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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第三章 迷宮都市前編

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第73話 初めてのダンジョントライ! 


 図書室――受付嬢いわく書庫――で一通り調べたいことを調べ終わり、ギルドに戻るため階段を昇って行く。

 地下にあるためか、温度変化に気を使っているのかは定かではないが、薄暗かったためやけに外が明るく感じ、目に眩しい。

 とはいえ、時間的に昼が過ぎた頃だから、明るいのは無理もない。

 そのせいか少し騒がしく感じるが、ここではいつもの事なのだろう。

 げんに早くに帰ってきた冒険者たちが素材を換金し、「メシにするか!」と話し合っている。


 まあ、今から俺はそのダンジョンに潜る訳なのだが。


 ちなみに俺が書庫に来たのは、そのダンジョンについての情報を調べるためだ。

 調べた内容は単純で、例えば出てくる魔物の種類、攻撃方法、対応策などだ。

 他にも罠や地形、気を付けなければいけない事や近づかない方が良い場所など、事前に知っておいた方が良い事は多いだろうと思い、調べて来た。

 まあ深くまで潜るつもりも無いので一時間もしない内に帰ってくるつもりだが、用心しておくに越したことはない。


 そんな事を考えていると、すぐにダンジョンについた。

 今から潜るダンジョン、それは世界最大規模を誇る塔型迷宮【白磁の塔】と呼ばれる、迷宮都市の中心にそびえ立つ塔のことだ。




 ──☆──★──☆──




 開け放たれている門をくぐり、塔の中に入って行く。

 内部は聖堂のように広く、見上げるほど高い天井で、ここがダンジョンとは思えないほど汚れ一つ感じられない不思議な空間だった。

 【白磁の塔】と呼ばれるだけあってか、この空間全体が白く光り輝いている様にすら見える。

 妙に中央の広場が空いているのが目につくものの、それ以外は至って平凡で、素材の買い取りや回復薬などを扱っている店がそれなりに並んでいる。


 白く光り輝く壁に興味を惹かれ、近付いてみると幾つもの柱が並び立ち、近くには腰を落ち着かせることの出来る場所もあり、神殿と観光所が混ざり合ったような人工的な印象を受けた。

 試しに壁に触れてみると手触りが滑らかな大理石のような感触なのに、白すぎるせいか一瞬硬さを失い、柔らかくなった気さえした。


(ただの錯覚か……)


 気を取り直して、階段を下り進んでいく。

 このダンジョンにおいての進むとは基本的には地下へと進む事らしい。

 塔の形をしているのに地下へ進むとはおかしな感じだが、要するに塔の部分はダンジョンにおいて無関係という訳だ。


「こんなにも仰々しく作ってあるのに、一体何の意味があるんだか」


 コツン、コツンという反響音を鳴らしながら、螺旋階段を下りていく。

 すると段々と暗くなって行き、整えられた白い壁から洞窟のようなゴツゴツとした煤けた岩盤に姿を変えていった。


「静かだな」


 発した声が反響する。自分の鼓動まで聞こえてきそうだ。

 五分程度の距離を経てようやく到着すると、別の世界にでも迷い込んだのかと思うほど、環境が変わっていた。


「すごいな……これが本物のダンジョンって奴なのか」


 地面を足で触ると、岩の感触がしっかりとする。

 どうやらここは本物の洞窟の様だ。

 そんな事をしていると、遠くで冒険者たち相手に素材売買の交渉をしていたり、荷物持ち(ポーター)を雇わないかとここに下りて来た人間に話し掛けているのが聞こえてきた。

 面倒くさそうだと考えた俺は、ここから立ち去るために足早で洞窟へと向かった。



 洞窟の中というのは、やはり暗い。

 ゲームのように篝火が焚かれている訳ではないし、松明を持って歩くわけにもいかない。

 魔法が無かったらそうせざるを得ないのだろうが、しかしその心配は無用だ。

 という訳で、【光明ライト】の魔法を発動する。

 テニスボール大の光る球体が出現し、周囲を照らす。

 明るくなった洞窟内を頭上でくるくる回りながらアピールしているが、視界に入らず回っているのは無意識的なものなのか少し気になるところだ。


 そう、これは俺が動かして自作自演をしている訳ではない。

 嘘みたいだが勝手に動いているのだ。

 どうして動くのか本当に気になるのだが、何か入っている訳でも生き物という訳でもない。

 魔法という現象によって引き起こる偶然のものかと思うのだが、実際の所は分からない。

 まあ、これといって困る訳では無いので、放置するしかないのが実情だ。


 そうこうしながら歩いていると、羽根の羽ばたく音が聞こえて来た。

 無駄な思考は止め、剣を抜き、集中する。

 敵は二体のコウモリだ。

 そのコウモリ、なんと手の平二つを開いたほどの大きさだった。

 顔が隠れるくらいのコウモリが二体。思ったよりも気持ち悪い。

 そのため、気持ち悪さにより警戒心を少し引き上げていると、天井付近をバサバサと飛びながら威嚇していると思ったら、スッと天井に張り付いた。

 えっ、飛んでこないの……?

 疑問が口を出そうになったが、すんでの所で止めた。

 膠着状態になり、冷静になった俺は天井を見上げながら構えていた剣を引くと、容赦なく魔法を放った。


「【火球ファイアーボール】」


 火の玉は真っ直ぐコウモリに飛んでいくと、小さな爆発によって死んだ。


「……よわ」


 ボソッと誰に言うでもなく、つぶやいた言葉は宙に溶けていく。

 爆発によって近くに飛んできたものを見ると小さな牙と魔石だった。

 他にないか地面に視線を迷わせると、六歩先の所に死にかけのコウモリがいた。

 近くに寄って無慈悲に剣を突き刺すと、コウモリは死体となった。

 一瞬、どうしようか迷ったが、数拍の後に諦めて亜空間に仕舞った。

 牙と魔石も袋に入れると、再び歩き出した。


 それからは行動が早かった。

 二度三度とコウモリにしか出会わないことをこの目で確認したら、小走りで移動することにした。

 敵に出会うたびに【火球ファイアーボール】を使い瞬殺し、三十を超えた頃には二階層についていた。

 二階層ではネズミも出てくるらしいのだが、それも説明するほどのことは無く、剣を一閃するだけで死んだとだけ言っておく。

 そのまま興が乗り、三層、四層、そして五層手前まで進んだところで腹が空いたので帰る事にした。

 一応、最後にチラッと五層を覗いてみたが変わらず洞窟のままだったので、来た道を帰って行った。

 魔物とのエンカウントも少なかったので来た道を帰る分にはそこまで苦労は無く、想定していたよりも早くに外へ出られることが出来た。


「う~ん! 外は涼しいな」


 塔から出ると背伸びをして、深呼吸した。

 流石に暗い所に何時間もいると肩が凝ったように感じたからだ。


「しかし、思ってたよりも長く居たんだな……。まさか夜になってるなんて」


 外は太陽が沈み、幾つもの店が街明かりを灯していた。

 おおよその時刻は夕食頃といったところか。それは俺の空腹具合からも想像できる。


「とりあえず、ギルドに行って換金するか……あっ、宿も探さなきゃいけないじゃん!? 忘れてたああああ!!」


 ギルドへと向かう途中、ダンジョンに心を奪われ過ぎて寝る場所の確保に頭を抱えることとなった。



宣言から二日。

これくらい許容範囲だよね……?

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