第6話 街への到着
短いです。
ジャックとともに森の中を歩きながら、この世界の常識を教えてもらっていた。
少しすると森の外側へついた俺の目の先に、大きな壁に囲まれた街が目に入ってきた。
「でかいなぁ~。あれが俺達が目指してた街か?」
街を見ながら、ジャックにそう問いかけた。
「ああそうだ。あの街の名は『ダラム』という」
「ふーん、ダラムって言うのか」
「そして、あの街はこの国の建国当初から存在すると言われている」
「何でだ?」
「さあ? ただ、森を監視するための砦とか、採取の為に近い方が何かと便利だからじゃないか?」
そんなことは話していると、そろそろ街につく頃だった。
門の前には人が列に並んで、通行証を見せて入っていった。
優人も5分程並んでいると、4番目くらいの順番になり、
「次! 通行証を見せろ!」
という声が聞こえてきて焦りだした。
(ヤ、ヤバい……!通行証なんて持ってねぇ……)
逃げ場のない列の中、右往左往しつつ小声でジャックに話しかけた。
「なぁジャック? 通行証無いんだがどうすればいい?」
「んあ? そんときゃ金払えばいいんだよ。お前さんは金を…持ってねぇようだな」
話している途中で優人が分かりやすくガックリした顔を見せるので、ジャックもすぐに分かった。
「はぁーまったく。最初から言えよ。こちとら命を助けてもらったんだから。ほらよ小銀貨1枚だ」
「ありがとう、ジャック! 必ず十倍にして返すからな!」
優人がジャックから金を借りた直後、
「はい、次! 通行証を見せろ!」
と自分の番になり衛兵さんが尋ねて来た。
「え~と、通行証は無いんですけど……」
「ん? 無いのか。じゃあ小銀貨1枚だ」
「はい、どうぞ」
そういって優人はジャックから、もらった内の1枚を渡した。
「うむ、確かに受け取った。それで、この街には何しに来たんだ?」
そう衛兵さんから質問が来たので正直に、
「冒険者になりに来ました!」
と答えた。
「そうか、じゃあこの仮通行証を渡すから、冒険者ギルドに登録したら返してきてくれ」
そう言うと、木の板のようなものを俺に渡してきた。
「了解しました。すぐに来ます」
「おう、わかった。俺の名前はディナード・ムルクだ。この詰所に来たら俺の名前を出してそう言ってくれ」
「わかりました。ディナードさんですね。丁寧にありがとうございます」
そう言って俺は道を進もうとしながら、ディナードさんに礼を言った。
「おう。あ、ちょっと待て」
「えっ? どうしました?」
「いやな、ちょっと一言だけ……ダラムの町へようこそ!」
咳払いすると笑いながら発せられた言葉に、『この世界に来て、俺は生きているんだ』という実感が湧いた。
だから俺も元気よく、
「ありがとう!」
と大きな声で返答した。
これから色々あるだろうが、この青い空に白い壁、綺麗な街並みと石畳の道、そしてこの胸の中に残る光景を、俺は決して忘れることは無いだろうと心の底からそう思った。
「お~い! もう行くぞユート!」
そんな思いを胸に抱きながら、俺の名を呼ぶ声に向かって走りだした。




