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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第一章 異世界適応篇

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第23話 新装備を取りに行こう!


 ~依頼二日目~


 昨日はそのまま宿に帰ってきたが、よくよく考えれば『雑草駆除』の依頼報酬の受け取りを忘れていた。

 まあ昨日は色々なことがあったから仕方がないが、次からは気を付けようと思う。

 という訳でいつも通り早起きした俺は朝の支度をし、朝食をゆっくり味わってから冒険者ギルドに向かう。

 

 少し早く来てしまった様で人影はいつもより少ないが、いくらかの冒険者はもう来て依頼の準備をしているようだ。

 それを遠目に見ながらギルドのカウンターへと向かい歩いていく。

 丁度人が少ないので並ばずに済んだ俺は、四つある受付の一番近い方へと寄っていく。

 そこに犬耳?が付いている獣人と思しき女性に話しかける。


「すいません。昨日この依頼を受けたんですけど、そのまま報酬を貰い忘れていたらしくて……」

 

 そう言って依頼完了を意味するサインが書かれている依頼書(クエスト)とギルドカードを見せながら渡す。


「ふふっ、はい、大丈夫ですよ。少々お待ちください」


 何で笑われたのかよく分からないけど、とりあえず犬獣人の受付嬢さんが奥に入っていくのを見送りながら、獣人って人間とほぼ変わらないんだなぁとしみじみと思う。

 ちょっとばかし期待していただけに、余りにも違和感が無さ過ぎて逆にショックだわ。

 それに異世界系の物語で獣人にドン引きするほど興味を寄せるキャラとかいるが、残念ながら共感することは出来ない様だ。

 俺はケモナーではないらしい。


 そんな事を自己完結気味に考えていると、先程の犬耳さん――勝手に付けた犬獣人の受付嬢さんの愛称――が帰ってきた。


「お待たせしました。これが依頼の報酬です。それとギルドカードをお返しします」


 渡された報酬と一緒にギルドカードも回収する。

 ついでにカード裏を見てみると、ちゃんと2/3って依頼成功数も書いてある。

 あと一つは今受けている婆さんの依頼の事だろう。

 

「ありがとうございます。それじゃあ、今日の所はこれで」


「はい。それでは何かあったらまた声を掛けてくださいね」 


 丁寧に礼をされながら俺はある場所へと向かう。




 さて、ギルドを出てから俺が目指したのはレイグのおっちゃんの鍛冶屋だ。

 何を隠そう、今日がおっちゃんに言われた三日目だからな!

 まあ、武器を貰えたところで今のところ使い道が無いんだが……。

 全く、婆さんのせいで俺の予定が台無しだ。


 ブツブツと一人文句を言いながら歩いていると、おっちゃんの鍛冶屋が見えてくる。

 鍛冶屋に着いたので中を覗いてみると、どうやら起きて刃物を砥いでいるようだ。

 こんな早朝に訪ねたは良いが、寝ていたらどうしようかと思っていたので都合がいい。

 早速中に入ってレイグのおっちゃんに話しかける。


「おはよう、おっちゃん」


「ん? なんだお前か、ちょっと待ってろ。すぐ終わる」


 手を止めずにこちらを一瞥したと思ったら、すぐに手元に目線を戻して刃物を砥ぎ続ける。

 砥いでいる途中で話しかけたのは自分なので、黙って待つことにする。

 でもただ待っているだけじゃつまらないので、レイグのおっちゃんの砥ぎ方を勝手に見させてもらう。


 やはり一流なだけはあるのか、砥ぐ姿勢から力の入れ具合、砥ぐ角度など素人目に見ても洗礼された素晴らしい技術だと感じる。

 それから数分が経過したと思われる頃、ようやく満足がいったのか手を止めると、砥いでいた短剣らしきモノを光に翳すような仕草をする。

 いまいち何をしているのか分からないが横でジーっと見つめていると、こちらに呆れた顔をしてきた。


「お前さんよ……そんな横で見られるとやりづらいわ」


「え? ああ、すまん。あんたのその技に興味を持ってな」


「ほう……鍛冶に興味でもあるのか?」 


 レイグが真剣な顔をしてこちらに聞いてくる。


「あー……紛らわしい言い方をして悪いが、鍛冶というよりはさっきの砥ぐ技術の方に興味を持ったんだよ」


「ふむ、そうか……もし興味が出たら俺に言うがよい。教えてやろう」


 いきなりのおっちゃんの発言に驚いた。前触れもなくこんなことを言うなんて、どうしたのだろうか?


「何でいきなりそんなことを言うんだ?」


「特に理由は無いぞ。何となくという奴だ。そんなことより、お前さんには他に目的があるだろう?」


「そうだった! おっちゃんに造ってもらっている武器を受け取りに来たんだ」


「おう、急な依頼が入っちまってまだ長剣と短剣だけしか造れてないけどな。ちょっと待ってろ、今持ってくる」


 それだけ言うとのしのし奥へと入っていき、布に包まれた大小二つの武器らしきものを手に携えて戻ってくる。


「ほらよ。これがお前さんに注文されて造った武器だ」


 重厚な木製カウンターにレイグは持っている二つの得物を無造作に置くと、布に包まれているものを開いていく。


「おお、すごいなぁ……。触ってみてもいいか?」


「勿論だ。ついでに何か違和感があったら言えよ。すぐに調整してやる」


 おっちゃんから許可を貰ったので最初は長剣を手に持ってみる。

 鈍く光を反射する刀身と特に装飾などはされていない武骨な柄。

 そんな魅せる事よりも実用性こそが第一だ、とでもいうような剣だった。

 刀身の長さは目測で大体90センチほどであり、鉄のような金属で造られた割には見た目よりも重くなく、と言うか思っていたより軽すぎるような感じがする。

 その何とも言い知れぬ、想像と現実の重さの違いにひどい違和感を覚える。

 それだけじゃなく、この剣の色艶にも何か感じるところがある。


 例えるならそう、いつも使っているお気に入りのペンが自分の物ではないような、見た目から感触まで全くと言っていいほど同じなのに何かが違うと思わせる、そんなふとした時に気付く様なほんの微かな差だ。


「なあ、この剣に使われているのはただの鉄か?」


「ふむ、なんでそう思ったんだ?」


「俺の知っている鉄の重さじゃないからな。しかもほんの少し、微妙に鉄の色とは違うように感じるんだけど、気のせいか?」


「ほう、そこに気付くか……。確かにその剣に使った鉄はただの鉄じゃない。硬度や粘り強さなんかに遜色は無いが、一般的な鉄とは比重が全く違う。具体的にどれくらいかと言われたら困るが、精々半分以下と言ったところだろうな」


 そんなにも違いがあるのか……。

 まあ、慣れたら使いやすいかもしれないが、素人が使うには軽すぎて逆に振り回されそうだ。


「その金属はどれくらいこの剣に使われているんだ?」 


「そうだな……この金属は【閃鉄鋼(せんてつこう)】というんだが、それが大体、剣の半分にも満たないほどだな。芯材として鋼を用いて、ガワ(・・)の刃にこの【閃鉄鋼】を使う。これは東にある“刀”を造るときに使われる技法を流用しているんだ。今時の鍛冶師じゃ、二つ以上の金属を使って造るのはザラだな!」


 自分の得意分野を語れるからか、レイグは饒舌になって話してくる。


「そうなのか。でもそれにしても軽すぎないか? この重さじゃあ、素人の俺では使いづらいと思うんだが……」


「がっはっは! そりゃそうだろ! 軽いってことは力を籠め過ぎれば振り回されることになるんだからな。だからこそ中途半端に重い剣を使うよりは、軽い剣を使って剣の腕と力の制御を同時に学べるという訳だ!」


「へぇ~、そういう意味があるのか。流石に本職の鍛冶師が言うだけあって説得力が違うな」


「おうよ! それで、お前さん。長剣に何か違和感とか感じるか?」


 そう聞かれたので三歩下がり、周りに当たらないことを確認してから剣を振る。

 おもちゃの剣で遊んでいるような気分にさせられるが、要らないことを考えずに縦横無尽に剣で斬るようにしてみた。

 

「――ふぅ……。で振ってみたは良いが、いまいち違いがよく分からないなぁ。しいて言うなら、振り続けたら手から剣がすっぽ抜けそう、かな?」


「うむ、俺も剣を数多く打ったことはあっても、剣自体を使ったことは特別多くはないからなあ……。とりあえず柄を直すとしよう。武器を貸してみろ」


 持っていた長剣を渡すとおっちゃんは何やらやり始めた。

 何かを柄に巻いているようだが、よく分からん。

 まあスポーツで言う「ラケットのグリップ部分にテープを巻く」みたいなことなんだろう。分からんけど。

 そんな感想を内心抱いていると、意外とすぐに終わった。


「少しだけ柄を太くするようしてみたが、これで大丈夫か?」


 レイグから剣を受け取り触ってみて「大丈夫だ」と言うといい笑顔をしていた。

 やっぱり自分で作った武器が認められると嬉しい物なのだろうか。

 

 そんなことを考えながら長剣をテーブルに置くと、次は短剣の方を手に取ってみる。

 こっちの方も軽いんじゃないかと思っていたが、まあまあ見た目に合わないくらいには軽かった。


 白刃の刀身と一握りの長さしかない柄、目立たない鍔などこちらもおっちゃんの趣味が出ているかのようだ。

 刀身の長さは20センチほどと小回りが利きやすく、丁度良いサブウェポンとなってくれそうだ。

 

「良い短剣だと思うぞ。振り回しやすい長さだし、重くないからな」


「そうか、ならこっちの柄も調整して終わりだな」


 そう言って短剣の方も柄を太くしてもらった後返されると、これで俺もこの世界で初めての武器を手に入れられたのだと少し胸が熱くなった。

 ところで、何か忘れているような……?


「あ、忘れてた!」


 新品でなおかつ自分専用の武器というのに舞い上がっていたが、剣帯がなければ外に出るとき持ち運べない!

 危なかった……そんな初歩的なミスを犯してしまう所だった。


「なあ、おっちゃん。この剣を腰に下げる剣帯ってあるか?」


「ん? あ~、お前さんは空間魔法があるから大丈夫だと思ってあえて造らなかったが……必要だったか?」


「いやいや、魔物に遭遇するたびに毎回武器を出し入れするとか、いくら何でも危機感無さすぎだと思うぞ?」


「がっはっは! そりゃそうだ、確かにお前さんの言うとおりだな。だがお前さんの持っているその武器専用の剣帯とかは残念ながらねぇ!」


 いや、そこは威張るところじゃないだろ……。


「おいおい……。まあ今のところは無くても困らないが、とりあえず次の武器を造った時に取りに行くから」


「次の武器はどっちを優先的に造った方がいい? 弓にするか、斧槍にするか?」


「う~ん、じゃあ弓で!」


「それなら、他の奴にも頼まなきゃならんから一週間ほどもらうからな。斧槍はその後だ。それと既にある剣帯なら用意できるがどうする?」


 一週間か~。

 長剣や短剣と違って意外と長くかかるんだな。

 まあ、一から全部手作業で造るんだからそれが難しいのかな?

 それよりも剣帯の方が気になる。


「それで構わないよ。それより既にある剣帯って既製品のことなのか?」


「おう、そういうことだ。まあ、ちっとばかし手直しはするがな。数分と掛からねえよ」


「じゃあ、それで頼むよ」


 それからというもの、レイグのおっちゃんはすぐに剣帯の手直しをしてくれた。

 でも今は街中で長剣をつけておく意味は無いので空間魔法で中に仕舞い、短剣だけを腰に付けることにした。

 なぜ付けるのかと言うと馴染ませておくためだ。別に見せびらかすつもりは……ほんのちょびっとしか無い!


現在の残高

140700+10000=150700ノル

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