


「よろしくです」


「ところで、みんな種族は何にしたの?それによって作戦とかも変わってくるだろうし、みんな自己紹介し合おう?」


「あ、はい。ではボクから。モミジだよ。種族は『妖狐』。メイン職業は『巫女』で、サブ職業はまだ決めてないです」


今回のアプデで追加された要素で、サブ職業というものがある。これは職業をもう一つ追加でき、その恩恵としてサブ職業に応じた各種武器を装備できるようになる他、一部スキルが使用可能になるというもの。これはヌルゲーになるかと思われたものの、早くからダンジョンに赴いた攻略組の報告によるとサブ職業を設定していないとギリギリとのことで、難易度も上がっているようだ。


「巫女さんなんだ、モミジちゃんは。次はあたしね。あたしはマリア、種族は『エルフ』。メイン職は『弓使い』、サブ職は『狙撃兵』よ」


「狙撃兵?というのは文字通りの職業ですか?」


「そう。これどうも弓使いとの相性が良いみたいで、使えるようになるスキルで飛距離を伸ばしつつ弾道を真っ直ぐにするのがあるおかげで矢が遠くまで飛ぶのよ」


「へえ、そうなんですね」


「じゃ、次はそっちの子」


「私ですか。私はサクラです。種族は『鬼人』。メインの職業は『鍛治師』、サブ職業は『斧使い』です」


「サクラってメインは生産職だったんだ」


「です。母が『VRMMOやるなら金策のためにも生産職、特に武器防具職人がオススメよ』と言っていたので」


つくづくサクラのお母さんが気になるけど、それは後回しにする。


「最後は私ね。私はサキ。種族は『淫魔』。メイン職業は『魔術師』、サブ職業はまだ決めてないわ」


「ってかそうじゃん、サキあたしに性癖云々言ってたけどサキの方が歪めてるでしょ。淫魔の時点で」


「む、失敬な。私だって色々考えたんだから。淫魔は物理は弱いけど魔法はつよつよなんだから。あとはまあ、種族特性で可愛い女の子とイイコトできるかなって」


「下心あるんじゃん!?」


「ま、まあまあ・・・。2人とも下心があるのは変わらないんですから」


「「ぐはっ」」


結果として喧嘩両成敗になったので、まあいいか。


「ところで、あたしは耳長、モミジちゃんは狐耳に尻尾、サクラちゃんは角、サキは角と翼と尻尾って、それぞれが尖ったパーティになったわね」


「まあいいんじゃないですか?それにそれぞれの得意なことがいい感じにばらけてる感じがしますし」


「そうですね。まあ4人というのが少し不安な気もしますですが」


「あ、それは大丈夫。やろうと思えばあと4人増やせるから」


「え?モミジちゃんそれってどういう?」


「見せた方が早いですかね。『一斉召喚』」


ボクは景たちを召喚した。


「ご主人、お呼びですか?・・・おや?この方々は?」


「召喚術?それにおにゃのこ!?」


「私達は召喚狐の進化形ですから正確には女狐ですけどね」


「こんな感じ、召喚で4人までは増やせるってのはこういう、ことっ!」


「ぐえっ、主、首キマってる、ギブギブ」


「流れるようなヘッドロック、私でなけりゃ見逃したね」


あ、そういえば1人忘れてた。多分あの子もいるんじゃないかな?


「あ、すいませんあと1人呼んでもいいですか?とりあえず景たちは戻っておいて。また何かあったら呼ぶから」


「はい」


景たちは姿を消す。


「もう1人?プレイヤー?」


「はい、ボクのフレンドなんですけど。いるかな?」


ボクは唯一のフレンド、トウカにメッセージを送る。


『トウカ、いる?これから何人かと組んでイベントクエストに行こうと思うんだけど、良ければ来ない?』


『本当ですか先輩!?行きます!!』


うおっ、相変わらず早い。となるとーー


「先輩、お待たせしました!」


「相変わらず速いね、トウカ」


「ん?っていつの間に!?」


「おや、あなた方は?」


「言ったでしょ、一緒に組む人たちがいるって。この人たちがそう。左からマリアさん、サキさん、サクラ」


「なるほど。あ、私はトウカっていいます。種族は『鬼人』です。メイン職は『武士』でサブ職は『ガンナー』です」


「なるほどね。トウカちゃんは遠近両用の構成なんだ。ってかまた鬼人なんだ・・・」


「はい!武士の特性で素早さは補完できますから!」


「そもそも鬼人はパワーでねじ伏せればいい。母が言っていました」


「だからサクラのお母さんクセ強いね!?」


「あはは・・・、それじゃトウカちゃんもパーティに誘うわね」


「はい、よろしくお願いします」


『間もなくイベントが始まります。参加される旅人の皆さんは広場に留まって下さい』


「と、始まるみたいだね」


いよいよTRF初の大規模なイベントが始まる。楽しみだ。

長くなってしまうため分割させて頂きます・・・。

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