全てを貫くもの
翌日。まだ、体調も万全ではないリタを屋外に出して俺たちは打ち合わせをする。
「リタの呪いを可視化する方法は?」
「無い訳ではありません。これまでも神聖力による治療を試みた場合には呪いの方が反応して見えはします。ただ、呼吸をするように伸び縮みしていますので、どうなるかまでは…」
「治療が終わるとまた見えなくなるのか?」
「はい。恐らく一度の治療で見えるのは4秒。1日に我々で施せる回数は3度迄です」
「案外チャンスが少ないのぅ」
治療を施す人数からすると予想より少ない時間だったのか、マリナがそう呟く。
「いや、2回あれば十分だ。1度目で位置を捕らえて、2度目で必ず仕留める!」
「ふっ、ロウがそういうのなら信じるしかないな」
「体調は大丈夫か?」
「ああ」
「では、まずは呪いの位置を確かめていただきます」
「待ってくれ」
治療を行うために世話係が近づこうとするとそれを制止するリタ。やっぱり不安なのか?
「どうしたリタ?」
「服を脱がせてくれ」
「は?」
いきなり脱ぎたいとかリタはおかしくなっちまったのか?
「へ、変な意味ではないぞ。勘違いするな、その方が確認しやすいと思ってだな…」
「そ、そういうことか。びっくりするだろ。分かった、お前の覚悟を絶対に生かすぜ!」
「頼んだぞ」
俺たちに付いてきていたネリアとヴェルデに服を脱がせてもらったリタは再びベッドの上に寝転ぶ。
「では始めます」
「頼む」
パアァァァ
神聖力による治療が始まった。
「おおっ!?見える…この黒い玉のようなやつだな」
「そうです」
「位置は…右肺の下側!?心臓近くじゃねぇか!いや、だけど他の臓器は少ない。うまく心臓さえ外せば…」
「で、できそうかロウ?」
位置を確認した俺が色々と言ってるのを聞いてリタが話しかけて来た。
「任せろ!絶対に決めてやる。行くぜ、アラドヴァル!!」
ヒュイーン
あの時と同じようにアラドヴァルが輝き、ブローハイパワーからスモルソンへと姿を変化させた。
「な、何じゃ、武器の形が…」
「さあ、お前の出番だぜ。もう一度頼む!」
「じゅ、準備はよろしいですか?」
「ああ、やってくれ」
突然俺の武器が変化したことに驚きつつも、治療チームは再度準備に移る。
「それが、あいつを倒した武器か?」
「ああ。でも、こいつが使えるのはお前のお陰でもあるんだぜ?待ってろよ」
「うむ」
俺がリタの患部にアラドヴァルを構えると、術者たちが神聖魔法で呪いの姿を映し出す。
「見えた!これで撃ち抜く!!うまく当たってくれよ…」
俺は引き金に手をかける。核を撃ち抜くようにそして…。
「出来たら、リタには傷をつけないでくれよ」
「ロウ…」
「頼むぞ!シュート!!」
バァン
俺は銃の引き金を引く。すると、この前と同じようにシリンダーが回り、弾丸が発射される。そして、その後は中空に留まるのも同じだ。
「いける!」
バァン
再び引き金を引いて弾丸が発射されるが、次の弾丸も静止している。
「まだいけるのか!?いや、いっけ――!」
バァン
3発目の弾丸を撃ったところで弾が進み始める。そして、3つ全ての弾丸が合わさった時、静止していた時が流れ始めた。
チュン
甲高い音を立てて、一発の弾丸がリタの体を突き貫けていく。
「う”っ!」
「だ、大丈夫か?」
「ああ、、心配はいらない」
「確認じゃ、もう一度治癒魔法を!」
「はっ!」
パアァァァ
「み、見えません!呪いは消えております!!信じられない…。我々があれだけの力を込めて出来なかったものが…」
「ふふっ、ロウはそれができるやつなのだ。のう、リタ」
「はい、殿下。それにしても…」
リタは弾が貫通したところをそっと撫でる。
「ど、どうした?まさか、傷でも残っているのか?」
「いや、逆だ。どこも痛くなかった。まるで呪いだけを狙って当てたような感じだった」
「そうか。確かにこの前は2発同時。今回は3発だったからな。効果も強いのかもな!まあ何にせよ、よかったぜ。これでお前も元気になるよ」
ほっとして俺は手を置く。
むにゅ
「ん?」
「ほう?元気になったのは貴様の方だな。寝たきりの私にこのような真似をするとは…」
「い、いや、これは違う、違うんだ!」
それとなく置いた手がまさかそんなところに行くなんて、誰も思わないだろ!
「何が違うものか!覚えていろ!!体調が戻ったら、剣術を教えてやるからな!」
俺が悪いとはいえ悪鬼のごとく怒るリタからは逃げることにした。
「じゃあ、俺は戻るから」
「まて、逃げるな!」
「リタ様!まだ動かれては」
「放せ!奴に一撃入れるだけだ!」
「ダメです。お体に障りますから、中に入りましょう」
「ぐっ!全く、あいつときたら…」
「ですが、治られてよかったですね」
「まあな。その点は感謝している。その点だけだがな!」
「素直じゃないのう。そうじゃ!今日は早く寝るがよい。明日、あいつがこの数日何をしていたか教えてやろう」
「姫様それは…」
「なぁに、さっきのことはロウが悪いんじゃし、これで恨みっこなしじゃ」
「ネリアが止めるような内容か。殿下、明日を楽しみにしております」
「うむっ!じゃから今日は早く寝るのじゃ。復帰を楽しみにしておるからな」
「ええ。必ず戻ってまいります」
その後、マリナから俺が落ち込んでいた時のことを聞かされたリタが、俺をからかって来たのは言うまでもない。




