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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
14 トゥオネタル族

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301/330

301 トゥオネタル族の里3


「「「「「わああああああ」」」」」


 集落の広場、決闘場に両雄が現れると、所狭しと集まったトゥオネタル族の大歓声が聞こえる。


 肩身の狭そうなヤルモは、黒い歪な鎧に呪いの大盾、右手にはバズーカを握って、セコンドにはイロナ。


 片や手を振りながら入場するペッコは、服装は上半身裸の短パン。四角いリーゼントの頭にはバイキングみたいなふたつの角が付いた兜。右手には鉄製の小振りなメイスが握られ、セコンドにはトピアスを連れている。


 その四人が中央に揃うと、トピアスが観客を(あお)る。


「このヤルモというオークみたいなヤツは、人族だ! こんなヤツに大事なイロナをやれるわけがない! 皆の者……ペッコを応援しろ!!」

「「「「「ブーブー!!」」」」」


 トピアスの偏った司会で、トゥオネタル族の老若男女はヤルモに向けてブーイング。人族はあまり好かれていないのかもしれない。


「では、見合って見合って~……はじめ!」


 そして、「お前が審判すんのかい!」ってヤルモがツッコミたいトピアスの掛け声で決闘が始まるのであった。



 ヤルモはいつも通り開始の合図でどっしりと構えると、ペッコはメイスを向けた。


「ククッ……なんだその姿は。如何にも体が弱いと言いたげだな」

「ああ。弱いから手加減してくれよ」

「するかボケ~~~!」


 ヤルモは本当に手加減してほしいのに、挑発と受け取ったペッコはブチギレ。


「いっちゃんとあんなに仲良くしやがって……死ね~~~!」


 いや、イロナとイチャイチャしてるヤルモが許せない模様。ペッコはメイスを振りかぶり、最速の攻撃を繰り出した。


「よっと」

「ぐぎゃっ!?」


 そんな猪突猛進、これまで死線(主にイロナの攻撃)を乗り切ったり乗り切れなかったりしたヤルモに効くわけがない。ペッコの攻撃は軽く大盾でいなして、体が流れたところをバズーカで叩き落とした。

 しかし、追い討ちのストンピングは不発。ペッコはゴロゴロと転がって離れて行った。


「クックックッ。攻撃力もたいしたことがないな。やはり、人族とは軟弱だ」

「『ぐぎゃっ』とか言ってなかった?」

「それはちょっとビックリしただけだ! ここからが本番だ~~~!!」


 ヤルモの攻撃は効かないようなことを言ったペッコは、ヤルモに指摘されてまたブチギレ。しかし今回は多少の冷静さはあるのか、足を使ってスピードに乗った攻撃を四方八方から加えている。


「わはははは。手も足も出ないとはこのことだな!」


 イロナより遙かに劣るが、勇者オスカリより速い攻撃では、ヤルモの分が悪い。ペッコはメイスだけでなく、手と足も凶器なので手数も多いから守るのがやっとだ。


「クソッ! なんで当たらないんだ!!」


 だが、ヤルモが防御に集中すれば、ペッコの猛攻すら完全防御。さすがに5分も完璧に捌かれては、ペッコは苛立って来た。


「見えた!」


 ペッコも、あのトゥオネタル族……戦闘のエキスパートだ。ヤルモの僅かばかりの隙を発見し、タイミングを合わせてメイスをぶち込んだ。


「「ぐはっ!?」」


 その結果、ふたつの(うめ)き声と衝突音が発生。さらにはペッコが吹っ飛ぶといったありえない現象も……


「ぐぅ……てめぇ! いま何しやがった!?」


 ペッコは痛みを無視して立ち上がると同時に、ヤルモを怒鳴った。


「さあ? 気付いたらお前が倒れていたな」

「んなわけないだろ!」


 ペッコの言う通り、そんなわけがない。単純にヤルモがカウンターで吹っ飛ばしただけだ。

 これは、ペッコがヤルモに攻撃を加えた瞬間、死角からバズーカを叩き込まれたから、ペッコは何をやられたかわからないのだ。


「くっそ~……汚いマネしやがって。死ね~~~!」


 謎解きは殺したあとで。ペッコはヤルモに突撃し、たまに見付けた隙に攻撃しては吹っ飛ばされるのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



「クックックックッ……面白いことをしてくれる」


 その決闘を見ていたイロナから笑い声が漏れていた。


「なるほどなるほど。わざと隙を突かせているから、主殿は耐えられるのだな」


 しかも、ヤルモがやっている戦法まで見抜いている。


 イロナが言う通り、ヤルモは自分から隙を作って攻撃を誘導している。本来ならば、華麗に避けてカウンターを打ち込むのだろうが、そこまでヤルモに余裕がないから喰らうしかない。

 だが、ヤルモには防具と防御力がある。避けなくとも覚悟して受ければダメージは減らせるし、吹っ飛ぶことはない。なんなら、相手がより深く踏み込んでいるので、ヤルモが攻撃を避けて攻撃するよりも大きなダメージとなっているのだ。


 これは、オスカリと戦った時に手を出さなかったら文句を言われたから、ヤルモが苦肉の策で考えたクロスカウンター戦法なのだ。


「クックックッ……主殿とやり合う時には気を付けないとな」


 これもイロナ対策だったのに、見せてしまってはもう使えない。ヤルモは妖しく微笑むイロナに見守られ、決闘は続くのであった……


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